機動戦士ガンダムSEED COORDINATION 作:笑嘲嗤
かつて大西洋連邦の首都だったワシントン。大統領が住んでいたホワイトハウスの一室のテラスでパンツ一丁の鍛え上げられた黒人男性が空を見詰めていた。空には光が散り、一筋の光が地平線の先へと落ちていくのが見えた。
「カーター将軍。ディショーンさま。何を見てらしているのですか?」
男の傍にとても美しい白人の女が寄り添う。下着姿であり、二人がさきほどまで情事を行っていた痕跡を伺わせた。
「ああ、キャサリン。大したことじゃない。どうやらこの国に降りてきたようだぞ。自由を求める愚か者がな」
ディショーンはキャサリンを抱き寄せる。
「アンサラー大佐が仰っていたガンダムですか?」
「ああ。この運命に鎖された世界で抗う連中だ。興味深いね」
「ガンダムが降りてきたということはラクス・タオも逃したということですね」
「そうだろうな」
「では絶好のチャンスですね」
「ああ。ラクス・タオ。いいやクライン。祈りの歌姫。ここで果ててもらう」
「可哀そうに。歌だけは好きでしたけど」
二人は微笑みあう。新たなる戦いの狼煙が上がる。
ロミが操作して陸地には降りられた。俺たちは林の中に身を潜める。ガンダムに枝木を集めて覆い隠した。ニュートロンジャマーのお陰でレーダーには引っかかってはないはずだが、哨戒機まで巻けるとは思えない。だけど参っていた。
「突入ルートの逆算からすると北米大陸東部の何処かだとは思う」
テントを二つ作ってライトの前で俺たちは座って囲んだ。
「帝国軍が展開しておりますわ。早くどこか安全な場所に逃げないと」
「安全な場所?そんなの何処にあるのよ……お姫様はいいわね。どうせ捕まってもプラスマイナスゼロでしょうから」
「そんなつもりわたくしには……」
「じゃあなに?あなた帝国から逃げたいってこと?!なら私たちに関係なく逃げなさいよ!!」
ロミの口調が荒い。そんな声は聴きたくない。
「ロミ。やめてくれ」
「だけど!」
「やめてくれよぉ。子供たちが。うう。ああ」
俺はみっともなく泣き出してしまった。助けると誓った。出来たはずだった。だけど俺が置いてきたものせいで子供たちは死んだ。結局俺たちは運命に支配されている。何をやっても無駄なんだと理解させられるんだ。
「ユウさま……」
ラクスが俺に手を指し伸ばしてくるが、それは払いのけた。
「しばらく放っておいてくれ」
俺はテントの中に入る。悔しくて悔しくて、何よりも悲しかった。
しばらく夢と現実の風景を行ったり来たりしていた。いい夢をみて、ああこれは夢だと気がつくことの連続。だけど途中からか、柔らかさを感じた。心地がいい。
「……あれ?ラクスか?」
「……はい」
ラクスが俺の頭を太ももで枕してくれている。そして俺の両手を掴んでいた。優しくぎゅっと。
「ラクス。俺は。俺は間違ってたよ」
ラクスは静かに聞いてくれている。何も言葉は言わない。
「何もしなくて良かったんだ。なにも意味はなかった。世界の端っこで大人しくしていれば、誰も傷つきはしなかった」
返事はない。だけど手を優しく握ってくれた。
「君が憎いよ」
「はい」
「君がキラ・ヤマトを裏切らなかったらこんな世界にはならなかったんだろう?」
「そうですわね」
「憎いよ。憎いんだ。だけど。あの時助けたことを後悔は出来ないんだよぉ!!ううぅ。うわあ」
涙が止まらない。それをラクスは掌で拭ってくれた。だけど涙は止まらない。
「泣かないで」
ラクスは俺の目じりにキスをした。ラクスと俺は見つめ合う。その顔はきっと人類で最も美しい女の顔。アコード。それはこの世界を鎖した者たちの名前。俺は自然とラクスのあごに手を添えて唇を奪った。ラクスは目を瞑る。そのまま彼女を押し倒す。舌を絡めながら体を撫で合って。俺たちは一線を越えてしまった。
テントの中で俺とラクスは裸で横たわっていた。ラクスは俺の胸に顔を預けていた。
「もっと前にこうするべきでした」
「何の話?」
「キラとこうして抱き合うことを」
抱いているうちは夢中で気づかなかったけど、ラクスははじめてだった。キラ・ヤマトやオルフェ・ラム・タオとはやってなかったのかと思うとすごく複雑な気持ちになる。
「キラは苦悩していました。戦争で失ったものが多すぎて、それをわたくしは埋めようと必死で。だけど愚かでした。自分から求めるようなことはしない。わたくしも所詮は女ですね。卑怯なプライドです」
キラ・ヤマトの伝説はおおぴらには語られないが有名だ。コーディネーターでありながら連合のガンダムに乗り同胞たちと戦った。強いストレスだったと思う。そりゃたたなくもなるかもな。PTSDでいっぱいいっぱいだったのだろう。
「わたくしはキラに押し付けるだけで、なにも与えられなかったんです。体くらい捧げれば。いいえ。そうしたかった。気持ちいいんですね。体を交らわせるのって」
そのキラ・ヤマトももういない。オルフェ相手には拒絶し続けてたわけだ。なんかオルフェが憐れに思えてきた。そう思えるのは自分がラクスを抱いたからか。
「俺たちは案外似てるのかもな」
ラクスの頭を俺は撫でる。心地よさそうにラクスは微笑んだ。
「みんなとあんなにいっしょだったのに、もう一緒にはいられないんだから」
「ええ。そうですわね。ユウ。あなたは」
「なに?」
「一緒にいてくれますか?」
「ああ。この気持ちがなんなのかまだ整理がつかないけど。一緒にいたい」
俺たちは優しくキスをする。そんなときだ。
「振動系センサーに感ありよ!!」
ロミが俺たちが寝ているテントに入ってきた。すでに臨戦態勢でヘルメットまでしてる。
「……あなたたち。なにしてるの?」
心なしか冷たい声に聞こえた。いや。まあロミから見たらそりゃそうなるよな。
「え。いや。その」
「これはですわね!」
「何をしてるのって聞いているのだけど?」
やめて欲しいこういう詰め方。なに答えてもアウトな奴じゃん。
「そりゃ。ねえ?見たらわかるよね?」
ラクスは毛布で胸元を隠して頬を赤く染めて視線をそらしている。
「だから何をやってるの?なぜ服なんて脱いでるの?理由は何?」
「何って?うん?なあロミ」
「なにかしら?」
「俺たちが何をやっていたのかマジでわかんない感じ?」
「だから聞いているのでしょう」
ロミは首を傾げている。あれぇ。
「これはあれだよ。あれ。めしべとおしべをくっつけてたんだよ」
「人間にそんなものないわ!何をしてたの!?言いなさい!」
「これは!そう!コミュニケーションだよ!!」
嘘ではないだろう。嘘はついてない。
「コミュニケーションなら服を着たってできるでしょう?服を脱ぐ意図がわからないわ」
俺は両手で顔を覆う。そして思いついた。
「こういう説明は同性同士の方がいいだろう。ラクス。説明しておいて」
「わたくしに投げるんですの!!?」
ラクスが愕然としている。すまんな。だけど俺の口から説明なんてできないよ。
「で。ロミ。敵か?」
俺はいそいそとパイロットスーツを着ながら訪ねる。ラクスも着替えだす。
「おそらくは。だけどまだ遠いわ。今のうちに待ち伏せるか、移動を考えないと」
「わかった。全員ガンダムに乗れ!」
俺たちはガンダムに乗り込む。そしてガンダムを少し立たせて周囲を目視で確認する。
「木が揺れてるぞ。だけどMSの姿がない」
「ミラージュコロイドじゃないかしら」
「帝国の成立でユニウス条約はなくなったからな!ちっ!」
俺はビームサーベルを両手に持つ。清音性が高い機体のようだ。遠くにいるのか近くにいるのか。わからない。そして近くの枝が揺れた。俺はすぐにビームサーベルを構えてスラスターを吹き込んで相手に迫り、突きを放った。手ごたえはあった。ミラージュコロイドが切れて、機体が姿を見せる。
「帝国軍のダガーシリーズか……特殊戦専用ダガージン!!」
森の中に姿なき気配がある。それらは俺たちを捕らえている。俺の額に一筋汗が流れた。
個人的な考察なんですけどね、ラクスとキラってFREEDOMラストまで肉体関係なかったんじゃね?みたいな感じを覚えてたんですね。
なにせ最後に砂浜で真っ裸で幸せなキスをして終了でしょ。あとDESTENYでもラクスとキラのベット別れてた上に子供たちと一緒だったし。なんというか状況証拠だけ積み上がるとキラとラクスって体の関係なかったんじゃないかな?みたいな結論にいたりました。
准将の机にはいまだにフレイの写真あるし、まだフレイに囚われてる感じがすごくする。
歪なんですよねキラとラクスの関係って、恋人というには甘くもなく、そのくせキラがラクス相手に癒しを覚えているとも思えない。ラクスはキラのこと好きだけど、キラは贖罪のために戦い続けるからなし崩し的にラクスのそばにいることを選んだみたいに見えるの。
というわけで本作ではそんな謎設定で行こうと思います。異論は認める。まあよろしくねぇ