ワンパンマンの世界にプルスウルトラの輸入を目論む転生者の話   作:オールマイト超かっこいいよねと思ってる人

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プロローグ

「ひぇひぇひぇひぇひぇ!俺は冷房の付けすぎで怪人となった怪人冷ン暴!この町は俺の支配領域となった!住民は俺のもとに降り、氷像として永遠にこの俺様に仕えるがいい!」

 

 突如として町の一部を吹雪の爆発とともに吹き飛ばし、大通りに現れたのは一体の怪物だった。

 

 超常の力を振るう人外の存在。肉体はヒト型ではあるが、頭はクーラーに目を生やした異形となっており、筋肉が異常に発達した肉体は所々が氷と化して、肌も毒々しい青色に変色している。

 

「か、怪人だあああ!」

 

 夏の光景が広がっていた何の変哲もない町は、一瞬にして吹雪が吹き荒れる阿鼻叫喚の地獄へと変貌する。

 

「誰一人として逃がさんぞ…ンッ!?」

 

 悲鳴を上げて逃げていく住民に手を伸ばし、なにやら力を行使しようとした怪人だったが…逃げていく人混みの中に一人だけこちらに向かってくる人影を見つけて怪訝な顔つきになる。

 

 つかつかとまっすぐこちらに向かってきたのは…一人のイケメンだった。

 

「あっ、あの人は…!」

「イケメン仮面アマイマスク様!?」

 

 混乱していた人混みがその顔を見て、足を止める。

 

 そんな人々に笑みを浮かべてウィンクをするアマイマスク。先ほどとは違う意味の悲鳴が上がった。その後、吹き荒れる吹雪よりも冷たく暗い瞳を怪人へと向ける。

 

「まったく、僕も運がないな…ドラマの撮影でこの街に来たタイミングで怪人とは…」

「ぬうぅぅ…A級ヒーローか!だが所詮は単体!この冷ン暴様の力の前では無力も同然!」

「これ以上ロケ地を荒らすな、悪風情が…正義を執行する」

 

 アマイマスクの指先が硬質化し、怪人とぶつかるかに見えた、その瞬間だった。

 

「…なんだ…?笑い声…?」

 

 どこからともなく、笑い声が響き渡る。

 

 怪人が足を止めて、ふと視線を上にあげたその時。

 

「ハーッハッハッハ!もう大丈夫!何故って!?」

 

 笑い声が吹雪を突き破って降りてきた、と同時に、マントを翻した大男がこぶしを引き絞り、怪人の頭部目掛けて振り下ろしたではないか。

 

「ぐぶっ!?」

「私が来た!」

 

 頭部のクーラー部分が一瞬でバラバラになり、怪人が倒れ伏す。

 

 そして、その巨体に見合わぬ軽やかな動きで男が地面へと降り立った。

 

 筋骨隆々の身体、輝くような金髪、そして堀の深い画風の違う顔立ち。身にまとうは青と金の刺繍の入った特別製のバトルスーツ。笑みを浮かべ、片手を挙げるは常勝の男。

 

 でかああああい!説明不要!その男こそヒーローの中のヒーロー!

 

「オールマイトだああああああ!?」

 

 市民の驚愕に満ちた悲鳴が爆発となってその場に響き渡った。

 

「オールマイト…!君だったか…」

 

 力んでいた指先から力を抜いて、アマイマスクすら毒気が抜かれたように呆れた笑みを浮かべてその男を見る。

 

 オールマイト。自警団の一つとして『オールマイトヒーロー事務所』を結成、特別製の建物マイトタワーを拠点とし、神出鬼没の勢いで動き回り全国各地で起こる怪人騒動を解決してきた個人で活動しているヒーロー協会未所属の自称ヒーローだ。

 

 その実力、推定S級。…どころか、S級上位、それこそ第2位のタツマキにさえ迫ると一目置かれているほどである。。

 

 アマイマスクが所属するヒーロー協会が長年スカウトを続けているものの靡くことなく、ただひたすら正義を執行する『平和の象徴』。一部では金稼ぎにどん欲なヒーロー協会よりもオールマイト個人のほうが平和に貢献しているとさえ評価されている。

 

 実際、ヒーロー協会所属のS級ヒーロー、キングとはプライベートでの付き合いがあるのだと、まことしやかに噂されている。他にもクロビカリとは筋トレ友達だとか、シルバーファングに弟子入りを提案されただとか、タツマキと喧嘩して引き分けただとか、S級ヒーロー関連の噂は事欠かない。

 

 S級ヒーローすら一目置く英雄その人。そんなオールマイトは、アマイマスクがいることに気が付いて自身の頭に手を当てた。

 

「oh,shit!アマイマスク君じゃないか…もしかして活躍の場を奪ってしまったかな?すまない!」

「悪が倒されたんだ。そんなことは些事だろう?オールマイト」

「そう言ってくれて助かるよ!HAHAHA!」

 

 

「す、すげえ!アマイマスクとオールマイトの夢のコラボだ…!」

「どっちも一般人と画風が違いすぎる!」

「アマイマスク様、オールマイトと仲良かったんだ!」

 

 アマイマスクとオールマイトの会話に、市民が沸き立つ。そんな彼らを横目に見ながら、アマイマスクはオールマイトに近寄った。

 

「久しぶりだね、オールマイト。最後のスカウトから随分時間が経ったけど…そろそろヒーロー協会に所属する気にはなってくれたかな?」

「おっと、またその話かい?すまないがヒーロー協会に入るつもりはないぜ、アマイマスク君。協会に入っても入らなくても、私のすることは変わらないしね!だったらより自由な今のほうが性に合っているのさ!」

「まったく、相変わらずだな、君も」

 

 そういうアマイマスクだが、断られることがわかっていたのだろう。肩をすくめるだけでそれ以上のことは口にしない。

 

「しかし、今回もまた随分とスピード解決だね。前から疑問だったんだけど、どうやって怪人の出現を探知してるんだい?」

「私にはマイト感覚(センス)があるからね。人々の危機は数キロ先でも気づくことができるのさ!」

「つくづく規格外だな、君も」

「HAHAHA、気が付くと体が勝手に動いてしまってね。今回もついつい横やりを入れてしまった」

「それくらい別に構わないさ!それに、余計なお世話こそヒーローの本質…そう言ったのは君じゃないか。あの言葉がどれほど僕に響いたか、君は知らないだろうけどね」

「おっと、まさか君ほどのヒーローにそこまで言われるとは。面はゆ!」

 

 おどけるように言って照れたしぐさをするオールマイトを前に、アマイマスクは冷や汗を一滴垂らしていた。

 

 マイト感覚…さらっと言ってのけたそれが、ヒーローにとってどれほど価値のあるものか彼は分かっているのだろうか。

 

 似たようなことならタツマキ…ヒーロー協会所属の超能力娘もできるだろうが、逆に言えばヒーロー協会のトップクラスくらいしか彼と同じ働きはできない。

 

「っていうか、SNSだとさっきまでT市にいたはずじゃ…」

「ここから数キロ離れてるのに、どうやって…!?」

 

 市民の声に、オールマイトは笑みを浮かべた。

 

「ちょっとひとっ飛びでね」

 

「ちょっとの規模がすげえええええ!」

 

 どっ、とどよめきが発生する。その流れに乗って、オールマイトがこぶしを突きあげた。

 

「それじゃ、そろそろお暇しようかな!最後に一言!ヒーローはいつだって、さらに向こうに!さあご一緒に!」

 

「「「「「Plus Ultra----!」」」」」

 

「ハーハッハッハッハ!次はテレビの前で応援してね!アマイマスク君も、またどこかで会おう!」

「ああ!」

 

 次の瞬間、ぼんっ、と空気のはじける音がしたかと思うと、オールマイトの姿は忽然と消えて笑い声も一瞬で遠くなってしまった。上を見れば、吹雪が開けた青空に小さくなったオールマイトが消えていくのがかろうじて見える。

 

「まったく、相変わらず…凄い人だよ、君は…」

 

 そんなオールマイトを、眩しいものを見る目で見送ったアマイマスク。

 

 常勝無敗、津波や台風などの大災害を相手にしても超スピードで救出を行い死傷者ゼロに抑えるその手腕。

 

 だが、人々が最もオールマイトを評価する理由がこの言葉。『プルスウルトラ』。その言葉こそが、人々が彼を『最高のヒーロー』と呼ぶ理由であった。

 

 ヒーローとしての完成された精神性を表す言葉。

 

 留まることなく上を目指し続ける…言葉にすればたやすく、しかし実際にそれを行動に移せばその人生はまさしく地獄になるだろう。

 

 それを体現する…否、し続けている彼が言うからこそ、この夢物語のような言葉に重みが増す。

 

 彼が現れてから1年が経過した今…『プルスウルトラ』は人々に希望を振りまく合言葉となり、民衆だけではない。ヒーロー業界全体で様々な影響を及ぼし始めている。

 

 これは、そんな本史とはちょっと変わった歴史を歩み始めた世界の物語。

 

「ふぃー、焦った…まさかアマイマスクと鉢合わせするとは。でもおかげでまたプルスウルトラを広められたな。この世界、ヒーローが頑張らないとマジで滅亡するからな…もっと広めないと足りないぜ、全く」

 

 もしくは、明日死ぬともしれぬ危険度S級な世界に中途半端な原作知識を持って転生してしまったので、自衛のために頑張る一人の凡人の物語である。

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