ドラゴンボール ~もう一人の兄~   作:龍玉

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長らく更新を空けていました…他作品(ブルアカだけだけど)の更新に熱が入っていたのでドラゴンボールに触れる機会が減っていました。
今回も別リクエストのお話です。内容的に複数話に分けようかと。
ご報告もあるので、後書きの確認をお願いします。


IF:悟空のいない地球

 

 悟飯のフックを逸らし、回転しながら手刀で切り払うものの伏せた悟飯の髪を掠る程度。逆に足払いを掛けられてしまい、落下しかけた体にアッパーが叩き込まれる。

 

「うぐぇ…!?」

 

「かめはめ────」

 

 痛む腹を無視して体を捻り、突き出そうとした悟飯の両腕の向きを逸らす。逸らすのと同時に悟飯からのかめはめ波が発射され、遠くに座す山に命中した。

 悟飯が「やっばい」と言いたげに顔を青ざめるのを好機と捉え、地面に着地した瞬間に正拳突きを放つ。

 

 流石に動揺したのもあって回避しきれず、しかし咄嗟の判断で体をずらされたことで幾分か威力を軽減される。これでお相子か。

 

「ずあ!」

 

「っぶね!」

 

 伏せた頭の上を大斧のような気配を帯びた蹴りが過ぎる。さっきのお返しとばかりに足払いをかけて蹴り足の軸となっていたもう片方の足を狙い、悟飯の態勢を崩しに掛かる。

 

 が、蹴った勢いを殺さずに飛び跳ねたかと思うと、足払いを回避しながら距離を取られた。ならば距離を詰めて殴打を───

 

 

ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!

 

 

「「!」」

 

 離れた所からタイマーの音が鳴り始める。飛び出そうとした体にブレーキをかけ、深呼吸を一つ。悟飯も同様に深呼吸をすると、超サイヤ人2の状態から元の姿に戻る。俺も元の状態に戻り、少し体を伸ばした。

 

「……ふぅ。おつかれ悟飯、今日もありがとな」

 

「海おじさんこそ、いつもありがとうございます。それじゃあ僕はここで」

 

「あぁ、またな」

 

「はい、また!」

 

 悟飯が飛び立つのを見届け、置いていたタイマーごと机をホイポイカプセルに納めて少しの間過去を振り返る。

 

 セルゲームと現れたメタルクウラの襲撃、それが齎した被害は地球にいた戦士にまで及んだ。その最たるものが……悟空の、死。

 

『へへ……すまねぇみんな』

 

 夥しい数のメタルクウラの光線が悟空の胸を貫いたあの瞬間を、触れていた悟空の体の体温が消えながら耳にした悟空の言葉を、今も覚えている。すぐさま抱きかかえて仙豆を食べさせようにも、クウラによってそれすら許されずに悟空の体が冷たくなり、ついには命を落とした。

 

 呆然としている内に連れていかれた先でクウラの本体と相まみえ、未来と現在の悟飯達のように怒りと悲しみが綯い交ぜになったまま戦い、合流したセルの助力もあってメタルクウラを倒すことが出来た……だけど、悟空の死によってベジータは戦う意志を失くし、俺は燃え尽きるようにして戦いの前線から退いだ。

 

 今まで俺は、悟空と皆を守る思い、そして俺自身を強くしたい思いで戦っていた。その悟空が死に、悟空本人が蘇生を拒否してあの世に行ってからはただ仕事に打ち込み続けた。戦闘に至上の喜びを得るサイヤ人とは思えないほどに、戦いを避けるようにして。

 そんな俺をパンジは傍で支えてくれた。何処か熱を失った俺のことには踏み込まず、ただ黙って俺の傍にいてくれた。身重の身でありながらも、ずっと俺を想ってくれていた。それがどれだけの救いになっただろう。少なくとも、生きなければならないと思えるようにはなっていた。

 

 転機は天下一大武道の日。悟飯達がバトルロイヤル形式の試合を勝ち進む姿を眺めながらパンジと共に家で見守っていると、異変が起きた。本来なら試合の番人となる筈だったサタンのお弟子さんがボージャックという一味に成り代わられていたのだ。結果、決勝に出場していたトランクスやラディッツ達はボージャック一味の襲撃によって地に伏し、悟飯達も一味のコンビネーションによって翻弄され、肩で息をする程に追い詰められた。

 今、何もしなければ全員殺されてしまうことはすぐにでもわかった。

 

『……先生』

 

『どうしたの?』

 

『パンジ達のこと、お願いします』

 

『…うん。気を付けてね』

 

 居ても立っても居られずに立ち上がり、リンを生んだばかりで安静にしなければいけないパンジの様子を見に来てくれた先生に一声かけて着替える。懐かしい紫色の武道着を身に着けると自然と意識が戦いに向き始めた。

 皆が命を賭して戦っているのに、俺一人がのうのうと見ていることを俺自身が許せなかった。幸いにして戦いの勘自体を落とさぬように維持していたおかげで、すぐにでも戦いに出ることは出来る。避けていた筈の戦いに備えていたのは、心の奥底に未練があったからなのかもしれない。今度こそ、仲間を守るためにと。

 

『海さん』

 

『すまん、パンジ。俺、みんなのこと放っておけないみたいだ』

 

『知ってるよ。だから……ちゃんと、帰って来てね』

 

 眠っていたリンを抱きかかえて微笑んだパンジの姿を目に焼き付け、絶対に死なないことを決意して額に指を当て、意識を悟飯達の元へ向ける。

 追い詰められていた悟飯はボージャックに鯖折をされそうになり、未来の悟飯は他の一味に超能力らしきもので拘束されていた。猶予は無い。そう考えてボージャックの傍に瞬間移動で現れ、クウラとの戦いで掴んだ超サイヤ人のその先の姿で左足を突き出し────

 

 同じようにボージャックへ右腕を突き出した悟空と、目が合った。

 

『『ッ!?』』

 

 命中がほんの少しのタイミングでズレた拳と足がボージャックの両頬にめり込み、ボージャックが廃墟を崩しながら姿を消す。同時、死んだはずの悟空と共にボージャック以外の一味へ気弾を放つことで未来の悟飯を救出すれば、悟空が光となって悟飯を抱えて地面へと向かう。俺も未来の悟飯に肩を貸しながら地面へ降り、二人の会話を見守る。

 

 光となった悟空が悟飯を地面に寝かせ、そのまま消えようとして……俺と、目が合った。

 

『……兄ちゃん』

 

『……悟空』

 

『へへ…やっぱり兄ちゃんは今の方が良いや。兄ちゃんがあの世に来た時が楽しみだ』

 

『折角会えたのにあの世に行った時のことを話すな、まったく……』

 

『悪ぃ悪ぃ!でも今の兄ちゃんなら、もう大丈夫だろ?』

 

『……あぁ。まだ、完全に踏ん切りが着いたわけじゃないけど……もう少し、頑張ってみるよ』

 

 胸の前で拳を握り締めて決意を込めれば、今度こそ悟空はあの世に戻った。肩を支えていた悟飯が声を漏らし、すぐに口を固く結んだ。悟飯達は既に、クウラとの戦いで悟空と話していた。恐らくだが、未来の悟飯はそこで区切りをつけたのだろう。

 

 横になっていた悟飯が起き上がり、もう一度超サイヤ人の壁を越えた後。突然の乱入者に混乱していたボージャック一味は悟飯達と俺の手で撃破された。ボージャック一味が死んだ後、すぐに姿を消したのでどう収まったのかは詳しくは知らないが、またマークが倒したということになったというのは耳にした。

 

「……。あれからもう何年経ったかなぁ」

 

 天下一大武道会が終わった後、俺はまた戦いに備えるための勘と錆を落としにかかった。勘自体はあの戦いで大分取り戻したけど、ずっと仕事に打ち込んだことによる錆だけは落とせていなかった。

 そこで悟飯との組手を今まで以上に行い、悟飯の修行も兼ねて錆落としをした。未来の悟飯と何か話したのか、それともボージャックとの戦いがきっかけとなったのか悟飯もやる気を見せ、俺の相手をよくしてくれるようになった。

 先程までの組手もその一環だ。

 

 勿論俺と悟飯だけじゃない。ラディッツ達も一緒に組手をするからか、全員の意欲が高い。今ならばもう一度ボージャック一味が来ても負けることはないだろう。

 

 それに、あの世での修行のおかげで超サイヤ人2のもう一つ先の領域にも足を踏み入れることも出来た。重力による負荷を掛けたトレーニングを繰り返してるおかげで体も鍛えられてきてるし、いつもの仕事も鍛錬の糧にしてる。

 

 ベジータもボージャックとの戦いで何か吹っ切れたのか、時々俺や悟飯と組手を繰り返し、重力室で筋トレを続けている。今も変わらず、大きくなったトランクスと一緒に重力室に籠もっているころだろう。

 

 そうそう、トランクスで思い出した。何と悟飯に弟が生まれたのだ。名を悟天と言い、悟空によく似たいたずらっ子だ。トランクスとよく遊んではこっちに突撃してくるので、リンも一緒に構ってやることが多い。

 それで懐かれたのか、何か面白そうなことがあったらよく俺に伝えに来てくれる。前は氷山の中に変な研究所があるとか言って、一悶着あった。

 

 何だっけ、ドクターウィロー?だのが悟天とトランクスを利用してじい様を攫おうとしてたんだったか。超サイヤ人の状態で遊んでた2人の攻撃が永久凍土を溶かしちゃったせいで目覚めたらしい。

 結局俺の方に悟天達が自慢しに来たせいで発覚しちゃったけど。今頃太陽付近にウィローの残骸が漂ってる頃だろう。

 

「海おじさーん!すみません、伝え忘れてたことがありました!」

 

「悟飯?伝え忘れてたことって?」

 

 お日様を眺めていると、先程帰ったばかりの悟飯が戻ってきた。珍しい、わざわざ言いに戻ってこなくても心の中で呼んでくれればすぐに向かってやったのに。そう言うと悟飯は思い出したかのように目をそらす。……失念してたな。

 

「え、えっとそれでですね!実は近々天下一武道会が開かれるそうなんてす」

 

「天下一武道会?もうそんな時期か……」

 

「折角なので、海おじさんも出ませんか?そろそろ本番の試合で実力を確かめてみたくて…」

 

「悟飯はハイスクールがあるけど、大丈夫なのか?」

 

「特に支障はなかったはずですけど……」

 

「ふむ……確かに本番の試合はしてないな。それも、天下一武道会レベルは……」

 

「ですよね!いい機会かと思ったんですよ!」

 

 悟飯の言う事には一理ある。組手や筋トレを繰り返しても、やっぱりプレッシャーの掛かる本番ほど糧になるものはない。しかも天下一武道会とくれば、身に入る気合も段違いだろう。

 

「……よし、俺も出場するか!他の皆も誘ってみる」

 

「ありがとうございます!やっぱり皆で出てみたいって思いますもんね!」

 

「そりゃあ折角の天下一武道会だしな。じゃあ俺はラディッツの所に───」

 

『兄ちゃん、悟飯!オラも天下一武道会に出るぞ!!』

 

「「!?」」

 

 頭に届くようにして聞こえる声。現世では数年ぶりで、あの世では何度も聞いた、その声は……!

 

「お、お父さん!?お父さんも天下一武道会に来てくれるんですか!?」

 

『おう!折角の天下一武道会だし、兄ちゃんも出るんならオラも出てみてぇしな!』

 

「悟空お前、悟天が生まれた時に現世に来てただろ。もうこの世には来れないんじゃ…」

 

『実はよ!界王様に相談したら、オラまだ1日分の滞在時間を使い切ってなかったみたいでな〜!天下一武道会の分のことを考えても、もう少しだけならそっちにいられるみたいだ!』

 

 初めて知ったが??悟空お前、悟天が生まれてすぐに会いに来たけど1日丸々いたわけじゃなかったんかい。

……まぁ、悟空も天下一武道会に出場するのはめちゃくちゃ嬉しいから文句なんてあるわけない。なんならベジータも出場しそうだから尚の事だ。

 

「ならそのことも含めて、皆に伝えないとな。悟飯、早速瞬間移動で向かおう!」

 

「わかりました!……お父さん、本当に久しぶりに会うなぁ……」

 

『へへ、オラはあの世から悟飯達のことは見れてたけど、そっちはそういうわけにもいかねぇからな。1日だけだけんど、めいいっぱい楽しもうぜ!』

 

「っ…!はい!」

 

 




それともう一つご報告をば。
現在ドラゴンボール超の資料の確保が叶ったので、時折本編も更新していく所存です。私情だったり他作品の更新で忙しいので低頻度ではありますが……。
なので、本編を優先しながら更新していくつもりなので、今番外編の続きは気長にお待ち下さい。
また、この番外編を書き終わった場合は番外編の更新を一度休止します。他にもリクエストが来てはいるのですが、本編の更新を優先します。他のリクエストは本編の区切りがついた頃に執筆しようかと思います。
ではまた、本編でお会いしたく思います。さようなら〜
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