機動戦士ガンダムSEED COORDINATION 作:笑嘲嗤
ウェントワースさんに正直にぶちまけた。
「なるほどね。なら次に君たちが言うことはただ一つ。うちの工場を使わせてくれだな」
「そういうことなんですが。やっぱり無理ですか」
「すまないな。うちの工場は軍需とインフラ維持の部品の製造でいっぱいなんだよ」
そりゃそうだ。それにメリットもないだろう。貸してくれるはずがない。
「だが客人が困ってるならもちろん助言くらいはしたい。ニューヨークに行くんだ」
「ニューヨーク?」
「ああ。あそこはちょっと特別な街なんだ。在米帝国軍の司令ディショーン・コーナー中将がプランに直接掛け合ってできた一種の実験区なんだ」
「実験区?」
「御覧の通り俺たちを含めてアメリカは広大な土地のあちらこちらに反攻勢力が居座ってる。何億人もの人間がプランに属してないんだよ」
「地球の現状はなかなかすごいですね」
「だが帝国としては建前上全員をなんとかプランに属させたい。だからコーナー将軍は実験区を用意した。俺たちプランに属さない非正規民も捕まらない都市を用意した。そこではプランの監視もなく経済活動が自由に行えるように計らわれている」
「宇宙じゃ考えられないですね」
「そう。だがね。忘れがちだが、人類が活動できる宇宙はまだ限られている。圧倒的に地球の方が人口も広さも大きいんだよ。いっぺんにデスティニープランに移行なんてとてもできやしない。だから一部の自由区を作って徐々に取り込むっていう柔軟策を取っているのさ」
「コーナー将軍は有能な政治家でいらっしゃるようだ」
「おっしゃる通りだよ。苛烈でありながら文治的な柔軟さも持ち合わせている。投降した者にも寛大な処分を下すことで有名だからな。まあ話は戻る。ニューヨークは一種の無法地帯でもある。プランの制御にないから犯罪者が闇経済を動かしている。売春、薬物、違法な武器、人身の売買なんかもやってるそうだ。だからニューヨークなら欲しいものは金で買える」
「なるほど」
とすると問題は金になるわけだ。手持ちなんてほぼほぼないぞ。
「一応当座の資金だけは貸しにしておこう。だけどガンダムの部品を手に入れるなら何らかの手段で大金を稼がなきゃならない。それは自分で考えろ」
だが希望があるならチャレンジする価値はある。どうせできることはなかったのだ。可能性があるならかけてみよう。
「信頼できるエージェントを紹介する。そいつに部品の調達を任せろ。闇工場やジャンク屋と繋がってる奴だ。口が堅いことで有名だ」
「何から何まで恩に着ます」
「いいさ。ここは自由の国アメリカだ。あんたらの自由を尊重するだけのことだよ」
ウェントワースさんはにこりと笑った。こうして俺たちはニューヨークへと旅立つことになった。
ニューヨークへは車で向かった。特に検問に引っかかることなく辿り着けた。
「わぁ!すごいですわね!!」
ラクスが車から見える摩天楼に感動しているようだった。ここはかつて世界で最も繁栄した街なのだ。
「宇宙生まれだとこういうビル群は珍しく見えるわね。空とビルの間が近い」
まあ確かにそうだろう。俺はコロニー育ちだし、空の蒼さにいまだに慣れないところがある。プラントと地球じゃそらの蒼さが違う。こちらの方がずっと明るいのだ。車をとあるモーテルの駐車場に止める。そしてモーテルで部屋を借りた。身分証は確認されなかった。ここは本当にプランの監視下にないようだ。
「荷物置いたらすぐに部品の見積もりに行く」
俺は銃を腹にアペンドしてTシャツを被せてコンシールドキャリーした。ロミも同じように銃をコンシールドする。ラクスに銃を渡す。
「お前もやっとけ」
「わたくしは」
「撃てと言ってるわけじゃない。持っとかないと困るところに行かなきゃいけない。だから持っておけ」
ラクスはどこか銃を複雑そうな目で見ていたが、いうことを聞いて銃をコンシールドキャリーしてくれた。一応俺たちはサングラスしている。だけど思った。
「逆に俺たち目立ってない?」
「そうね。如何にも人目を気にしてます感あるわね」
「やめましょうか」
俺たちはサングラスはやめておいた。一応普段と違う髪型にすることで誤魔化してみる。ロミはポニーテールに。ラクスはツインテール。俺はオールバックだ。とりあえず街を歩くがとくに気にされる様子はない。案外こんなもんなんだろうと思ったが、拍子も抜ける。そしてやってきたのはウェントワースさん紹介のエージェントがいる店。それは電気屋だった。何かに入ると作業着を着たおっさんがエアコンを直していた。
「エアコンの修理ならそこにある紙に書いてデスクに置いてきな」
「エアコンじゃなくてガンダムを治して欲しいって言ったらどうする?」
おっさんはエアコンから俺たちの方へと目を向ける。
「おいおい。まさか噂のガンダム野郎がいやがるぞ。来い、奥で話を聞く」
おっさんに案内されて店の奥に通される。あっちこっちに家電が置いてある。そしておっさんの奥さんらしきおばさんが俺たちにルートビアの缶を配ってくれた。よりにもよってこれ?まあ素直に飲むことにするが。
「でガンダム野郎はなんでわざわざここに来たんだ?」
「部品が欲しい」
ロミはルートビアを顔をしかめながら飲んでいる。逆にラクスは美味しそうに飲んでいた。本当に人を選ぶドリンクだな。俺はおっさんに部品のデータをスティックで渡す。おっさんは近くのパソコンでそのデータを確認する。
「関節部のパーツか。しかしえらく冗長性のない設計になってるな…噂のストライクフリーダムだってここまでワンオフにはなってないんだがな」
「ストライクフリーダムのことを存じておりますの?!」
ラクスがどことなく悲しそうな、そんな顔をしている。
「俺はファクトリーから部品の発注を受けていた業者の一人だったからな」
「そう。なんですの?」
「お嬢ちゃん。ラクス・クラインに似ているが……いや。本人がいるわけないか。裏切って今や帝国のお姫様だ」
おっさんは勝手に納得してくれたようだ。だけど話を変えないといけないと思った。
「でどうだろうか?この部品は手に入るか?」
「手に入れることは無理だ。一から作り直さなきゃダメだな」
「まじかい」
「最新鋭のMSのパーツだってその気になれば手に入れられるがな、それだってあんたのガンダムにはハマらねぇ」
「作り直しはできるのか?」
「できる。俺の伝手で宇宙の無重力精錬工場が使える。この仕事ならそうだな…俺が自ら宇宙に上がって研磨しないとダメだな。それに素材も純度の高いルナチタニウムと外宇宙隕石レアアースが必要だ」
「それってお高いんじゃ?」
「諸々込みで100億帝国園。ぴったりでいい」
「払えるかそんな額?!」
「別に他所の業者に持ってってもらっても構わないが、同じくらいは取られるぞ」
とんでもない高額に手が出ない。ガンダム部品調達は早くも座礁しかかったのだった。
ガンダムのパーツが安く手に入るわけないんですよね。
ストフリとかの建造費って原資はいったい?プラントの税金流用とかしてるならラクスってたいそうな悪党だと思うの。