機動戦士ガンダムSEED COORDINATION   作:笑嘲嗤

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第28話 振り返れない過去

 クランバトルは順調に勝っていった。もうすぐ目標資金に届く。

 

「じゃあ俺はお前らが資金を集め終わる前に宇宙に上がる。仕込みはしておかないといけないからな」

 

 部品屋のおっさんがそう言った。正直助かる。部品も一朝一夕じゃあ届くわけないしね。ほんでまあ俺たちはクランバトルに勤しんでいたわけだけど。

 

「なんつかーずっと見られてるんだよなぁ。あの野郎まじでとっつ構えて髪の毛むしりたい」

 

 ずっとサングラスの青い髪の男に監視されてる。だけどいつもまかれてしまう。エゥーゴなら本当に接触したいんだけど、こっちの動静は知りたいが接触は避けている。なんでやね。交渉くらいいくらでも乗るっていうのに。

 

「次のカードで目標資金に届くわね。えーっと。なんか新人さんみたいよ。運がいいわね」

 

「いや。ここに来る新人なんて絶対にロクな奴じゃないよ。腕自慢だろう。油断はなしだよロミ」

 

 なんか新人さんとバトルらしい。相手の機体はダガーが二体。機体性能ではこちらが上だけど。なんか不安になるカードだな。バトルはニューヨーク郊外の荒れ地に設定された。

 

「わたくしのグフの敵ではありませんわ」

 

「だーから油断するなっての」

 

 女性陣が両方とももうお気楽モードなのほんと困る。俺だけでもしっかりしないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてバトルは始まった。初期型のダガーらしく動きはやや鈍い。こっちとしては変なことされる前に叩きたい。

 

「ロミ。ドラグーンで凹せ。俺はライフルで撃つ。ラクスはまだ待機」

 

「待ちません!!やぁ!!」

 

「あ!お馬鹿!」

 

 ラクスは俺の指示なんて聞かずに飛び出していった。最近のラクスはやる気満々なのが逆に困る。意外に気分にむらっけが多い。仕方がないから俺も前に出る。

 

「うん?離れない?」

 

 二機のダガーはお互いに離れない。そして一機だけ前に出てラクスのグフの前に立ちはだかる。

 

「遅いですわ!」

 

 グフが素早くダガーの胴をビームサーベルで切り裂こうとする。だけど。ダガーはそれをあえてよけなかった。それどころかグフの方に飛び込んでくる。そして大変驚かされたのだ。

 

「え?うそだろ?!」

 

 ダガーはグフの懐に潜り込み、その手首を止めて刃を止めた。そしてなんとグフの足を引っかけて投げ飛ばす。恐ろしく高度な格闘戦をやっている。只者じゃない。俺はすぐにラクスのグフに通信を入れる。

 

「ラクス!すぐに離れろ!お前じゃそいつには敵わない!!」

 

「わたくしは!わたくしも役に立てます!!」

 

 だけどラクスは引かない。そのまままたサーベルで切りかかるが今度はダガーが抜いたナイフで制されてしまう。俺もそれを見て驚いてばかりいられない。ダガーの後ろに回り込もうとした。だけどもう一機のダガーが俺の前に立ちはだかった。ライフルを構えてこちらに牽制で撃ってくる。

 

「いいマブしてんだな!」

 

 俺はビームを躱しつつ、相手に近づく。するとダガーは後ろに下がる。そして俺がビームサーベルを抜いて切りかかろうとした時だ。ダガーは盾を俺の方に投げてきた。視界が埋まる。だけどすぐに切り裂いて真っすぐ飛び込んだ。そうしたら。

 

「え?」

 

「きゃぁ?!」

 

 目の前にいたのはピンクのグフだった。俺とラクスのMSは正面衝突してしまった。

 

「ラクス。大丈夫か」

 

「はい。すみません……わたくし、先走り過ぎました……」

 

「まあいいよ。それはね。いよいよ初めてで最後のマジのマブ戦ってやつらしい。ラクス。息合わせてくれるよな?」

 

「ええ。もちろんですわ!」

 

 俺はコンソールのボタンを押す。最終兵器だ。

 

『ワルツ?』

 

 向こうの通信から男の声が響いた。そう。今俺たちは全域にワルツを流している。そして俺とラクスは互いに並ぶように跳んでダガーたちに迫る。

 

「「やぁああ!!」」

 

 俺とラクスは叫ぶ。そしてダガーたちのサーベルの突きで割って入る。ダガーたちはこれでお互いに距離を取り、俺とラクスはまだお互いに背中を預けたままになった。

 

「息ぴったりね。でもわたしもいるのよ。ドラグーン!」

 

 そしてドラグーンが放たれてダガーを襲う。ダガーたちはちょこまかと見事に避けるけど、俺とラクスはその隙を見逃さない。俺はライフルを撃ちながら前方方向のダガーに迫る。そしてサーベルを抜いて切りかかる。

 

『甘いですね』

 

 向こうから女の声が響く。ダガーはいともあっさりと俺のサーベルを避けた。だけど。

 

「甘いのはあんただよ」

 

 俺は機体を少ししゃがませる。すると俺の頭上をヒートホークが飛んでいく。そしてダガーの首をその斧が刎ねた。

 

「やりましたわ!!」

 

 ラクスは俺の背後で準備をしていた。ダガーがサーベルを避けるのは想定済み。ラクスは俺の影に隠れてダガーに向かってヒートホークを投げる。この二弾攻撃はダガーの推力じゃ耐えられない。そして残ったのはダガー一機。ドラグーンを全集中させてから、俺とラクスは交互にサーベルで切りかかる。こいつもすごい操作能力だったけど、流石に格上の機体二機の猛攻には耐えられず、ラクスのサーベルで首を刎ねられた。そして試合は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニューヨークのクランバトルのセンターに戻ってきて賞金を受け取った。すぐに電子マネーでおっさんに送金して俺たちの部品調達ミッションは終わった。俺は深くため息を吐いた。

 

「やったわね!」

 

「ええ!やりましたわ!」

 

 女性陣二人は手を叩き合って抱き合っていた。仲がよろしいようで大変よろしい。そんな時だった。

 

「君たちがさっきの試合の相手だね?」

 

 一人の黒人の青年が笑顔で俺たちに近づいてきた。ラフな格好だけど端正で精鍛な顔立ち。なんか只者じゃない雰囲気を感じる。その後ろには白人の綺麗な女性がいた。顔がよすぎる気がする。コーディネーターっぽい。

 

「あなたはもしかしてさっきの対戦相手か?」

 

「ああ。ダガーで戦わせてもらった。君たちの戦いはすごいね。第一次第二次大戦でも見たいことがないくらいの超エース級だったよ!惜しみない賞賛を贈らせて欲しい。君たちと戦えたのは光栄だよ!あはは!」

 

 黒人の男は握手を求めてきた。断るのも良くないので俺は応じた。

 

「しかし珍しいね。この街ではコーディネーターは珍しいんだけど。それにマブ戦術をするコーディネーターなんてなかなかレア中のレアだよ」

 

 本当はハーフコーディネーターなんだけど。まあいちいち身の上話すのもあれだし話を合わせておくか。

 

「いい戦術は利用するだけだよ。一人で戦いたくなんてないしね」

 

「確かにその通りだ。戦争は数だよ。それが絶対の真理だ。まあそれでも埋まらないさがナチュラルとコーディネーターにはあったのが二つの大戦だったけどね。まあそれはいい。どうかな?これから食事でもどうかな?近くに美味しいステーキハウスがあるんだ」

 

「いや。俺たちは用事が……」

 

「よろしいのでは?」

 

 ラクスが機嫌良さそうにそう言った。ロミもステーキって言葉にちょっと興味ありげな様子だった。

 

「じゃあ決まりだな。ついてきてくれ。案内するよ」

 

 そして黒人の青年が歩き出す。ラクスとロミはその後ろをついていく。俺はため息を吐きながらもついていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ステーキハウス。ザ・アメリカンって感じ。どーんとお肉がプレートの上にのっている。

 

「ここは老舗でね、アメリカ文化の神髄が味わえるんだ。小さい頃から好きだった」

 

「この街の出身ですか?」

 

「ああ。私はこの街の生まれだ。だからかな。プラン施行後もここが自由の街であることはなかなかに喜ばしいと思っているよ」

 

 黒人の青年はステーキを美味しそうに食べる。俺もステーキを食べる。美味しい。なんだろう。まさに週末の贅沢にちょうどいい感じだ。

 

「でだ。君たちはなんでクランバトルに出ていたんだい?コーディネーターならプランのある所ならいい職といい生活が送れる。なのになんでこの混沌と怠惰に塗れた街に来たのかね?」

 

「出稼ぎっす。まあいろいろあって」

 

 ガンダムの部品買いに来ましたとか言えるわけもない。

 

「あなたたちこそこの街へは?仕事ですか?」

 

「いいや。休暇だ。恋人のキャサリンといっしょにデスティニーランドにあそびに来たんだ」

 

 隣の白人女性が微笑む。キャサリンさんって言うのね。

 

「いいですわね!わたくしたちもこの間あそこに行きました!楽しかったですわ!」

 

 ラクスが同好の人見つけて嬉しそうにしている。

 

「へぇ。不思議な感覚だね。君のような女もデスティニーランドが好きなのか?二度の大戦で世界に喧嘩を売った自由の歌姫が?」

 

 ラクスの顔が凍りつく。俺はすぐに銃を抜いて黒人の青年に向ける。

 

「物騒だね。ここは自由の国のままだが、銃を人に向ける自由は人にはないよ」

 

「ラクスのことを知っているんだろう?!何が目的だ?!」

 

 俺は声を荒げる。だが黒人の青年は涼しい顔をしてステーキを食べる。

 

「ただ話したかっただけだ。ラクス・クライン。まああえてそう呼ばせてもらう。君に聞きたいことがあるんだ」

 

「……なんですの?」

 

「私はコンパスにいたんだ」

 

 コンパス。第二次大戦後に作られた世界秩序を維持するための組織。主に停戦監視が任務だったはずだ。ラクスはその総裁だった。

 

「わたくしはあなたのことを知りません」

 

「まあ知らないのも無理はない。私は末端の戦闘員さ。それも歩兵でね。キラ・ヤマトが投入される前に戦域に潜入して強行偵察するのが任務だったんだ」

 

 ラクスがはっとした顔をする。黒人の青年はまだ涼しげに笑っている。

 

「君はキラ・ヤマトが死んだときに涙を流したかね?」

 

「それは。それはもちろん」

 

「では私の戦友がキラ・ヤマトが活躍できるような情報を得るために戦死していたことには?それに涙を流したことはあるかな?」

 

 ラクスの顔が真っ青になる。これは闇の歴史の話だ。ラクスは今、過去の闇に追いつかれたのだ。

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