機動戦士ガンダムSEED COORDINATION   作:笑嘲嗤

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第9話 遭遇

 ジュディケーターと敵のハイザックハイマニューバが鍔迫り合いをしている。

 

『皮肉なものだよ。ガンダム。こうしてお目にかかれるとは思わなかった』

 

 相手に俺は押される。やはりこの機体は型落ち機だ。出力では相手に勝てない。すぐに距離を取る。敵はビームライフルで追撃してくる。

 

『どうしたのかな?浮かぶ瀬は踏み込まなければ得られないものだよ』

 

 相手の煽りがウザい。すぐに俺は十字架型のドラグーンを正面に展開して相手のビームを弾く。そしてすぐに十字架を大きく展開して司法にビームを放つ。

 

『まるで神の子だね。言わばヴィアドロローサと言ったところか』

 

 そして相手の周囲でビームが曲がり、さらに敵機体の直前でありとあらゆる方向に曲がる。これは避けられない。俺はそう確信した。だけど。

 

『足りないな』

 

 相手はビームの乱打を全てよけきった。

 

「なにぃお!」

 

『足りないのだ!』

 

 それどころかこっちにビームライフルを撃ち返してくる。俺は慌てて避ける。その間もずっと敵に向かってビームを放ち続けた。だがいずれもすべて避けられてしまった。

 

『もっとガンダムらしく戦い給え!あの混沌の華を!』

 

「勝手に言ってろ!」

 

 俺はただひたすら移動しながらビームを放ち続けた。相手はよけ続ける。だけど距離はじりじりと埋まっていく。

 

『君はもっとガンダムを支配しろたまえ!!』

 

 付き合ってられない。こっちは子供たちの命がかかっているんだ。相手を巻くことだけを考えたい。

 

『ああ。なるほど。子供たちが最優先か。ならばいいことを一つ。あの君への免責勅語。子供を入れなかったのは私の意思だ』

 

「お前が?お前がやったのか!?」

 

「ああ!わかってたやった!!」

 

「だったら死ねよぉ!」

 

 俺はすぐに相手に迫る。ビームを乱打しながら、斬りかかる。

 

『そうだ。もっとだ。怒りはいい。現状を打破するためのエネルギーだとも!』

 

 相手とひたすらに切り結ぶ。だけどビームサーベルの切っ先はちっとも届かない。

 

「あぁあ!」

 

『ああ!』

 

 互いに何度もビームサーベルを打ちあう。だけどお互いに決定打は与えられない。だけど不思議だ。なんだこの感覚は相手の切っ先は見える。その先が。

 

「それを見ては駄目」

 

 後ろから声がした。そして俺の手の上に女の手が重なる。振り向くと凍っていたはず女が目を開けていた。青い瞳で俺を見詰めている。

 

「だめ。相手の感情に同調しないで。ドラグーンをわたしに」

 

「まかせていいのか?」

 

「ええ。まかせて」

 

 俺は彼女の言う通りにする。十字架ドラグーンとのリンクを切った。そしてすぐに後ろの女の子との間にリンクがつながったことがモニターに表示された。

 

「行きなさい。クロスビット」

 

 その言葉と共に十字架たちがジュディケーターの背中から離れていった。そしてハイザックハイマニューバに向けて距離を取ってオールレンジ攻撃を仕掛けた。

 

『この感じ?!違う!ユウ・ニニギじゃないな!』

 

 相手は必死に躱した。だけど一つもビームが相手の脚部をもぎ取った。

 

『邪魔が入ったな!!この感じ?!まだ生き残っていたか!!』

 

「わたしはあなたを認めない」

 

 さらにビットのオールレンジ攻撃は続く。だがハイザックハイマニューバーはすぐに背中を向けて飛び去って行った。途中、胸部だけのハイザックを回収していった。

 

『放して!ユウさん!ユウさんぁ!!』

 

『黙っていたまえお嬢さん。運命はここまでだ』

 

 そして敵は去っていった。俺はすぐに子供たちの方へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 子供たちをまだ無事だった小型の宇宙船に乗せて、俺たちはヤリアヌスを出た。

 

「そろそろ話してもいいか?」

 

「わたしのことね?」

 

 船の操縦席で、子供たちに聞かれないように俺は金髪の女に問いかけた。

 

「俺はユウ・ニニギ。元ザフトだ。君は誰だ?」

 

「わたしはロミ・リ・フェレル。……そうね。ガンダムジュディケーターと共に使命を帯びている。とだけ言わせてちょうだい」

 

「不確定要素はなしにしたいんだが」

 

「だけど今のあなたの状況の方が不確定でしょ。あの子供たち、どうするの?」

 

「それは……」

 

「お互いにガンダムを必要としてる。組めばいいわ。互いの事情にはとりあえず首を突っ込まないでいればいい」

 

「一応聞いておくが、お前はプランの世界に馴染めてないのか?」

 

「そうね。今の世界の情勢がどうなっているのか詳しくは知らないけど、デスティニープランには明確に反対の立場を取ってる」

 

「わかった。ならば組める。よろしく頼むよ」

 

「ええ。よろしく」

 

 俺たちは一応握手を交わした。だけど幸先が良くないのも確かだ。

 

「これからどうするの?」

 

「エゥーゴに接触して子供たちの保護を要請するよ」

 

「エゥーゴ?」

 

「Anti Enpire Union Groupの略らしい。デスティニープランに抗ってる連中だ。帝国からは叛徒扱いだけどな。世界は広い。どこかに潜んでる」

 

「そう。そこなら私の目的にも近そうね。いいわ」

 

「俺が知ってる限りだと、地球のあちらこちらにエゥーゴの拠点がある。宇宙にもあるらしい。デブリベルト一帯がそうなんじゃないかって帝国やザフトは考えてるが……」

 

「確定情報ではないのね。なら地球へと降りない?私はオーブに用があるの」

 

「オーブ近海か。確かにあそこらへんならいそうではあるが。まずはデブリベルトを目指そう」

 

「わかった。任せるわ」

 

 俺たちは進路をデブリベルトに合わせた。かつてブレイクザワールドの震源となった宙域だ。出来ればエゥーゴと接触できたらいいのだが。そう思う。

 

 

 

 

 

 

 ラグンヒルは怒りの感情を必死に押し殺していた。目の前にいるのは一応は上官である。だが本人は相変わらず仮面なんかで目元を隠して、口元にはニヤニヤとした笑みを張り付けている。

 

「まだ怒っているのかね?」

 

「そう思わない理由がありますか?」

 

「ふむ。だがねぇ。君の言う通りに免責状は出したんだよ。くくく」

 

「ああなるってわかってて出した!」

 

「君たちコーディネーターは早とちりしすぎなんだよ。だから仕損じる」

 

 そう言いながらアンサラーはデスクの近くの冷蔵庫を開いて、中から金属の筒を取り出した。そして蓋を開けて、皿の中に中身の白い固形物を移して、それをスプーンですくって口にくわえる。

 

「なんですかそれ?」

 

「アイスだが」

 

「なんで今食べてるんです?」

 

「食べたいからだ。君も食べたいかね?」

 

「けっこうです!」

 

 人をいちいち逆なでしてくるこの様にさらに怒りを覚えている。だけど心なしかアンサラーはしゅんとしているように見えた。

 

「このアイスは私の手作りなのだ」

 

「だから?」

 

「いや。何でもない……」

 

 やはりしゅんとする。それに気がそがれる思いを感じる。

 

「少しだけなら」

 

「そうか!遠慮することはないぞ!」

 

 アンサラーは新しく皿を用意してそこに金属の筒からアイスを出して盛り付ける。少しと言ったのに山盛りだった。

 

「このアイスは厳選された牛乳からさらに選び抜かれた技術を用いて生クリームを精製し、さらには本場地球のマダガスカル産のバニラビーンズを私が懇切丁寧に厳選し香料を抽出した至高のバニラアイスなのだ。私は近代科学の冷凍技術を否定はしない。だが氷水と塩を使った冷却技術と金属の筒を使った昔ながらの伝統的手法でしか得られない食感こそ究極なのだよ!」

 

 うざい。その一言を思いながらアイスを口にする。

 

「おいしい」

 

「ふっ」

 

 やっぱりにやけがウザい。だがアイスの美味しさは本物だった。

 

「そんなにアイスが好きならアイス屋をやればいいんじゃないですか?」

 

「何を言っている。プランがそれを否定するだろう。君は忘れっぽいのかな?」

 

「冗談で言っただけです」

 

「まあ私ならプランなしでも最高のアイス屋になれるだろうがな」

 

 なんという傲慢だろうか。

 

「どうしてナチュラルなのにザフトにいるんですか?」

 

「アウラとの契約がある。それに仕事をしてないと勘が鈍る」

 

「皇帝陛下がナチュラルと仲がいいのは問題なんじゃ」

 

「それはコーディネーターの都合だろう。地上にはナチュラル主体の帝国軍だって展開してる。アウラはまあ差別主義者だが、ナチュラルも統治の対象とは見ているのは確かだよ。それに彼女がまだファウンデーションを起こす前から私たちは知り合いだったしな」

 

「なんで仮面をしてるんですか?」

 

「エゥーゴに私の顔がバレるとまずいんでね。まあもっともどちらかと言えばただ自己満足だ」

 

 ラグンヒルは目を細めて睨む。だがアンサラーは意にもかいしない。

 

「さてそれでは今後のことを話そうじゃないか。アウラがガンダムのことを知った。今癇癪を起してる。正式にガンダム討伐の軍団が編成されることになる」

 

「ユウさんは!ユウさんはガンダムにはきっと関係ないんです!」

 

「だろうね。あのガンダムがあそこにあったのはただの偶然だろう。だがユウ・ニニギは明確にガンダムに選ばれた」

 

「今度こそちゃんと子供たちの命だって保証すればきっと投降してくれます!」

 

「どうかな?彼は愚かではないよ。こちらを信用などしない。だが一応アウラにはユウ・ニニギの命だけは捕虜になったら私に一任するという言質は取ってきておいた」

 

「それって」

 

「女らしさは捨てろ。待ってれば与えてくれるなんて思うな。愛しているなら障害はすべて自分の手で排除しろ」

 

 アイスを食べながら冷徹にそうアンサラーは語った。

 

「ガンダムは倒します。その代わりユウさんはわたしがもらいます」

 

「ああ。それでいい。期待しているよ。ではしばしの休暇を楽しみ給え」

 

「休暇?すぐに軍団は編成されないんですか?」

 

「今皇太子妃殿下がデブリベルトの旧ユニウスセブン跡地で慰霊しに行っている。そっちの方に事務方のリソースがそがれてるんだよ」

 

「そうですか……」

 

「皇太子妃たっての希望らしいからね。アウラも止められないし皇太子もそうだ。お姫様の我儘に付き合わされるのは面倒くさいものだよ。まったくね」

 

 アイスをお替りしながら軽く語るアンサラーにさらに苛立ちを覚えながらも、ラグンヒルはオフィスを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デブリベルトにはわりとすぐについた。だけどもここも広い。果たしてエゥーゴと接触できるのだろうか。そんな時だ。

 

「ユウさん!レーダーにMSの影がある!」

 

「まじかよ」

 

 俺はすぐに船をデブリの影に停める。そしてガンダムに乗ってMSの方へと忍び足で近づく。

 

「強行偵察型複座のハイザック?」

 

 エゥーゴだったらよかったがどうやらザフトのようだ。何かを探しているように見える。俺は逡巡する。リスクとリスクを天秤にかける。そしてライフルでハイザックに狙いを定めて引き金を引いた。ハイザックはコクピットを射抜かれて爆発した。ここらへんはニュートロンジャマーが濃い。すぐにはザフトにはバレないだろう。

 

ガンダムで船を引っ張る。ある程度スラスターを吹かした後は慣性航行に移行する。背中に冷汗が流れるのを感じる。その時だ。

 

~~~♪

 

「歌声?」

 

 どこからか聞こえたような気がした。おれはすぐにあたりを見回す。そして救命ポットが流れているのを見つけた。すぐに近寄って、それを拾う。宇宙船の中に取り込んだ。

 

「何拾ってきちゃったのあなたは?」

 

 ロミがあきれ顔で俺を見ている。だけど何かを感じた。それに目の前で宇宙を漂流しているのは見過ごせない。救命ポットのパネルにケーブルを差し込んで、パソコンから扉の解放を命じた。そして救命ポットの扉が開いた。

 

「ごくろうさま」

 

 ピンク色の髪の美女が現れた。女はドレスを纏い、頭にティアラをつけていた。柔らかでどこか母性的な優しさを感じる。朗らかな顔をしていたが、すぐにその顔は戸惑いの色を見せた。

 

「テイコクチャウデェ!」

 

 なんか一緒にピンク色の丸いドローンも出てきた。子供たちもロミも首を傾げている。だけど俺はこの女を知っている。

 

「もしかしてあなた方はザフトや帝国軍の方々ではないのでしょうか?」

 

「ああ。違う。むしろ……その敵だよ。ラクス・タオ」

 

 デブリベルトで拾ったのは帝国のお姫さまでした。そんなのありかよと叫びたくなるのを必死にこらえたのだった。

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