機動戦士ガンダムSEED COORDINATION   作:笑嘲嗤

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第7話 G.U.N.D.A.M

 脱走したはいいが、俺にはどうしても補給が必要だった。コックピットの中で宙域図を開いて、睨めっこしていた。

 

「出来れば追撃の裏をかきたい。だけど無理そうだ」

 

 頭を抱えるほかない。俺が補給をできる場所は限れている。まず1。海賊たちに身売りする。もしかしたら子供たちに同情はしてくれるかもしれない。だが俺は元ザフトだ。彼らからすれば俺は排除対象だろう。厳しい。その2、ジャンク屋組合に紛れ込む。身分証がない。ハッキングは出来るが時間が稼げる気がしない。その結果、消去法として選ばれるのは。

 

「墓荒らししかないな」

 

 俺は主にプラント周辺の治安維持に務めていた。今もまだプラント周辺である。プラント近くにどでかい漁り場がある。

 

「第二次大戦のときに地球連合にレクイエムで墜とされたプラントコロニーの残骸」

 

 要は墓荒らしだ。自分でも最低なのは重々承知だが、他に手はない。すぐにそちら側に進路を修正し、エンジンを吹かして加速だけして停止する。少しでも推進力のエネルギーを遺しておくために慣性だけで目指すことにした。一応デコイのミサイルを出鱈目な方向に飛ばしておいたけど、きっと読まれるだろう。戦闘は避けられない。あそこはコーディネーター感情に配慮して、ジャンク屋組合も手を出さない。まだなにか資源やあるいはシャトルなんかも残っているかもしれない。一縷の望みをかけて俺はヤヌアリウスを目指す。

 

 

 

 

 

 

 「熱源が旧ヘリオポリス方面に向かって感知されたが、おそらくデコイだ。本命はヤヌアリウスだろう」

 

 副長と艦長ら作戦参謀を集めたミーティングでアンサラーがそう言った。

 

「熱源を感知したならそちらこそ本命では?あいつは一目散に逃げているはずですよ!」

 

 アビントンがそう言ったが、アンサラーは苦笑いだけを浮かべている。相手にする気はない。そうラグンヒルは察した。

 

「おそらく相手はデブリの中に潜んで出てこないはずだ。MSよりも歩兵のコマンドを投入して探索することがメインになるだろう。資源を獲得されたら、そのまま静かに逃げるだろう。こちらは足の速い船を持ってきてはいるが、時間はギリギリ。ここで会敵できなければ次はない」

 

 アンサラーはそう言って会議を打ち切った。そして船はヤヌアリウスへと進路を取る。ミーティングルームから士官たちは出ていき、アンサラーとラグンヒルだけが残った。

 

「不安かね?それとも不満かな?彼に追いつきたい。でも逃げ切って欲しい。そんな矛盾が透けて見えるよ」

 

「女心にお詳しいようですね」

 

「いいや。むしろ原子炉よりも制御の利かないものだと思っているよ。私はこれでも結婚歴がある。痛い目にはあった。女心は男の期待を裏切るものだとね」

 

「わたしはユウさんを裏切ったりしない」

 

「君にそのつもりはなくても、向こうがそう思うのさ。男女は必ずすれ違う」

 

「あなたが結婚に失敗したからって、押し付けてるんですか?」

 

「くくく。そんなつもりはない。まあ、老婆心というやつだ。君はすでに彼の選択で傷ついている。その傷を彼は機敏に感じ取る。故にすれ違うのさ」

 

 ラグンヒルは宙域図を睨む。彼に再会したとき、自分に説得できるのか。自分の愛に彼は応えてくれるだろうか。それだけが不安だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤヌアリウスについてすぐに旧軍事施設に着陸した。軍事施設は堅牢にできてる。案の定地下の施設はまだ生きていた。

 

「クレア。子供たちを誘導して」

 

「はい、ユウさん」

 

 地下の防空システムは生きていた。そこには空気も食料も十分残されていた。まあレーションだけど腹は満たされる。水もあるし、上下水の循環システムも生きていたからしばらくは籠れる。子供たちを食堂に待機させ、飯を取らせる。

 

「ありがとうございます。逃がしてくれて」

 

「いいんだ。この糞みたいな世界でも正しいことをしてみたかった。ただそれだけ」

 

「でもユウさんは、居場所がなくなっちゃったんでしょう?」

 

「気にするな。あそこはきっと俺の居場所じゃなかったんだ。まあ先のことはあまり考えるな。俺が君たちを必ず無事に守り抜くから」

 

 俺はクレアの頭をポンポンと撫でて、施設の探索に出かけた。パイロットスーツのヘルメットをかぶり、無酸素無重力の中を進み、生きているコンピューターを探して、施設のマップを出す。

 

「この基地はモビルスーツの試験場だったのか?」

 

 ならばバッテリーや武器類も残っているかもしれない。俺は基地のドックを目指す。

 

「ちっなんだよこれ」

 

 通路を水の壁が塞いでいた。無重力化では水はまとまってまるでスライムみたいに貯まる。上水道が切断されたのだろう。

 

「ドックへはいけない?回り道を探すほかないのか……え?なんだこの感覚」

 

 何か耳の奥で響くような、視界の端がちかちかするような感覚に襲われる。そして次の瞬間。地面が酷く揺れた。

 

「爆撃か?!もう追いつかれた?!」

 

 すぐに子供たちのもとへ戻ろうとした。だけど次の瞬間足元が割れて空気が空気が噴出してきた。

 

「なぁ?!」

 

 そしてそのまま通路を塞いでいた水流に飲み込まれて、俺は流されるままにどこかへと落ちていく。その最中だった。極彩色の光景が目の前に広がり、俺はそれに飲み込まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 アンサラーの命令によってヤヌアリウスに爆撃が行われた。それをラグンヒルを含めたコーディネーターたちは全員反対した。ここは同胞の墓でもあるのだ。

 

「くだらない。感傷に浸る余裕は我等にはない。追いかけている相手はネズミではない。傷を負った慢心せぬ虎だ。虎穴に入るつもりは私にはないのだよ。穴は壊さねばならぬ」

 

 だがそれは通らなかった。ブリッジにいる皆が苦い顔をしているのに、アンサラーはなにも気にしていない。

 

「MS部隊は待機に入れ。歩兵コマンドには。そうだな。おそらくはあの軍事基地だろう。あそこに潜んでいるはずだ。突入してもらう」

 

 命令が下り、総員が配置につく。アンサラーは椅子に深く腰掛けて、パックのゼリー飲料を飲みだす。

 

「さて。どんな喜劇を見せてくれるのかな?期待しているよ。ユウ・ニニギ」

 

 アンサラーは頬杖をついて、ほくそ笑む。彼にとってこれは任務などではない。彼はここに愉しみを見出している。その異常性に周囲のクルーたちは戦慄を隠せなかった。

 

 

 

 

 

 

 眩しい明かりがただ点滅を繰り返している。俺は落ちているのか登っているのかもわからぬまま、前後左右上下の間隔さえ失い、ただそこにいた。そして誰かとすれ違った。それは女だった。俺は振り向いて、声をかける。

 

「誰だ君は……」

 

「わたしは運命の花嫁」

 

「運命は嫌いだ」

 

「でもわたしはあなたをけっこう好きになれそうよ」

 

「運命は嫌いなんだ!」

 

「なら自由がほしい?」

 

「違う。俺は何かが欲しいんじゃない。失われたものが寂しいんだ」

 

「失われたものは返ってこない」

 

「でも寂しいんだよぅ」

 

 女は俺を頭を抱きしめて撫でる。

 

「知っているわ。でもね。あなたは立ち上がらなければいけないのよ。あなたを必要としている人がいるのだから」

 

 そうだった。俺はまだやるべきことがある。

 

「また会えるかな?」

 

「ええ。あなたが臨むならばいくらでも」

 

 そして俺は自分が水に流されてどこかの床に叩きつけれたのを知った。

 

「ぐはぁ!」

 

 そして水流からはじき出されて宙を舞う。そして目の前に1機のモビルスーツの姿が見えた。灰色の機体。おそらくフェイズシフト装甲の機体だ。額はどこかで見たようなV型ののブレードアンテナだった。

 

「なんだ?なんだよこれは?」

 

 爆撃はまだ続いている。音が響いている。ここには空気があるようだ。施設が揺れているのは感じられた。俺はスーツのスラスターを吹かして、そのMSに近づく。そして胸のあたりに着陸して、コックピットのハッチに手を添えて開く。

 

「うわ。冷たい」

 

 コックピットを開くと中は凍り付いていた。複座型のシート。奥のシートには金髪の女の子が裸で凍りついて眠っている。

 

「死んでる?いや。コールドスリープなのか?」

 

 首に手を当てると脈を感じられた。眠ってはいるが生きている。異常事態のバーゲンセールに俺は戸惑うばかりだ。俺は正面のコックピットに座る。その時、何かのセンサーの光が俺を走査した。そしてハッチが閉まる。

 

「コックピット侵入者ヲハーフコーディネーターデアルコトヲ確認。パイロットニ登録」

 

 そして正面のサブモニターがひかりザフトの紋章が表示される。その後、すぐにOS名が表示される。

 

 

Genetic

Uprising

Neutralizer &

Debiant

Annihilation

Machine

 

 

「ガンダム……?」

 

随分と物騒なバクロニムだ。ガンダムと先に名前を決めてから、思想を当てたような歪さを感じる。そしてメインモニターが起動して周囲の風景が映る。ミサイルがここまで貫通したのだろう、周囲は爆炎に飲み込まれていた。

 

『声が聞こえるだろうか?私の思いは伝わってくれるだろうか?』

 

 サブモニターに初老の男が映っていた。無精ひげで憔悴しきったような顔をしている。

 

『私のことを見ているということは、君の世界は運命によって支配されてしまったのだろう』

 

 この顔には知っている。シーゲル・クライン。元プラント最高評議会議長。

 

『私はこれからパトリックに殺されるのだろうが、それはただの喜劇でしかない。パトリックは復讐に囚われてしまった哀れな男だ。我々は本当の悪意によって、世界そのものを鎖す運命の輪に生かされているだけどの小物にすぎない』

 

 シーゲル・クラインの暗殺事件と三隻同盟の話は有名だ。そこで現在の皇太子妃であるラクス・タオが活躍したことも。

 

『命は生まれ出もの。それを我らは忘れてここまで来てしまった。すまない。その罪の重さは計り知れない。そしてその咎を負わされるのは我々老人ではなく、きっと君のような若人なのだ』

 

 その咎を喰らったのが俺なのだろうか?わからない。俺の因果は俺だけのモノではない。もっと深い根深いあまりにも昏いコーディネーターの歴史そのものの歪み。

 

『ジョージ・グレンは人の今と未来に立つ者。その調整者、コーディネーターと呼び。未来を夢見ていた。とんだ傲慢だ。この世に真のコーディネーターなど一人もいない。誰もが今だけを貪るエゴイストばかりだ。そして永遠の今日を。明日を拒絶する意思が世界を覆う。平和の名の下に、人々を分断し押しつぶす。歴史の中で人々はつねに自由を求めて戦っていた。ああ。我々コーディネーターが未来を終わらせる。だから私は託したい。今これを見ている君に』

 

 死したシーゲル・クラインは何かを俺に託そうとしている。この先を見るべきなのだろうか?

 

「君はコーディネーターとナチュラルの狭間に立つ者。運命と自由の間に揺れる可能性のヒト。頼む。デスティニープランから人々を解放して欲しい。そして我が娘ラクスを殺して欲しい。あの子は優しい。だがあの子はきっと人々を引き返せない定めへと引きずり落とす魔女となっているだろう。すまない。このガンダム。ジュディケーターを君に託す。世界に自由なる明日を……」

 

 そして映像はそこで終わった。俺は何かをシーゲル・クラインから渡された。それを担わなければいけないのか?だけど今は守らなければいけないものがある。子供たちの未来を俺の手で守り切る。そう誓った。

 

「シーゲル・クライン。あなたの願いはわかった」

 

 俺は操縦桿を握る。そしてガンダムは一歩前に踏み出した。

 

「だから。俺はガンダムで行く」

 

 そして頭上のハッチがつぎつぎと開き、外への通路が出来た。俺は飛び立つ。過酷なる運命を破壊するために。




『俺はガンダムで行く』
森崎ウィンさんのセリフですね。
かっこいいから採用したって、ガンダムが言っている。
あと運命の花嫁との空間はキラキラな空間ですね。
こういういいとこ出来るのが二次創作のいいところですよね。
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