機動戦士ガンダムSEED COORDINATION 作:笑嘲嗤
ギャンのコクピットから男が降りてくる。そしてガンダムの前に立つ。男は笑みを浮かべている。
「ようガンダム!顔を見せちゃくれないか!!」
周囲をゲルググが見張っており、安全だろうと判断した。俺はコックピットを開けて外に出る。ロミとラクスも続いた。
「若いな。俺はウェントワース・アズラエル。自由アメリカ大陸軍オハイオ州知事だ」
握手を自然に差し出してきた。俺もそれに応じる。
「助けてくれてありがとう。俺はユウ・ニニギ。こっちはロミ・リ・フェレル。それと」
ラクスのことを実名で紹介するはまずい。偽名がぱっと思いつかなかった。だけどラクスは一歩前に出ていった。
「ミーア・キャンベルですわ」
「そうかよろしくな!俺たち自由アメリカ大陸軍は自由の象徴ガンダムを歓迎するぞ!!」
とくに気にされなかった。まあここにラクスがいるなんて思いもしないだろう。
「あんたらはエゥーゴではないのか?」
「いや。エゥーゴには加盟してない。俺たちはアメリカの独立だけを願っている。あいつらはコスモポリタンだ。ナショナリズムとは相性がわるいね」
「規律ある民兵ってやつか」
「お!よく知ってるな!そうそう憲法修正第二条だよ!俺たちは武装権でもって帝国という自由を奪う連中と対抗しているだけだからな!」
エゥーゴではないようだが、とりあえず安全は確保されたように思える。
「あんたら行く当てないんだろう?それに機体もヤバそうだ。助けがいるだろう?」
「正直に言えばな」
「オーケーオーケー。まあ俺たちについてこいよ。拠点に案内しちゃる」
「助かるよ」
すぐにトレーラーがやってきてガンダムを載せてくれた。俺たちはそのまましばらく進んでトンネルの中に入った。
「すごい!これは地下都市なのか?!」
大きくドーム状に掘削された中に都市の姿があった。上からちゃんと採光もしている。そしてトレーラーは町はずれのMS整備場らしきところに辿り着いた。
「あんまり機体を見て欲しくないのだけど」
ロミは文句を言ったが、俺は抑えた。
「整備がなきゃどうにもならんよ」
そしてウェントワースに連れられて、知事公邸に連れていかれた。
「さて。色々話し合おうじゃないか。寛いでくれ」
俺たちはソファーに座ることを促された。柔らかいソファーに埋もれると今までの苦労が少しは癒される気持ちだ。
「あんたらは宇宙から降りてきたんだろう。なにがあった?」
「何がか。色々あった」
俺はラクスの身元がバレない範囲で今まであったことを語った。ウェントワースはそれを静かに聞いてくれた。
「そうか。大変だったんだな」
ウェントワースは俺に同情してくれているようだ。
「だけど俺たちを匿ってると帝国軍が攻めてくるぞ。機体が治ったらすぐに離れたい」
「ああ。それなら心配ないぞ。俺たちは核を持ってるからな」
「はぁ?!核?!」
「ああ。俺たちは各地下都市に核ミサイルを配備している。もしも本拠地を叩かれたら、即時報復することを宣言している。だから帝国軍は俺たちの縄張りには手を出してこない」
「まじかよ。でもニュートロンスタンピーダーとか使われたら」
「それを空にいる帝国のアコードたちが許すと思うか?あれはコーディーネーターの知恵の結晶だぞ。ナチュラル主体の帝国軍にくれてやるのはプライドが許さない。それにそれを手にした帝国軍が帝国に反旗を翻す可能性の方がずっと高い。スタンピーダーをプラントに向かって乱打すれば、彼らが保有している核が勝手に誘爆するんだ。プラントは壊滅する。だから渡せない。俺たち地上のレジスタンスは帝国の危うい均衡の中でなんとか自立できているんだよ」
「そんな政治力学が働いているとはな。歴史に学ばないな世界は」
「そういうことだ。アコードは人類を導く優良種だと自認しているが、人類が築き上げた歴史の愚かさの積み上げに縛られてんだよ。これが皮肉と言わずなんというか!ははは!」
これは壮大な皮肉だ。帝国軍にレジスタンスを制圧する力を与えれば、それは帝国自身の首を絞めることになる。この世界は思った以上に危うい。
「だがそれよりもあんたらはこれからどうしたいんだ?」
「どうしたいかか……」
そう問われるとむずかしい。
「わたしたちはオーブに向かいたいのだけど」
「そりゃ難しいぞ。こっちは大西洋側だ。オーブに行きたきゃ太平洋に出るしかない。だけど移動は難しい。自治都市に出ると全部プランのサーバーが追跡を始める。忍び足で移動なんてとても無理だ」
「エゥーゴに向かえにきてもらうのはどうでしょうか?」
ミーアことラクスがいうが、それもウェントワースが首を振る。
「エゥーゴも難しいと思うぞ。俺たち自治都市はエゥーゴ相手には友好的中立でしかない。それにここから一番近いエゥーゴはカリフォルニアのブルーコスモス派だ。あんたらはコーディーネーターだろ?」
「私は遺伝学的にはナチュラルよ」
「ふーん。だけどそっちの二人は間違いなくブルーコスモスなんかに捕まったらどうなるか分かったもんじゃない」
「じゃあここから動きようがないってこと」
「少なくとも”今は”動かなくてもいいと考えればいい。そのうち状況は嫌でも動くんじゃないか?焦るな焦るな」
ウェントワースはにかっと笑う。それは人を安心させるものだった。
「部屋を貸そう。ガンダムも駐車代は取らないでやる。まあ仕事は勝手に見つけてくれ。しばらくここに滞在してから決めればいいさ」
「わかった。お言葉に甘えます」
俺はウェントワースの申し出を受けることにした。当座の資金を貰った。自治都市内で流通する配給表だった。そしてマンションの部屋を一部屋与えられた。中に入ると家具も一通りそろっている。
「ふぅ。やっと落ち着けたあ」
俺はリビングのカーペットに横たわる。ラクスがすぐに寄ってきて、膝枕してくれた。極楽である。頭撫でられると気持ちがいい。
「で、落ち着いたのはいいけども」
「けども」
「あの時二人がやってたコミュニケーションて何なの?」
またその話かよ。俺はラクスに視線を向ける。ラクスは嫌そうな顔をしていた。
「こういうのは大人になってからでもよろしいんじゃなくて?」
「説明するのも大人の責任じゃね?」
「また逃げ道を?!」
「早く説明して頂戴!」
ロミは興奮している。ラクスはとうとう観念したのか、ロミのそばに寄っていき、耳元でごにょごにょ説明しだす。
「うそでしょ?!」
「いいえ。ほんとうなのです」
「そこに入ったの?!」
ロミがラクスの股のところを見ている。
「入りました」
「動くの?!」
「動いてましたわ」
「それが気持ちいいと」
「ええ。気持ちよかったですわ」
「な、なるほど……」
シュール極まりない。でもラクスが俺とのあれを気持ちいいとか言ってくれるのは男としての自尊心が満たされて悪くない。どうせならオルフェとやってればよかったのに。夢だよね。俺のほうがいい!とか言ってもらうの。
「でも抵抗があるわ。……率直に言って怖いわね」
「それが普通のことです」
「あなたはユウ相手なら怖くなかったと」
「ええ。まあ。ですがそこら辺の気持ちはプライベートなことなので」
「そうね。聞くのはマナー違反よね」
ラクスがどうして俺に抱かれるのを拒絶しなかったのか。それはラクスにしかわからないし、知るべきことでもないように思える。俺とラクスの関係は恋愛とは違うとは思う。かと言ってお互いにセフレ作ります。みたいな性格でもない。まあ環境が良くなかったのかもしれない。男女は不思議なものである。とりあえずクッションを傍に寄せて俺は枕にして、目を瞑る。もうしばらくは泥のように眠りたい。そう思った。
ラクスがミーアって名乗ってるのなんか壮大な皮肉感じる。