機動戦士ガンダムSEED COORDINATION   作:笑嘲嗤

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第2話 運命の影

 出撃後はいつも体がだるい。MSの操縦はコックピットでレバーをガチャガチャ弄ってればいいわけではない。敵がいるのだ。だから気が張り詰める。命の取り合い。その恐ろしさが体力を削っていく。

 

「疲れた……」

 

「ニニギ隊長やる気なさ過ぎじゃないですか?」

 

 俺は休憩室にある自販機で栄養ドリンクを買い、窓の向こうの宇宙をぼーっと眺めていた。俺の隣にはラグンヒルがいて、イチゴ牛乳をストローでちゅうちゅう飲んでいる。

 

「なんだぁ?くせぇと思ったら雑種がいるじゃないかよ!台無しだなぁ!」

 

 俺がドアの方に顔を向けるとスペンサー・アビントン大尉とその部下たちが入ってくるところだった。彼らの部隊と俺の部隊は互い交代するシフトを組んでいる。

 

「おい雑種!お前みたいな劣等種が憩いの場を荒らすんじゃねぇよ!」

 

 小さいころから雑種とよく言われて育った。昔は悔しかったが、今ではもう何も感じない。戦闘のストレスの方がずっときつい。こんな奴らに使うエネルギーは俺にはなかった。

 

「スペンサー!汚い言葉!恥を知りなさい!」

 

 俺の隣のラグンヒルは顔を真っ赤にして怒鳴っている。エネルギーが勿体ないとは思わないのだろうか?

 

「ラグンヒル。そんな奴の傍に居るな。匂いが移るぞ」

 

「ひどい人最低!」

 

 いつもアビントンは俺に絡んでくる。鬱陶しいが、同階級だと無視も難しい。俺は飲み干した栄養ドリンクのパックをゴミ箱に捨ててドアの方へと向かう。

 

「ニニギ隊長!?こんな奴に言わせっぱなしでいいんですか?」

 

「いいよ別に。どうせ喧嘩すれば俺が勝つし」

 

 俺にとってアビントンはどうでもいい奴だ。能力は取るに足らないし、人格にも尊敬すべきことはない。趣味もあわない。

 

「おいてめぇ!自分の方が優れてるっていうのか?自惚れか?!」

 

「まさか。俺はコーディネーターじゃない。君たちみたいに傲慢にはなれない。弁えているから、事実しか言わないよ」

 

 俺がそう言うと、アビントンは壁を蹴って俺に飛び掛かってきた。そして胸倉に掴みかかる。だけど。

 

「迂闊だぞ」

 

 俺は飛び掛かってきたアビントンの力を利用して、縦の回転をかける。そしてそのまま俺とアビントンの身体の位置が入れ替わり、近くの自販機にぶつかる。

 

「ぐは!」

 

 苦しそうな声を出すアビントンの首を左手で掴む。そしてそのまま力を込める。

 

「ぐぁああ!」

 

 昔からそうだった。俺は握力が高い。初等教育のスポーツテストでもつねに一位だった。このコーディネーターしかいないプラントでだ。

 

「アビントン隊長を放せ!」

 

 アビントンの部下たちが俺に飛び掛かってくる。だけど俺はそれらを掴んでいたアビントンを振り回すことで撃退した。

 

「がはぁ!」

 

 俺はアビントンを思い切り床に叩きつける。そしてついでにみぞおちを思い切り踏んずける。

 

「憩いの場なんだよ。わめくな。鬱陶しい」

 

「ば、ばけもん……」

 

 小さいころからいじめられっ子だけど、喧嘩だけは負けたことがない。

 

「やめてよね。コーディネーターさまに化物扱いされる謂われわないんだよ」

 

 空の化物と地球のナチュラルたちはコーディネーターを呼ぶ。その化物に化物の呼ばわりされたら、いよいよ惨めになる。

 

「ラグンヒル。ここは騒がしいみたいだし、展望室に行こう。あそこなら昼寝もしやすい」

 

「はい。隊長!お供します。あ、スペンサーこれ片しといてね」

 

 ラグンヒルはさっきまで飲んでいたジュースのパックをアビントンの顔に投げつける。そして俺たちは休憩室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 船上勤務が終わりアプリリウスに帰ってきた。軍港から市へと向かうエレベター内で俺はラグンヒルとお喋りしていた。

 

「隊長は休暇どう過ごすんです?暇なら……」

 

「妹の学校行事の見学に行く」

 

「そ、そうですか……」

 

 妹はまだ中等教育を受けている。俺と妹は結構年が離れている。父も戦死したし、半分くらい父親な感覚で接している。

 

「お前はどう過ごすんだ?アビントンとデートでも行くのか?」

 

「嫌ですよそんなの。一度だけデートしたことありますけど、気がきないし横柄だしいやらしいし。しつこく自分の部屋に誘おうとするんですよ。キモいんですよね」

 

「婚約者なのに一回しかデートしてないのかよ」

 

「はぁ。遺伝子の相性はいいんでしょうけど、なんか心がついてこないんですよね。プランに従ってるのに……恋愛感情わかないですね」

 

「まあ結婚は恋愛とは別っていうしね」

 

「わたしのうち、婚姻統制カップルなんですけど……両親ちっとも仲良くなくて……」

 

「そうなの?」

 

「だからわたし一人っ子なんだと思います。父も母も外にいるみたいです……」

 

 暗黙のダブル不倫か。コーディネーター社会の闇は深いな。

 

「結婚って幸福なことだって学校では習いました。でも大人になって振り返ったら全然幸せじゃないんですよ」

 

 市民の幸福が義務だといったのはどこのSF小説だったか。

 

「帰っても私一人です。家には誰もいません」

 

 なんか気の毒だな。

 

「だったらうちに遊びに来るか?」

 

「え?」

 

 ラグンヒルが俺に顔を向ける。

 

「一人なんだろ?ならうちに遊びに来いよ。俺の母さんは料理が美味いんだ。妹のミウはバイオリンが得意でね。まあ退屈はしないと思うよ」

 

「隊長……。はい!行きます!嬉しいです!」

 

 こうして休暇中にラグンヒルが俺の家に遊びに来ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 




コーディネーター社会って詰んでるよね。みたいな話。
というかデスティニー・プランってナチズムと共産主義の悪いとこどりだと思う。
人をひき潰して回る巨大な歯車。
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