機動戦士ガンダムSEED COORDINATION 作:笑嘲嗤
今日もチキンが飛ぶように売れてる。今日はメイド感謝デーと称してロミとラクスにはメイド服を着せている。
「しかし今日は街が騒がしいな」
「そうですわね」
なんか帝国軍の兵士たちがあっちゃこっちゃに行きかってる。俺たちは公園のフリースペースに出店していたが、なんかどんどん騒がしくなっていく。
「公平な幸福の分配を!!」
「運命の恩寵を万人に配れ!!」
そんな叫び声が響いている。そしてこの公園にプラカードを掲げた人々がやってきた。周りにはライフルで武装した兵士たちが交通整理をやっている。
「デモか?」
「そのようですわね」
「ブルーコスモスかしら?」
俺たちは首を傾げるがそう言う感じでもない。プラカードには「The Claim for Grace恩寵請求権」「The Right to Be Managed管理される権利」などというなにやら聞きなれない言葉が載っている。公園の広場に来た人たちは壇上を作ってそこでアジ演説を始める。
「我々ナチュラルはデスティニープランを受け入れて戦争や貧困から解放された!!だがいまだに公平な社会の実現には至らず、コーディネーターたちは特権階級としてまるで貴族のように振舞っている!デスティニープランは本来万人に平等な権利を与え社会始原の公平な分配を目指し幸福を実現するためにあったはずである!!」
「「「そうだそうだ!!おおおおお!!」」」
老若男女問わず演説に人々は盛り上がっている。
「これはデスティニープランが一部の者たちによって独裁的に運用されている結果である!!本来人々は平等であり!幸福を追求する権利があるのだ!!遺伝子による適正職の配置と転換によって我々は平等に達したはずだった!だがいまだに格差が残り続けている!!なぜだ!!」
「坊やが牛耳っているからですわ」
ラクスがどこか自嘲的に言った。あー旦那さんのことね。御気の毒である。
「遺伝子による適正職の分配が!アコードたちの選民思想によって歪み!富の分配が遺伝子によって決定されている!!デスティニープランは歪められた!アコードたちによって!あえて言おう!カスである!!」
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!ジーク・デスティニー!ジーク・デスティニー!!ジーク・デスティニー!!」」」」
なにこれ?チキン屋にデモの参加者たちがやってきた。チキンを買ってなにか政治談議のおかずにしている。そこへ帝国軍の兵士たちもやってきた。
「チキンくれ!六人分!」
「あ、はい。あのデモの監視にきてるんじゃないんですか?」
チキンのパックを渡しながら俺は兵士たちに尋ねた。彼らは弾圧しに来たんじゃないだろうか?明らかに帝国への反対でもだろこれ。
「うん?ああ。まあそうだな。でも別にこいつら暴れるわけじゃないし。それに俺たちだって仕事なきゃ参加してるぜ!上の連中も来たがってるし」
まじかい。もしかして帝国軍ってアコードたちの支配を受け入れてないのか?
「だよなー!デスティニープランはいいけど、貴族ぶってるコーディネーターには腹立つわ!」
「それな!上にふんぞり返られてるのははらたっつーの!!」
兵士たちもデモに共感しているようだ。
「なあデスティニープランには反対しないのか?」
俺は素朴にそう尋ねた。ナチュラルはこの遺伝子で運命が決まる社会を憎んでいると思っていた。
「なんで?」
「いやだって自由を奪われたろ?」
「うん?ああ、あんたコーディネーターか?あはは!うけるー!」
兵士たちがゲラゲラ笑っている。
「なにがおかしいんですか?」
「だってさ自由って何よ?」
「いや。だってそれは。仕事が勝手に決められるとか、配偶者が選択できないとか」
「そんなのデスティニープランが始まる前からそうだろ」
「え?」
俺は愕然とした。ロミもラクスもだ。
「自由ってさ。強い奴が自分の意思で生きられる世界だろ?俺たちは弱いナチュラルなんだぜ?」
「そうだよ。デスティニープランが社会を回す前は仕事に就くのだって大変だった!」
「徴兵とかもあったしな。自由なんてなかったろ」
「恋人だって作るのは大変だぞ。あんたみたいに顔がいいならべつなんだろうけど」
なんだこれは?
「プランが選んでくれた嫁さんと暮らしてるけど、子供もできて俺は幸せだね」
「プランがちゃんと人生を管理してくれるからな。将来の不安もないし!」
「まったくだよね」
ラクスが蒼い顔をしている。かつて俺はラクスの第二次大戦の頃の放送を見たことがある。自由のためにデュランダル議長と戦ったときの世界への呼びかけ。人々の自由のために戦うと彼女は言った。
「だから腹立つんだよ!コーディネーターたちは優れた遺伝子だから上っておかしくないか!」
「俺たちだって働いてプランを回してるんだ。なのに奴らはまるで貴族みたいに振舞ってる!」
「俺たちは平等が欲しい!社会に公平な幸福を求めてるんだ!」
「遺伝子で仕事は決まっても貴賤が決まるわけじゃない!プランを公平に動かすべきだ!!」
兵士たちも熱くこの社会の在り方を語りだした。そのうちデモ隊の連中もそこに合流してみんなでシュプレヒコールを上げだす。空にいたから俺はわからなかったんだ。自分が自由を失ったから、ナチュラルたちもそうなんだと思っていた。とんでもない誤解だった。世界はもうデスティニープランを受け入れている。それを前提にして、世界から格差をなくそうと人々は運動を始めたんだ。社会は進化してしまった。俺たちはその流れに取り残されているんだ。
部屋に戻ってからラクスが落ち込んでいた。俺はベットに誘い、優しく抱いた。ことが終わった後に、俺の腕を枕にしながら彼女は言った。
「わたくしは。わたくしは間違っていたのですか?」
「いや。あの時はきっと間違っていなかった。俺は少なくともプランには反対だった」
「ですが世界はもうプランを。運命を決められる世界になにも違和感を持っていなかったのですね」
「ああ。そうだな。俺たちは自分たちが正しいと思ってた。圧政に抗う自由の騎士気取りだった。違った。ただの。ただの置いてかれた人だった」
「じゃあわたくしたちはなんでこの世界で逃げ回らなくてはいけないのでしょうか?」
「わかんない。だけど逃げ切れなければ死ぬ。そういう運命なんだろうな」
皮肉でしかない。淡い希望を持っていた。自由を求める人たちを合流して帝国を倒して自由な世界を作ることを。誰もそんなことは望んではいなかった。社会はプランを受け入れたうえで先に進むことをもう選んでいた。俺たちはただの置いてきぼりだったのだ。
デスティニープランを人々は受け入れています。
なぜならばプランは運命という名の福祉を人々に与えるからです。
ラクスがいうところの自由ってこの世界じゃコーディネーターくらいしか叶えられない自己実現なんですね。
庶民はそんなことよりも目先のパンや、雨風をしのげる家が欲しい。
自由恋愛なんてハードなことよりも気の合うパートナーと一緒に子供を育んで、ただ満足して老いて死にたいだけなんです。
個人的にはラクスはハサウェイみたいな理想家なんじゃないかと思ってます。
だから庶民を見て愕然とする。
自分は自由恋愛でキラを手に入れた。
他の人間だってそうすればいいと思ってる。
デスティニープランは幸福を与える。
だから人々は従った。その上で間違っている格差の是正を求めている。
この世界はラクスに厳しいですね!!(;´Д`)