機動戦士ガンダムSEED COORDINATION   作:笑嘲嗤

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第13話 思いやり

 ザフトの戦艦は相変わらず後ろを追いかけてきている。もう気がついたら地球がすぐそこまで来ていたのに。

 

「ねぇ。ユウ。私たち誘導されてない?」

 

「ああ。そうだろな。後ろからプレッシャー掛けて航路を選ばされているの間違いない。だけど奇襲も待ち伏せも気配がない」

 

「なんなのかしらね。思惑が全く読めないわ」

 

 俺とロミは今の状況が誰かの掌の上だとひしひしと感じていた。だけどこのまま進むほかないのも確かだ。そんなときだ。

 

「モビルスーツだわ!正面から来てる!?」

 

「ち!すぐにガンダムで行く!」

 

 俺はすぐにガンダムに乗り込み、船のそばで臨戦態勢を取る。MSが六機近づいてきた。期待はゲルググが五機。それと。

 

「デュエル?!」

 

 ロミが驚いている。俺もだ。あれは伝説の機体の一つだ。そのパイロットの名は。

 

『驚いたな。情報通り本当にガンダムがいるとは』

 

 モニターに男の顔が映し出される。銀髪の長い髪の毛。前髪はぱっつんしたおかっぱスタイル。

 

「イザーク・ジュール……」

 

『ああ。そうだ。こちらエゥーゴのジュール隊だ。ガンダムとラクス・タオがいると聞いてここまで来た』

 

 光明が差した。俺はすぐにイザーク・ジュールに呼びかける。

 

「俺はユウ・ニニギ。ザフトの脱走兵だ」

 

『そのようだな』

 

「そちらには交渉の用意はあるか?」

 

『話し次第だ』

 

「ガンダムを売ろう。如何に?」

 

 イザーク・ジュールが目を丸くしている。だがすぐに真顔に戻った。

 

『いいだろう。その交渉にのろう。こちらの船に来い』

 

「わかった。エスコートを頼む」

 

 すぐにこちら側に誘導信号が発せられた。ゲルググたちが背後に迫るザフト艦に睨みをきかせながら、俺たちは進んでいく。するとすぐに艦隊の姿が見えた。その一機に俺のガンダムと子供たちの船が格納された。俺はやっと安堵を覚えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例によって会議は紛糾している。アンサラーは即時の攻撃を主張するが、皇太子オルフェは動揺して拒否ばかりを繰り返している。その風景にラグンヒルはウンザリとしていた。

 

「エゥーゴに確保されてしまった以上はラクス嬢は殺すほかないぞ。いい加減に腹をくくり給え」

 

「ラクスを殺すなどできるわけがない!私は彼女を愛しているんだぞ!」

 

 そんなの誰だってそうだろう。ラグンヒルからすると帝国のトップがこんなのであること自体がおかしいとさえ思えた。

 

「まったく話にならないなぁ!どうせキラ・ヤマトのお古だろう!そんな女を後生大事にとっておくのかね?!君には男としてのプライドがない!!」

 

 ひどい言い分だと思うと同時に、どこかアンサラーに同調する自分もいた。思わずはっと笑ってしまう。

 

「大佐。とり得ず休憩しませんか?アイス食べたいです」

 

 ラグンヒルはそう言った。もう会議の行方などどうでもよかった。ラクス・タオのことなどラグンヒルにとってはどうでもいいことだ。このままユウが逃げ切るならそれでもいい。

 

「ふむ。君もやっと私のアイスの良さがわかったようだね。いいだろう。たらふく食わせてやる!!」

 

 そのままアンサラーとラグンヒルは会議室から出ていく。そして休憩室にて二人はアンサラー手作りアイスを楽しみながらおしゃべりする。

 

「あんなに追い込んでどうするんですか?下手すれば皇太子妃死んじゃいますよ」

 

「かまわないね。アコードは替えが効く。それより早くあの艦隊を突っついてガンダムを出したいのだ」

 

 あけっぴろげに不敬罪極まりないことを言うアンサラーにラグンヒルはやっぱり傲慢さを覚えた。

 

「まあユウさんが出てくるならそれでいいです」

 

「そうだろう。まあ皇太子殿がパニックするのを待とうじゃないか。アイスのおかわりはいくらでもあるのだしな。くくく」

 

 アイスを舐めながら二人はエゥーゴの艦隊を見る。二人は目的は違えども共犯だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 艦隊のドックに入ったが、船の扉は閉じるようにロミに言った。

 

「出てくる気はないのか?」

 

 イザーク・ジュールがすこし苛立ったような声を出す。彼はすでにデュエルから出て船の近くに立っていた。俺はガンダムのハッチを開いて、外に出る。そしてイザーク・ジュールの前に立つ。

 

「ガンダムを売ると言ったな?条件はなんだ?金か?資源か?」

 

「子供の保護を頼みたい」

 

「子供?どういうことだ」

 

「船の中にナチュラルの子供たちがいる。プラントでのコーディネーターの生殖技術開発のための実験材料にするために人身売買された子たちだ」

 

「なぁ?!」

 

 イザーク・ジュールはひどく驚いた顔をした。そして憤怒を隠さず怒鳴る。

 

「プラントはそこまで堕ちたのか?!」

 

「もともとそんなものだろうよ。あんたたち純血のコーディネーターにはわからんだろうけどな」

 

「お前はコーディネーターじゃないのか?ハーフコーディネーターか?」

 

「そうだよ。元々は大学教授してた。プランでザフトに転職した。まあそれはいい。あんたたちに慈悲の心があるなら、子供たちを保護してくれないか?」

 

「……わかった。いや。取引等関係なく保護しよう。これは人道の問題だ」

 

 イザーク・ジュールは真剣な眼差しをしている。信用に足る人物のようだ。俺はすぐに船に合図を送る。

 

「ロミ!子供たちを出してくれ!」

 

 するとロミが扉を開けて中から出てきた。子供たちも一緒だ。子供たちはすぐに駆け付けた女性兵士たちが抱きとめていった。

 

「よかったわね。でもガンダムを売るっていうのはいただけないわね」

 

「お前は?」

 

 イザーク・ジュールがロミを睨む。

 

「私はロミ・リ・フェリル。シーゲル・クラインの意思を継ぐもの。ガンダムの。そうね。見届け人とでも思ってちょうだい」

 

「見届け人?そもそもあのガンダムはなんだ?誰が作った?帝国がガンダムを作るわけもない。エゥーゴもあり得ない」

 

「シーゲル・クラインが殺される直前に作ったものよ。クライン派に、いいえ、アコードの娘にさえ秘密で作ったもの」

 

「……何が目的なんだ?」

 

「それは言えない。だけどプランの否定だけは目的の一つだと言っておくわ」

 

「……わけがわからんな。だが今はいい。お前らが俺たちエゥーゴの敵ではないのであればな。問題は。そう!もっと大きな問題がある!ラクス・タオぉおおおお!!!」

 

 イザーク・ジュールが船に向かって叫ぶ。するとラクスが船から出てきた。

 

「……お久しぶりですわね。イザーク」

 

「何が久しぶりだ!この裏切り者がぁあ!!」

 

 パイロットスーツを着るラクスの胸倉を掴んで叫ぶ。

 

「お前が女でなければ殴り殺しているところだ!!」

 

「落ち着いてください隊長!!」

 

 イザークの隣に控えていた副官らしき女性が制止する。

 

「止めるなシホ!!こいつが何をしてたのか忘れたのか?!何を今までしてきたのか!!」

 

「わかってます!ですが堪えてください!ラクス・タオは帝国へのけん制に使えます!」

 

「……くそぉ!!」

 

 ラクスから手を放してイザークは額に手を当てる。必死に怒りを堪えているようだ。ラクスは無表情で俯いている。いたたまれない空気が俺たちを包む。

 

「で、あなたたちエゥーゴはどうしたいの?ラクスを殺したいなら、私にやらせてほしいのだけど」

 

「今の空気で爆弾をぶち込むんじゃないよ」

 

 俺はあきれ果ててツッコミを入れる。だけどこれどうなんの?ラクスの存在は強力なカードだ。だけどもし帝国がメンツを重視して来たら、すぐに殺しにかかるような気もする。その前にエゥーゴが処刑映像をネットに流すとか?どちらにしても惨憺たる未来しかラクスにはない。そんなつもりで拾ったわけじゃない。

 

「まずガンダムだが、こちらはエゥーゴから確保の指令が出ている。パイロットもろともな。だが悪いようにはしない。それは保障しよう」

 

 イザークがそう言った。だけどメッチャ眉間にしわを寄せてる。

 

「ラクス・タオも確保の指令が下っている。エゥーゴの全体会議でその処遇を決める。俺としてはすぐにでも殺してやりたいがな」

 

 公人としての判断ができるあたりにイザークの器の深さが見える。伊達にこの世界で反プランを掲げて戦い抜いてはいないということだろう。

 

「お前たちはセットで地球のエゥーゴの拠点に降ろす。それで文句はないな?」

 

「わかった。ありがとう。イザークさん」

 

 俺がそう返事をするとイザーク・ジュールは飛び去ってドックから去った。俺たちには監視の兵隊がついた。残っていた副官のシホさんが言った。

 

「あなた方はセットでここで待機してもらいます。降下の準備が整うまでお待ちください」

 

「ああ。ありがとう。出来れば降下の前に子供たちに挨拶はできるか?」

 

「ええ。それはお約束します。では失礼します」

 

 シホもドックから去っていった。俺たちはドック内の休憩施設に入れられて待機することになった。

 

「あなた殺されるかもしれないのになんで平然としてるの?」

 

 ロミがラクスに声をかけた。心配でもしてるのかな?

 

「わたくしがしてしまったことを顧みれば、それも仕方のないことですわ」

 

「ふーん。結局あなたは最初から最後まで運命のレールの上なのね。自由の翼をキラ・ヤマトに与えたのは自虐ギャグってやつなの?」

 

 キラ・ヤマトの名を耳にしてラクスが顔を青くする。

 

「やめろ。人には触れて欲しくないことがあるだろう」

 

「だからやったんだけどね。シーゲルおじ様も不幸ね。こんな娘を持ったばかりにあんな目に」

 

「あなたはお父様のことを知っているのですか?」

 

「ええ。未来を憂いていた。私こそが彼の祈りを正当に継承した者よ。あなたのように運命に身を委ねたりなんかしない」

 

「そうですか……お父様は……本当はわたくしを……」

 

「やめろラクス。それ以上は想像するな」

 

 さすがに見かねて止めに入る。

 

「ですがお父様はあのガンダムをわたくしではなくロミさんに託したのでしょう。わたくしなんて」

 

「あんたの特殊性はよくわかる。多分シーゲル・クラインは苦悩したんだろうな。だけど愛しているからあんたを直接自分の手で殺せなかったんだろうさ。あんたはちゃんと愛されてたんだよ。ラクス」

 

 俺は少しでも気持ちが伝わるようにと笑みを浮かべる。ラクスは瞳を潤ませていた。だけどもしかしたらなにか気持ちが伝わったらいいなと思った。

 

 

 

 

 




ラクス(´・ω・`)

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