機動戦士ガンダムSEED COORDINATION 作:笑嘲嗤
事件の後、俺は自室に籠ってずっと放心状態だった。家のベットの上でぼーっと寝っ転がっている。
『被害者は繰り返し殴られ、複数人からも性的暴行も受けていました。その後出血多量で死亡。むごいことです』
鑑定した医師は気まずそうに俺にそう告げた。犯人たちは不明。違う。性的暴行を受けていたならば、体液が残っているはずだった。
『上から捜査の終了が告げられました。不法侵入した海賊たちの仕業と断定したそうです』
プラントに住む住民のDNAデータはすべて当局が抑えている。なのにそう断定した。都合が悪いからだ。おそらくはコーディネーターでも名家の出が犯人グループなのだろう。適正かつ正当な職に就いているはずの市民が犯罪を犯すはずはない。だからプランの失態を隠すために証拠は隠蔽されてしまった。犠牲者はナチュラルとハーフコーディネーター。プランの世界にはいらない存在。だから犯人たちは法の裁きを受けることなくのうのうと世間様でデカい顔をしている。
「なんで奪う。俺はプランに従っていたじゃないか……」
俺はプランに反攻なんてしなかった。ミウも従っていたし、母だって職には就かなかったものの、プランに表立って逆らったりはしていなかった。プランに従っても、プランは俺たち家族を守らなかった。だったら何のためのプランなんだ?絶対的平和を実現するためだと言いながら世界に押し付けたのに。こんなのただの中世の身分社会そのものじゃないか。俺の頭の中はどうしようもないことでぐるぐると廻り続けていた。そんな時だ。
「失礼します隊長」
ラグンヒルが俺の部屋に入ってきた。失念していた。家の鍵はかけ忘れていた。そんなことにも頭が回らないほど、俺は消耗しきっていた。
「何の用だ?」
「隊長のことが心配で、だから、その」
「もう事件は終わった。あとは俺の問題だ。放っておいてくれ」
「そんなこと!そんなことできません……」
ラグンヒルは涙声でそういう。
「マリアさんもミウさんも優しい素敵な人たちだった!わたしは悲しい。悲しいようぅ隊長ぅ」
白々しい。そう思っている俺はきっともう駄目なんだろう。コーディネーターの彼女がナチュラルの母と、ハーフコーディネーターのミウの死を悲しむなんておかしい。そう思っている。
「わたし間違ってた。ユニウスセブンで同胞が死んだときだってこんなに思わなかった。顔も知らない同胞よりも、隊長の大切な人たちがいなくなった方がずっとずっと悲しいようぅ」
俺はラグンヒルの方へ顔を向ける。彼女は本当に悲しそうに泣いていた。ああ、嘘じゃないんだ。俺以外にも母やミウの死を嘆いている人がいた。ラグンヒルは俺の傍に寄ってくる。俺は彼女を抱きしめた。
「プランが正しいって思ってた。なのにプランは間違った人たちを見逃している。おかしいよ。こんなのおかしい。なんで、どうして」
俺たちは運命を定められた。なのに運命は無責任で俺たちに悲しみだけを残す。ならなんで俺たちはこの世界で生きなきゃいけないんだろう。俺とラグンヒルの唇が自然とかなさなった。そして互いの服を脱がせ合い、俺たちは体を重ねる。彼女にはプランの定めた婚約者がいる。だからこれは反逆だった。ささやかな俺と彼女の運命への反逆。ちっぽけでどうしようもない小さな抵抗。それに身を委ねて、生理的な快楽に今は身を委ねたのだ。
朝になって少し軽くなった心で起きる。隣にはラグンヒルが裸で寝ている。それに安心と愛おしさを覚える自分がいた。でもこんなのが初めてだなんて、悲しいと思った。ラグンヒルも初めてだった。悲しさを紛らわすために夜はお互いをただただ求め合った。
「ユウさん。起きたの?」
「ああ。おはようラグンヒル」
俺たちの唇が重なる。昨日の途中からラグンヒルは俺を名前で呼ぶようになった。俺たちは恋人といってもいいのだろう。起きた俺たちは朝食を食べて風呂に入って、また互いに求め合った。ただただ体を交らわせるだけの一日。馬鹿みたいだ。だけどこうしていなければきっと心は壊れてしまったままだろう。こんなことになっても俺は仕事を辞めることはできない。何をすればいいのかわからなかった。だからこうして傍に居る人の温もりだけを生きる目的にする。それはどれだけ愚かなことなんだろう。だけどそれ以外にやることがなかったんだ。
堕落しきった休暇が終わり俺とラグンヒルは再び船上勤務に就く。軍港から俺たちの船に乗ったとき、入り口のところにアビントンがいた。
「ラグンヒル。休暇中ずっと連絡したのに何で無視した?」
ラグンヒルは話しかけるアビントンを一瞥だけして横を通り過ぎた。だけどその手を掴まれる。
「待てよ!俺たちは婚約者だろう!一緒に過ごすべきだろう!プランはそう言っている」
「放して!触らないでよ!」
手を振りほどいて、ラグンヒルは俺の後ろに隠れた。
「なんでそいつの後ろに隠れる?!そんな奴の後ろに!」
「そんなことあなたには関係ないでしょ!」
くだらない言い合いにラグンヒルを付き合わせたくなかった。俺はアビントンを睨む。
「いい加減にしろ。彼女のプライベートは彼女の自由だ。お前には関係ないことだ」
「だから俺はラグンヒルの婚約者なんだ!」
「婚約者だろう。まだ結婚もしてない。相手を縛る理由にはならない。彼女につき纏うな」
俺はラグンヒルの背中に手を添えてアビントンから離れる。
「ラグンヒル!邪魔するな雑種!話を聞けよ!」
アビントンが俺たちの後をついてくる。だけどそれが癇に障ったのだろう。ラグンヒルが怒鳴る。
「もう放っておいてよ!!昨日はユウさんの家にいたんだから!!」
それを聞いてアビントンは愕然としていた。絶望という言葉がよく似合うそんな顔。
「アビントン。もう彼女の心はお前にはない。俺たちを放っておいてくれ」
俺たちはアビントンから距離を取る。そんな時、ボソッと後ろから声が聞こえた。
「なんでだよ。せっかくあんなことしたのに、どうしてラグンヒルがお前のものになったんだよぅうううう!!」
俺とラグンヒルは驚いて振り向いた。あんなこと?
「ラグンヒルに雑種が寄り付かないようにナチュラルと雑種のメスを駆除したとに!どうして!」
「あなたがやったっていうの?!スペンサーぁああ!!」
ラグンヒルは壁を蹴って、アビントンを思い切りぶん殴る。
「やめてくれラグンヒル!?俺はただお前のために!」
「そんなのがどうしてわたしのためなのよ!!あなたは人間じゃない!」
俺は放心していた。犯人はアビントン?その一味たち?なら母さんとミウが殺されたのは。
「俺のせいなのか?」
「ユウさん?」
ラグンヒルが俺を名伏し難い顔で見ている。
「俺がこいつに憎まれたから?だから母さんとミウは死んだのか?」
「違う!ユウさん!そんなの違う!間違ってる!あれはこいつの逆恨みだよ!あなたのせいなんかじゃ」
「でも俺が。俺がここにいなきゃ、ここで恨まれて憎まれなければ」
俺はただただ衝撃に身を委ねるしかなかった。体が動いてくれない。因果が巡り巡って俺の大切な人たちを奪い去っていった。運命はもうとうの昔に決まっていて。俺の手の中にはなかった。俺は家族を奪われる定めだったんだ。そしてMPたちが来るまでひたすらラグンヒルはアビントンを殴り続け、俺は茫然とし、アビントンは殴られるままだった。誰も何も手に入れることが出来ない運命の輪。プランはいったい誰のためにあるのだろうか?俺には理解できず、理解しようとも思えなかった。
誰も報われないのホントひどい。
ちなみにユウは身長184cmあるので結構デカい。
ラグンヒルは身長173くらい。
ちなみにユウはキラと同い年だったりします。