機動戦士ガンダムSEED COORDINATION   作:笑嘲嗤

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第25話 歪んだ願い

 ラグンヒルは制服に着替えて朝食をとりに食堂に向かった。すると食堂に私服の金髪の女がいた。ノースリープのシャツでへそ出しのミニスカート。スタイルがよく男性の注目を浴びていた。

 

「ウィットモア少佐ですか?」

 

「あら。おはよう」

 

「おはようございます。前に座ってもよろしいですか?」

 

「ん?ええ、どうぞ」

 

 ラグンヒルは朝食のプレートをテーブルにおいてキャサリンの前に座る。

 

「私服なんですね。意外です」

 

「今日からバカンスに入ります。ガンダムが地球に降りてからカーター将軍とずっとつめっぱなしでしたからね。オハイオにガンダムが引きこもりましたから、私たちはニューヨークに遊びに行くことにしたんです」

 

「お付き合いされてるんですか?あなたはコーディネーターなのに、ナチュラルと」

 

「もうかなり長いです。第一次大戦の中頃から付き合っています」

 

「そのころってナチュラルとコーディネーターが出会うことさえほぼなかったと思うんですけど」

 

「私はザフトにはいませんでしたよ。当時は大西洋連邦軍の士官でした。数少ないMSパイロットです。カーター将軍は下士官の歩兵でした。特殊部隊の所属でしたがね」

 

「なぜコーディネーターなのに地球軍に?」

 

「私はコーディネーターである前にアメリカ人です。プラントは祖国でも何でもない。私は祖国に尽くしたかった」

 

「ここでは反コーディネーター感情が盛んだったのに?」

 

「それはアメリカ人を辞める理由にはなりません。私は別に望んでコーディネーターになりたかったわけではないんですからね」

 

 キャサリンの過去が気になった。トーストを口にしながらもラグンヒルは彼女の話の続きが聞きたかった。

 

「どうしてそんなにアメリカにこだわるんですか?人種が違うのに」

 

「人種が違う。ええ。そうですね。むしろだからこそです。私はクー・クラックス・クランが作ったコーディネーターです」

 

「クー・クラックス・クラン?」

 

「知りませんか?この国にいた白人至上主義団体です。唾棄すべき存在です。彼らは白人であることに異常ともいえるこだわりを持っています。白人こそが他人種に優越する人種であると疑わない馬鹿どもです」

 

 そんな団体があるとは知らなかった。ラグンヒルにはぴんと来ない。プラントはコーディネーターだけだ。コーディネーター間で肌の色や目の色、髪の色は違えども、それはただの個性に過ぎなかった。

 

「私は理想の白人女性という虚像を実現するために生まれました。金髪も青い瞳もその反映です。くだらない。本当にくだらない理由で私は生まれました」

 

 コーディネーターは親の願いで生まれる。それに反する事例なんて信じられない。そう思った。ソキウスたちやこの人は。コーディネーターの闇なんだ。

 

「幼少期は街から離れたコミューンで育ちました。白人だけの街です。ですがおかしいと子供心には思っていました。コーディネイトされて知能が高いから親である周りがおかしいことに気づいたのは皮肉ですよね」

 

「願いが歪んでいたんですね」

 

「そうですね。彼らの願いは歪んでいた。ですがこの街にある日やってきたんですよ。FBIがね。そして私を保護してくれました。司法は彼らから親権を奪って私を施設に入れてくれました。アメリカ政府は子供の人権を守るために行動してくれた。建国の理想がそこにはあったんです」

 

 プラントしか国を知らないラグンヒルにはぴんと来なかった。だけどもし自分が同じ立場であれば…そう想像してしまう。

 

「私はプラントへは行かずアメリカに残り続けました。この国が好きだったからです。そして大戦が起きて、私は軍に志願しました。私にはプラントは違法な武装勢力にしか見えなかった。プラントのコロニーはもともとはこの国を始めとする理事国の税金で作られたものです。ザフトは暴力という違法な手段でそれを占有した。そして資源供給をカードにして地球を脅してきたんです。このような不正義など見過ごせますか?私には出来なかった」

 

 プラントの独立は正しいと信じていた。だが地球には地球の言い分があった。それをラグンヒルは感じ始めていた。

 

「少佐。私たちは何処で間違ったんでしょうか?」

 

「さあ。ジョージ・グレンかもしれませんし、その後の分断のせいかも知れません。私たちは目の前のことでいっぱいなんですよ。まあ好きに悩めばいいでしょう。世界は案外私たちの回答を待っているのかもしれませんからね」

 

「キャサリン。ここにいたんだね」

 

「ディショーンさま」

 

 カーター将軍が私服でラグンヒルの傍にやってきた。ラグンヒルは立ち上がって敬礼する。だがカーター将軍は止めた。

 

「今はプライベートだ。かまわないよ。行こうキャサリン。デスティニーランドに早く行きたくてたまらないんだ!」

 

「本当に好きなんですね。うふふ。じゃあ行きましょうか」

 

 二人は手を組んで楽し気に去っていった。その姿にかつての自分とユウとの姿を見てしまうことを辞められない。ラグンヒルは朝食を食べてすぐに席を立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラクスのMS操作は普通に上手かった。ザフトの一般将兵よりも優れているだろう。

 

「意外ね。いや。そうでもないのかしら?」

 

「まあこれなら十分戦力にカウントできる。あとはMAVになれることかな。俺らずっと一緒には戦ってきたけど、MSは一機だったわけじゃないか。慣れるのに時間が少しかかりそうだ」

 

 MAV戦術をするためには機体の能力の把握とパイロットの息の合った動きが必須になる。

 

「だけど言えることがある。作戦なんて往々にして当てにならんってことだ」

 

 結局戦場ではモビルスーツが飛び交って陣形なんて意味がなくなる。MAV戦術の極意は信頼関係の構築にあるんだろう。互いに何を必要としているのか、それを正確に伝達し合って補う必要がある。そこらへんはやっぱりナチュラルの方が優れている。彼らは自分たちがコーディネーターよりも劣っていることをよく自覚しているからこそ、決闘ではなく、集団での狩りにシフトした。俺とラクスの間に信頼関係はあるだろうか?それが試される。それが少し怖かった。

 

 

 

 

 

 

 

 




原作では親のエゴがコーディネーター誕生の推進力だということをいやってほどびょうしゃしていましたけど、キャサリンのようなタイプもいると思うんですよね。

闇が深いわC.E.ワールド。
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