機動戦士ガンダムSEED COORDINATION   作:笑嘲嗤

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第23話 人間らしさ

 ホワイトハウスの一室に特別調査室が設けられた。

 

「私がここの室長を務めるルゥ・アンサラーだ。副官にはこちらのラグンヒル・イングスタット中尉がつく」

 

 部屋には帝国軍や帝国中央情報局の者たちが集められていた。アンサラーもラグンヒルも帝国軍の詰襟を身にまとっている。

 

「我々の目的はガンダムの鹵獲にある。同時にあのガンダムの解析を行うことが主要任務だ。現在までに分かっていることを共有する」

 

 画面にスライドが出る。部屋にいたメンバーからは少しざわめきの声が出た。

 

「このガンダムは旧クライン派が作ったものだ。機体設計図の一部と仕様書等はすでに確保済みだ。だが肝心の中身の機能がよくわかっていない」

 

 次にスライドにブラックナイツと交戦したときの記録映像が出る。分身して宇宙を舞うガンダムの姿にメンバーは息を飲んだ。

 

「DUPE粒子による分身もどきではない。これは質量のある分身だ」

 

 その超常現象の暴露にざわつきは頂点に達する。

 

「それと同時にこのガンダムが稼働しているときはデスティニープランと何らかの通信を行っていることが判明している。ログも持ってきた。我々はこのガンダムの謎を解く。果たしてシーゲル・クラインの狙いはなんなのか?それを解き明かすのが仕事だ」

 

 メンバーたちは皆神妙な顔をしている。

 

「では仕事にかかろう」

 

 そしてプレゼンは解散となり、各々は持ち場のデスクにつく。

 

「ラグンヒル。君の部下を紹介する」

 

 アンサラーはラグンヒルを呼び止めた。アンサラーの後ろには青みがかった銀髪の四人の同じ顔をした男たちと、それと似たような顔の少女がいた。

 

「彼らはソキウスシリーズ。旧地球連合が作った戦闘用コーディネーターの生き残りだ」

 

「戦闘用コーディネーター?!なんですかそれ?!」

 

「コーディネーターの戦力が優位なのはよくわかっているだろう。だから彼らは作られた。また道徳を持ち出すかね?」

 

「……間違っていると思うのはおかしいんですか?」

 

「おかしくはないが滑稽だろ?まあそれはどうでもいい。彼らはデスティニープランの傘下に入り、当然のように軍務が天職として与えられた。君もザフトに入隊させられたろう?それと何が変わるまいよ」

 

 アンサラーの言っていることはおかしいと叫びたい。だがこの間のようにコーディネーターの矛盾を突きつけられてしまうのが目に見えている。

 

「わかりました。彼らの隊長を務めます」

 

「それで結構。君たちはガンダム戦を想定して訓練を続けろ。どうせ嫌でもそのうち戦闘になるはずだからな」

 

「了解しました!」

 

「ソキウス君たちはナチュラルの私が認めたラグンヒルの命令に従うこと。いいね?」

 

 ソキウスたちは頷く。そしてラグンヒルたちは部屋を出て、訓練用シミュレータールームに向かう。

 

「なんでアンサラー大佐はナチュラルであることを強調したの?」

 

「それはわたしたちがナチュラルを守るために作られた存在だからです!」

 

 可愛らしい声で女性のソキウスが答えた。

 

「ナチュラルのため?」

 

「はい!わたしたちは服従遺伝子とナチュラルへの保護を強化学習しています!ナチュラルには危害を加えることはできません!」

 

「なっ?!」

 

 戦闘用として調整されたこともおかしいのに、まさかそこまでするなんて。ラグンヒルは衝撃を受けた。

 

「でもガンダムのパイロットはハーフコーディネーターです!安心してください!必ず殺してみせます!」

 

 鏡だと思った。昔プラント内でそう言う空気が広がったことがある。ナチュラルなら殺してもいい。実際に大戦下では戦争犯罪としてナチュラルの捕虜を虐殺する例が後をたたなかったそうだ。プラント内でもコーディネーターの子を持つナチュラルの親がコーディネーター原理主義者たちに襲撃される本末転倒な事件も起きた。コーディネーターを殺すコーディネーターと、ナチュラルを殺すコーディネーター。どっちが上等なのか?ラグンヒルにはわからなかった。

 

「あなた名前は?名前はあるんでしょう?」

 

「わたしはクイン・ソキウスです!階級は少尉であります!」

 

「よろしくねクイン」

 

「はい。よろしくお願いします大尉!」

 

 ニコニコした笑みを浮かべるクインにラグンヒルはどこか後ろめたさを覚えてしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クランバトルのチームを紹介された。パイロットが不足しているとのことで温かく迎えられた。

 

「で、機体がこれね?」

 

「はい。ドラグーン搭載型のストライクダガーと格闘戦特化のグフです」

 

「ふむ。さてどうしたもんかな。ロミはやっぱりダガーの方がいい?」

 

「そうね。ドラグーンがあるならわたしのほうがいいでしょうね」

 

「じゃあ俺がグフね。じゃあ慣熟訓練にはい」

 

「わたくしがグフに乗りますわ」

 

 ラクスが突然そんなことを言い出した。俺もロミも顔を見合わせてしまう。

 

「何言ってるの貴女は?MSなのよ?戦えないでしょ」

 

「操縦訓練は受けています!お二人がダガーに複座で乗って、わたくしがグフに乗れば二機の戦力をフルに使えますわ!」

 

「これってMAV戦だよね。複座型はありなのか?」

 

 俺はおっさんに確認を取った。

 

「MS二機って決まってるだけだ。パイロットの数は決まってない」

 

「まじかい」

 

 そうするとラクスの言ってることは理にかなっている。

 

「だめよ!あなたに戦えるわけがない!」

 

「いいえ!できますわ!!」

 

 女二人がやいのやいのと言い合いを始めた。そんなときにおばさんが近づいてきて言った。

 

「女の子同士の喧嘩なんて死ぬまで解決しないわよ。男がビシッと言ってやらないとね」

 

「まだ決めかねてるんですけど」

 

「いいじゃないミーアちゃんはあんたの役に立ちたいんだよ。その乙女心を踏みにじるのかい?」

 

「俺のため?」

 

「そうさね。若い女なんてもんはねぇ!恋する男のために無茶するのが当たり前なんだよ!」

 

「うーん。合理性がわからない!」

 

 だけど悩んでいても仕方がない。ラクスは引かないだろう。ならば。

 

「いいよ。ミーアがグフ。俺とロミがダガーに乗る」

 

「そんな!?」

 

「ありがとうございます!」

 

 ロミはむすっとした顔をしているし、ラクスはとても喜んでいる。フォローは入れておこう。

 

「ロミにしか俺の背中は任せられない。頼むよ」

 

「そう?なら仕方がないわね!」

 

 あっさりと機嫌を直した。なんだか女の子の扱い方を理解してきちゃった気がするぞー。まあ配置は決まった。あとはバトルをこなすだけだ。これでも型落ち機で上位機体とバトルして生き延びてきたんだ。やってやれないことはないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 訓練が終わって、ホワイトハウスの食堂に向かう途中のことだった。

 

「あれ?ソキウスシリーズじゃん?!しかも女型!」

 

 一人のスーツを着た男が近づいてきた。軽薄そうな印象だ。

 

「なあなあお前ってナチュラルのためならなんでもすんだろ?」

 

 男はクインに話しかけた。

 

「はい!ナチュラルのためになることならばなんでも!」

 

「だったらさ。俺疲れちゃってるから”慰安”してよ」

 

 男はクインの肩を抱きながら言った。ラグンヒルはそれで察した。男が何をしようとしているのかを。

 

「胸もデカいし、顔は綺麗だし!コーディネーターとは一度でいいからやりたかったんだよね!あっちに空き部屋あるから行こうぜ」

 

「はい?わかりました」

 

 クインは何のことかわかってないみたいだけど、ラグンヒルは怒りに顔を歪ませる。そして男に近づいて、思い切り顔をぶん殴った。男は吹っ飛び壁に激突する。

 

「なにすんだてめぇ!!?」

 

「お前こそ何を考えてる?!この子はものじゃない!!」

 

「ソキウスだろうが!そういうために生まれてきたんだろうが!」

 

「そんな間違ってる!」

 

「お前コーディネーターだろ?!なのに運命とか目的とか忘れてんのかよ!!」

 

「少なくともこの子の運命はお前のモノじゃない!!」

 

 ラグンヒルは男を凹す。すぐに近くの衛兵たちに制圧された。

 

「まったく変な騒ぎに巻き込まれるのはめんどくさいんだがね?」

 

 アンサラーは留置室に入れられたラグンヒルを迎えに来た。

 

「向こうは訴訟とか言ってるぞ。めんどくさいことこの上ない」

 

「あいつが間違ってるんです!」

 

「だがソキウスが戦闘用に作られたことは事実だし、ナチュラルのために生きているのも事実だが?慰安がそこに含まれるかどうかはまあ本人たちの同意問題ではないかな?」

 

「あの子はそういうことを理解できてない!自分が置かれた状況がどれほど残酷なのか!」

 

「だがこの世界がそうなのだ。忘れたのかデスティニープランが人々の運命を決める。彼女の運命も君の運命も決まっているんだよ。そう決めたのは世界だろうに」

 

「おかしいです。おかしいですよこんなの」

 

「まあいい。言語化がうまくできないんだろう。解決策としてクイン・ソキウスには姓交渉へ応じることを私から禁止しておく。ナチュラルの上位者の命ならば大人しく聴くだろう。満足かね?」

 

「……ありがとうございます」

 

「納得はいっていないようだ。なら君は少しでも文学や哲学や法を学ぶべきだよ」

 

「そんなものが名の役に立つんですか?」

 

「哲学や文学や法は人間が積み上げてきた知恵だよ。争いしかない世界で少しでも人間らしさを得ようと必死になった者たちの命がけの言葉だ。君のモヤモヤした心の澱も多少は晴れるだろう。コーディネーターは人間であることを忘れて神を気取った。今やその神の運命の中で君は悪夢を見ている。ならば人間の世界をのぞいてみたらいいさ」

 

 アンサラーはラグンヒルの手錠を外す。そして二人は外に出た。そして連れていかれたのは図書室だった。

 

「いろんな本がある。学びたまえ。事件の方が揉み消しておく。人間とはなんなのか。それを君は立ち返ってよく考えるんだね」

 

 そう言ってアンサラーは去っていった。一人残されたラグンヒルは哲学のコーナーにいき、本を手に取る。そして本棚に背中を預けて読みだす。ラグンヒルの世界はこれから広がる。

 




ソキウスシリーズとか言うコーディネーターの優性思想を根本から破壊する道徳的危機。


そしてラクス。グフに搭乗!!
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