機動戦士ガンダムSEED COORDINATION 作:笑嘲嗤
ラグンヒルたちは爆撃されるヤヌアリウスを見詰めていた。ここは同胞の眠る場所。それを容赦なく破壊する指令を出したアンサラーに反感を覚えていた。そしてそれ以上にラグンヒルはユウが出てこないことに、焦りを覚えていた。
「早く出てきて早く」
そうすれば免責状を出して、この騒ぎは終わる。そんな風に思っていた時だ。一筋の光が見えた。それはヤヌアリウスから出てきた。そしてそれは展開するハイザックの隊の前で止まる。白を基調として部分部分に赤や青の入ったMS。特徴的なのは額の金色のV字型のブレードアンテナ。そしてなによりも奇妙なのは背中に背負った十字架型のモジュール。一体何のためにあるのか、見当もつかなかった。
「うそ。ガンダム……なの?」
突然現れた伝説の機体に動揺してしまう。あれは禁忌となったはずの機体。かつてデスティニープランに抵抗したものたちが駆った反攻の象徴。
『こちらユウ・ニニギ。警告する。それ以上近づくならば容赦はしない』
「ユウさん!?」
ガンダムから発せられた声は間違いなくユウのモノだった。
『脱走兵がガンダムだと?!!これ以上ない反逆っぷり!万死に値するなあ!』
アビントンが喚いている。だがそれを無視してラグンヒルはユウに呼びかける。
「ユウさん!話を聞いて!」
『ラグンヒルか?』
「そうだよ!私だよ!ねぇ!免責状が出てる!ユウさんが投降してくれれば罪には問われないって約束をもらってきたの!皇帝陛下のサインがちゃんとあるの!だからおねがい!投稿して!」
ユウの方に免責状を通信で送る。きっと彼は今頃喜んでくれるはず。
『俺は免責されるんだな』
「そうだよ。だから!!」
『子供たちはどうなる?』
「え?」
『子供たちの処遇についての免責がない。こんなものは受け取るに値しないよ。ラグンヒル。すまない』
手元にある勅語を見る。確かにユウの免責については記述がある。だがユウ以外については面積がない。してやられた。アンサラーは子供たちのことまで免責しなかった。知らないわけがない。わざとやられた。
「でも!でも!子供たちよりも私の傍に来てよ!帰ってきて!お願いだから!」
『残念だよラグンヒル。俺は正しいことを成したい。君の傍ではそれが出来ないんだ』
ガンダムはライフルをザフト側に向けてきた。
『交戦の意思アリだなぁ!全隊に告ぐ!ビームのシャワーを浴びせてやれぇ!』
アビントンの命令でラグンヒル以外のハイザックが一斉にライフルをガンダムに向ける。
「やめてアビントン!まだ交渉は!!」
『しねよや!』
そしてハイザックから一斉にビームが放たれる。それはガンダムに吸い込まれるように当たり。霧散した。
『な、なんだ?!ビームが消えた?!もう一度だ!』
いつの間にか背中の十字架がなくなってガンダムの周りを四つの十字架型のビットが回転していた。あのモジュールは分割できるらしい。そして再びビームが放たれる。それらすべては回転する十字架に触れて霧散していく。
『なんでだよ?!フェムテックなのか?!あり得ない!?あれは機密技術だぞ?!ガンダムが持っているはずがない!』
ラグンヒルもひどく驚いていた。ビーム兵器が一切通じない。それはかつてファウンデーションがガンダムを討った時の戦法。それが今度はガンダムが使用している。
『警告する。死にたくなければ引け。以上だ』
そしてガンダムの十字架が背中に回り込む。十字架の頭側を円の中心にしてグルグルと風車のように回り始める。そして十字架の足の方から大量の赤いビームが放たれた。だがそれらすべては見当違いの方向に飛んでいった。
『なんだよ間抜けが!そんなもん当たるわけが…え?』
そして放たれたビームはガンダムから離れたところで直角に曲がり一斉にハイザックたちに向かう。
『ち!?だがこんな直線攻撃!避けられないはずが!がああ!』
そしてさらにビームはハイザック周辺で直角に曲がる。アビントン機とラグンヒル機以外はすべてコックピットを貫かれて、動きを停止した。
『うそだろ?なんだよいまの!なんだよ!!』
『引けたといっただろう』
そしてもう一度ビームが放たれる。今度もまた二回直角に曲がり、今度はラグンヒル機とアビントン機の両手両足を破壊した。
『きゃあ!?』
『ぐあぁああ!』
そしてガンダムがビームサーベルを抜いてアビントン機に迫っていく。十字架がまるで羽のように背中に展開し、飛ぶさまはまさに天使のようだった。
『母さんは復讐を望まない。ミウもだ。だけどアビントン。お前はここで俺の手で討つ』
ガンダムはアビントン機の頭をサーベルで切り裂いた後、コックビットに手をかけてハッチを引き剥がして中からアビントンを引きずり出して握る。
『や、やめて!やめてくれぇ!!』
『因果が廻ってきたんだ。お前の運命はここでお終いだ』
そしてビームサーベルの出力を落として小さな刃のようにした後に、それを掌から出ているアビントンの頭部に向かってゆっくりと近づける。ラグンヒルは思わず目を反らす。そして再び目を開けると宙に漂う首なしのアビントンの姿だけがあった。
展開していたすべてのハイザックが全滅したことを知り、旗艦のクルーたちは衝撃を受けていた。
「ど、どうしますかアンサラー大佐!」
艦長が慌てふためいている。アンサラーは冷静にそれを睥睨しながら言った。
「尻尾を巻いて逃げたまえ」
そしてアンサラーはブリッジから出ていこうとする。
「大佐!?どちらへ?!」
「殿を務める。それに一人はまだ生き残っているようだしな。回収もしなければならん。ポイントエコーで合流だ」
アンサラーはブリッジを出て、ドックに行った。そして白服のまま愛機のハイザックハイマニューバーに乗り込み、艦から発進した。
凄まじい性能に身震いしそうだった。ジュディケーターガンダム。シーゲル・クラインの、おそらくは絶望から生まれた機体。つくられたのは彼の生前のはずだから、ずいぶんな型落ち機体のはずなのに、この戦力はすごい。
「コーディネーターの総力を結集した機体のはずなのに、なんでこのバクロニムなんだ?」
余りにも物騒なバクロニム。それはシーゲル・クラインの思想を表しているように思えた。彼はコーディネーターに絶望した。そして鎖される未来を憂いた。それを倒すための機体。だけどその思想を俺は単純に受け継ぐ気にはなれなかった。父はプラントに忠誠を捧げて命を捨てた。それを無駄にすることは許されないと思う。コーディネーター社会の結集であるデスティニープランの世界を破壊するなんて大それたことを俺は考えすらしなかったのに。物思いにふける。その時だ。眉間に火花が散るような感覚が走った。
『ユウ・ニニギ。見せてくれないか?君のガンダムの性能とやらを』
近づいてくるのはハイザック・ハイマニューバ。俺は相手のパイロットを知っている。あの時すれ違った、あの金髪の男だろう。やはり再び出会った。そして彼のことを知った。俺はビームサーベルを抜いて、近づいてくるハイザックに向かって、ガンダムを駆る。そして邂逅し俺たちのビームサーベルのつばぜり合いが閃光を宇宙に煌めかせた。
シャアっぽいせりふ入れたかった。
ラグンヒルを殺さなかったのはユウの甘さ。
というか免責をユウにしかしなかった辺り、アンサラーのやつわかってやっていたのマジでおにちく。