甘くて、苦しい。そんな“恋の一歩手前”のおはなし。
ライブの帰り道。
2人きりの帰り道。
これは、恋人じゃない2人の、“恋のような”ひととき。
ライブが終わった帰り道。先輩たちはSTARRYに残って、店長さん達と話してた。
だから…だから今は……私とひとりちゃんだけ………
2人だけの時間……とても大切な…2人だけの………
『き、喜多ちゃん?…えっ、えっとな、なにか、わ、私に落ち度でも…!!??』
慌てて私を…私だけを見つめてくれる…前はそれだけで満足できた……でも……でも今は…もっと…!!
『ううん、なんでもないの…ごめんね?ひとりちゃん。』
『そ、そうですか?それならいいんですけど……あ、あのなにか私にで、出来ることがあれば…!!』
本当に健気で…本当に愛おしい……でもこの気持ちを……この想いを口にしたらきっと……きっと、壊れてしまう……結束バンドも………私とひとりちゃんの関係も……だから、……
だから私は………
『ありがとう、ひとりちゃん!
でも本当に大丈夫!ライブでちょっと疲れただけだから!
』
『そ、そうですか、…良かった…!』
私を…本当に心配してくれてる……!
ごめんなさい…ひとりちゃん………本当はこんなこと…
思うべきじゃないのは分かってる………それでも……
それでも私は………!
今は……今はまだ言えないけど、それでも…これくらいは……
私はひとりちゃんの手を握る。ステージの上でギターをかき鳴らす大好きな手を……
『えっ、き、喜多ちゃん…!?い、いったい、な、なにを!?』
『え~っ?駄目〜?私今日すごく頑張ったから、ご・褒・美欲しいな〜?』
『〜〜〜ッッぅぅぅう、わ、分かりました!!』
ひ、ひとりちゃんが恋人握りを!!??どういう意味なの!?!?そういう意味でいいの!!?いいのよね!?!?ひとりちゃん!!!
……ううん、駄目駄目!ひとりちゃんのことだから絶対、絶対…!そんな意味は………ない……の……?
『こ、これで!喜多ちゃんになにか返せるなら!』
そう…そうよね……ひとりちゃんのことだのもの……私を……気遣っている……だけ………
『えっと、き、喜多ちゃん…?あのなにかお気に召さないことでも…?』
『ううん、なんでもないの!それにしても〜?恋人握りなんて!ひとりちゃんだいたーん!』
『〜〜〜ッッッ!!!す、すみません、い、いますぐにやめますので!!』
『駄〜目!せっかくひとりちゃんが勇気出してしてくれたんだから!駅に着くまでこのまま!ねっ?お願い、ひとりちゃん!』
『〜〜〜ッッッ!!!わ、分かりました、き、喜多ちゃんがそう言うのなら……』
うん、今はこれでいい。私が…私の自己満足でこの関係を壊したくなんてない………だから………だからこのひとりちゃんへの想いは……私の心に閉まっておこう………そう今はまだ…………今だけは…ね?