今年のCODの情報がそろそろ出始める頃ですが不安しかないのが悲しい所…
そしてリアル先輩は今年も右も左も国内も海外もひっどいなぁ!(白目
感想・評価よろしくお願いいたします。
徳島
まずきっかけは自分の料理を著名な料理評論本の編集長からけちょんけちょんに酷評された事。
酷評を大雑把にまとめると『腕とセンスは抜群でも親から仕込まれた教科書通りの料理ばかりで、自己主張や人生経験の厚みがこれっぽっちも伝わってこない薄っぺらな存在』というもので、それを当の本人が真に受けた事。
だったら人生経験に厚みを持たせようと実家の厨房を飛び出した先が海上自衛隊だった事。
腐れ縁というか哀れにも目をつけられてしまったというべきか、ともかく以後長い付き合いとなる江田島五郎(当時三等海佐)と出会った事。
彼との会話をきっかけに更なる経験を積むべく
――――第3次世界大戦が勃発した事。
――――世界全土が戦火に覆われる中、何故かは分からないが日本だけ核の炎からも化学兵器の死の霧からも免れてWW3が終戦した矢先、突如『門』から出現した異世界の軍勢に銀座は1度目の蹂躙を受け、その報復と賠償を求めて日本政府は自衛隊の派遣を決定。
陸自・空自主体の特地派遣部隊では数少ない海自からの派遣要員に選ばれた江田島から誘われ、徳島も特地の土を踏んだ。
特地で様々な人々と出会った。
特地特有の様々な食材や料理や調理法と出会った。
あの銀座の英雄こと伊丹耀司の部下に徳島と同じく料理人上がりの自衛官が居ると聞き、古田という元板前の自衛官と陸自・海自の壁を越えて料理談義を交わしたりもした。
途中から地球側での色々と後ろめたい裏取引の結果やってきたという、元
――――特地で初めての実戦も経験した。
目の前で仲間の自衛官が、特地の住民が、自分の料理を食べて喜んでくれた人達が死ぬのを見た。
彼らを殺し、そして徳島自身も殺そうと、アルヌスに侵入してきた帝国軍ゾルザル派の工作員
や便意兵に応戦し、射殺した事もある。
敵によって破壊されたアルヌスの街の復興に従事する傍ら、『門』の喪失によって地球産の食材や調理器具の使用制限という難解な課題に直面しつつ、それすらも良い経験と徳島は受け入れ、料理の腕を磨いてきたのであった。
兎にも角にも自衛官としても中々に波乱万丈な経験を積み重ねてきた徳島であるが、彼自身は己が料理人であるという自意識については決してブレる事無く抱き続けていた。
――――それがどうしてか今、文字通り世界中にその名を轟かせる伝説の英雄達に率いられて極秘作戦に従事している。
(まさか特殊部隊の選抜に落っこちた俺が異世界で特殊部隊とガッツリ肩を並べるなんてなぁ)
故に彼が斯様な感想を抱いてしまったのもしょうがないであろう。
――――しかしまさか最後の最後に味方の母艦と急遽合流出来なくなり、大海原に放り出される羽目に陥るとは思っていもいなかったのである。
<脱出から数時間後>
徳島甫 二等海曹/自衛隊特地派遣部隊<特殊統合部隊>
特別地域・アヴィオン海上
海上で荒れ狂う雷鳴轟く海をたかが11メートルクラスの複合艇で耐え抜けたのは奇跡的と言って良かった。
それでも味方と合流出来ず、大海原で孤立しているという窮地は未だ続いている。しかもいまだ未知の要素で溢れている異世界の海に、だ。
おまけに行く手の海上には霧すらも発生している有様だ。
複合艇船首の銃座に搭載されたM240B・汎用機関銃の表面を防刃・防火・耐水仕様のグローブを嵌めた徳島の手が撫でると、早くも鋼で作られた銃本体に少なくない量の水滴が生じていた。
徳島が被っている防弾ヘルメットやスリングで携行しているSIG・MPXも似たようなものだ。
「まるで綿飴か使用中の燻製器の中に居る気分だ……」
例えに一々料理に関する単語が出てしまう辺りが徳島が徳島たる所以と言えるのかもしれない。
ともかくそんな感想がつい飛び出してしまう位には濃い海霧だ。
現在複合艇の操作を務めているのは江田島だ。彼は濃霧対策として、光学・赤外線併用方式の暗視装置を装着した上で操縦を行っている。
光量を数万倍に増幅する光学方式と対象の熱赤外線を可視化する赤外線方式、双方の画像を融合させて表示する最新鋭の装備なのだが、夜闇だけでなく今回のような霧や火災現場の煙の透過を可能とするのだ。既に一般でも乗用車のアシスト機能や救助隊の救難ドローン等に活用されている技術である。
それでも安全と燃料の節約を考慮した江田島は巡航速度よりもやや抑えた速度で複合艇を走らせていた。
「徳島君、操舵交代をお願いできますか」
「なら自分が機銃に付きます」
「お願いします」
波にぶつかるたび上下に揺れる船上で器用にバランスと取りながら、徳島は機銃手に立候補した富田と位置を入れ替わった。
海上自衛隊が運用する複合艇こと特別機動船は操作用の機器一式が船体の後方寄りに位置しており、銃座と操作盤の間のスペースが他の乗員用の空間だ。他の
徳島同様、海自仕様のネイビーブルーを主体とした迷彩服姿に各種戦闘用装備を身に着けて自ら複合艇の舵を操る姿は佐官の本来あるべき姿からはかけ離れているのだが……
特地派遣部隊に限っては重武装のヘリや戦車に乗って最前線で指揮を執る佐官クラスの戦闘団長とかザラに居たりするので、細かい事は気にしない事にした徳島である。
「操舵員、交代します」
「操舵員交代、お願いします。進路面舵いっぱい」
「了解、進路面舵いっぱーい」
復唱しながら素早く場所と役割を徳島と入れ替わると、江田島は軽量防弾ヘルメットのアタッチメントに取り付けた暗視装置を上方向へ90度持ち上げてから、眼鏡を外して目頭と眉間をほぐしながら大きく息を吐いた。
付き合いの長い徳島からしても珍しい姿だ。大時化の中転覆しないよう必死に船を走らせ続け、嵐を乗り越えてからも濃霧の中の操船という神経をすり減らす航行をここまで独りでになってみせたのだから相応の消耗も当然だろう。
「流石の江田島さんも今回は辛そうですね」
「当たり前でしょう。このような弱音を意味も無く言いふらす趣味はありませんが、私は徳島君達のように若くもなければこのような専門的な特殊作戦の為の訓練も受けてはいない身なのですからね」
嘆息してから、江田島は戦闘用ベストのポーチへと手を伸ばした。
取り出したのは防水カバーに包まれた海図である。実際に特地の海の航海経験を持つ特地の船乗りから監修を受けつつ、空自と海自が協力して情報収集を行い作り上げた代物だ。
計器の速度表と燃料計の残量、特地の地磁気に対応した専用のコンパス、現在の時間等をチェック。
残念ながら濃霧のせいで天体観測は使えない。計算式を一緒に取り出したペンで海図に記入し、現在地点を弾き出そうと試みる海江田。自衛艦の艦長まで経験した根っからの船乗りなだけに彼は当然のように航海術にも長けている。
「天測が行えないのと嵐の影響がどれだけ及んだか把握し切れていませんので精度は些か不確かですが、計算が正しければ我々が乗るこの船はティナエという国の首都がある島に接近している筈です」
数字と文字が書き込まれた海図に描かれた島の1つを江田島は指差した。
徳島も車両のハンドルそっくりな舵輪で
「燃料持ちますかね?」
「ギリギリ、といった所でしょう。この濃霧ともなると速度を出すわけにもいきません。
ですがVIPの事を考えますとこれ以上時間をかけるのも宜しくなさそうなのが難しい所です」
江田島が海図からチラリと目線を動かし、徳島の視線も自然とそれを追いかける。
この度の作戦目標ことピニャ女帝が遭難用の体温保護に用いられるエマージェンシーブランケットに包まれる形で、ぐったりと複合艇の床に横たわっていた。
脱出直後は複合艇に回収されるまで囚われの身だったとは思えない溌溂さを発揮していたのだが、嵐の海に翻弄されている間に糸が切れたように倒れてしまったのである。
冷静に考えてみればうら若き女の身で穴倉同然の牢に粗末な貫頭衣1枚で何日も繋がれていた立場なのだから、心身共に大いに疲弊していない方がおかしかったのだ。そこに加えて何時間も荒波に揺られ強烈な雨風に嬲られ続けたとなれば容体が悪化するのも致し方あるまい。
……ただし、ブランケットからはみ出した両腕は、何故かピニャの傍らに腰を下ろしている伊丹の腰にガッシリと廻されていたりするのだが。
意識が無い筈の帝国の最高権力者から抱き着かれている伊丹の方は、20式小銃に手を添えて霧の向こうに意識を張り巡らせつつも困った顔をしている。
でもってその伊丹の本妻である栗林は栗林でやはり警戒は怠っていないが、しきりに怖い感じの視線をピニャに浴びせていたり。
おまけにピニャの貫頭衣はサイズが小さめで布地も粗末、しかも雨と海の湿気を吸った布地がピッタリと彼女の肌に張り付いているものだから、平均以上に豊かな谷間は露わだし先端は薄布1枚越しにくっきり浮かび上がるわなピニャの胸元が伊丹の腰に押し付けられるという色々と危ない状況になっている。
まだ30にもならない美貌の女帝が愛しの上官兼旦那様と必要以上に密着しているものだから、栗林の眼光はおっかない感じに鋭くなる一方なのであった。
逃げ場のない狭い船上で発生しつつある修羅場に、2人をよく知る同僚である富田はといえば気候とは別の理由で額に冷や汗を浮かばせ、必死におっかない気配の発生源から目を逸らすばかりである。徳島だって富田と似たような感想だ。
その点外国人の2人は豊富な実戦経験の賜物かは知らないが、戦友とその嫁と護衛対象が繰り広げる修羅場など一顧だにせず警戒を維持している。
(伊丹一尉とピニャ陛下は色々と因縁があるって聞いてはいたけどさぁ……)
他人の修羅場を楽しむ趣味を持ち合わせていない徳島は、ついつい口から溜息を漏らすのだった。
だがまぁそれでも、冷静に考えて江田島の意見の方が正しい事は間違いない。早急に陸の上で安静にさせるべきだ。
そう徳島が思考を巡らせた時だった。
「あれ?」
声を漏らして反応したのは伊丹だった。
「何か今鐘の音が聞こえなかったかな?」
「鐘の音、ですか? ここは海のど真ん中ですよ」
「私にもエンジンと風の音しか聞こえませんでしたけど……」
余計にバッテリーを消耗させない為に陸自組と外人組は暗視装置を起動させず目元から離した状態だ。そんな中での肉眼での視界は濃霧のせいで5メートルあるかないか、そんなレベルである。
突然の上官の反応に栗林と富田が首を傾げた一方、伊丹の言葉に追従したのは意外な事に老兵のプライスだった。
「もしかしてそれは船鐘の音じゃないのか」
「ええ、海の上で鐘の音が聞こえたとなればそれでしょう。我々が今居るこのアヴィオン海に於いても地球と同様、航海中に霧などで停泊中の際は鐘を鳴らして船同士の衝突事故を避ける、そのような掟が一般的だそうです」
「つまりこの近くに船が居るという事か?」
「徳島君、気を付けて下さい。このような濃霧の中船を走らせているのはおそらく霧を見通す装備を持つ我々だけでしょう。
もしガレー船にでもぶつかってしまえば私達は象に体当たりする子犬のようなもの、ひとたまりもないでしょうねぇ」
「りょ、了解しました」
いそいそと遅ればせながら海図を読む為にまだ使っていなかった暗視装置を目元へ下ろして起動する徳島。
――――だが、既に時を逸していた。
「うっそだろぉ!!?」
複合艇の行く手、光学補正により緻密な陰影で描写された視界の中に、突如として複合艇と大差無い全長の木製の帆船のシルエットが出現したのである。
そして同時に帆船の船上には感知した熱をシルエット化したモノ……すなわち帆船の主である人間の姿も存在していたのだ。
広大な海であまりにもピンポイントな不運。
このままでは帆船の横っ腹に直撃コースだ。
「全員しっかり掴まって!」
徳島はスロットルをスクリュー反転に一気に叩き込んで舵を大きく切り、複合艇を急旋回させた。突然の急制動に一斉に伊丹達の間から驚きと苦悶の呻き声が口々に飛び出したが、気に掛ける猶予すら残っていなかった。
最大限迅速な対処だったがそれでも手遅れだった。
慣性を殺し切れず、直前で90度旋回には間に合った複合艇は、最終的に横っ腹同士を帆船とぶつけ合う形となった。それでもかなりの衝撃だった。
ひとたまりもなかったのは帆船の方だった。
岩に擦れても簡単に穴が開かない頑丈な強化ゴムの船体を中心に底板の強化プラスチックと小型・高出力のエンジンを複数搭載した複合艇の排水量は下手な車以上の重量にも到達する。
一方相手は所詮は木製かつ個人で操れる程度の小型帆船だ。しかも複合艇の方は10人近い乗員分の重量も加算されていた。
複合艇が旋回時に生じさせた波が船体諸共モロにぶつかったのも重なり、横っ面を叩かれる形になった帆船は水飛沫を上げていとも転覆してしまったのだ。
――――「うわぁ!?」という明らかな少女の悲鳴と共に。
水先案内人の人魚の皆さんがいない結果こうなりました。