私、唯尊が実際に体験した事を虚実交えてお話しします。

最後には皆さん、揃ってタイトルコールする事でしょう。

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 ※2025年8月時点で私が投稿した既存の作品とは一切関係ない話である事をお伝えします。


冗談だろッ?肥土美裕也、最低だな!!

 

 戦後から半世紀以上が経ち、やかましい災害通知も、Jアラートのケタタマシイ響きも誰も気にしなくなった時代、平和が日常となって久しい日本国のとある街に、高校3年生の男子学生------䋝田和士は、真昼の太陽が照りつける通学路を重い足取りで歩いていた。

 

 気温は三十度を軽く超え、湿度は70%を上回っている。天気の神様が加湿器でもひっくり返したのかと思うくらい暑かった。

 

帰りたい……心の底からそう思う。

 

 だが帰れば補修を受けられず、不足した単位を取れなくなる。単位が不足している理由は単純明快であり、一学期末の中間テストが受けられなかったからである。

 

 というのも、和士が所属していた柔道部の同級生である肥土美裕也が、地区大会に向け山の麓で行われていた強化合宿の折に、

 

「最高の練習相手を連れて来たぞー」

 

と、どこから連れて来たのか、どうやって連れて来たのか、体長2mを優に超える腹ペコ熊を宿泊地に招いたのだ。

 

 そこから先は熊と柔道部員達の決死の鬼ごっこの始まりである。最終的に猟友会の人間に熊は捕らえられたものの、和士を含む柔道部員28名全員が全治1ヶ月以上の重症を負い入院。退院した頃には中間テストなんて遥か昔に終わっていた。ついでに言うとその後の柔道部は、顧問がマルチ商法に関わっていたのがバレて廃部となり、和士たち部員はめでたく早期引退となった。

 

 そんな回想をしながら我らが母校、公立日ノ和高校に辿り着く。校内に入ると壁のひび割れ、天井のシミ、その他あちこちの塗装が剥げ、漆喰も酷い。創立60年を迎えるこの高校だが、そろそろ新しく改装してもいい頃合いだ。にもかかわらずトイレすら工事される気配がない。「地震がきたら潰れるかもなぁ…」と以前担任の教師が冗談混じりにボヤいていたが、あながち間違いでもない気がする。

 

 教室、3年3組のドアを開けると、猛烈な熱気が和士を襲った。クーラーが壊れていたのだ。

 

 ゲンナリしながら自分の席に着く。隣の席にはつい1ヶ月前まで交際していた女子生徒、小野宮胡春が暑さで失神した様に机に突っ伏していた。

 

 和士はそれを見て、彼女が自分にフリードリヒ・ニーチェの『この人を見よ』を読む事をしきりに勧めてきたうざったらしい女である事を思い返す。ついでに言えばジークムント・フロイトの『トーテムとタブー』を押し付ける様に勧めてきた事も、別れた原因の一つだ。

 

 なぜ理系である自分に哲学や心理学に偏りまくった本をひたすら押し付けてきたのか、和士には最後まで分からなかった。

 

 そして、和士の目の前の席には奴がいた。自分がここにくる羽目になった『腹ペコ熊さんとのドキ♡ドキ♡リアル鬼ごっこ』を引き起こした張本人、肥土美裕也がこちらを振り向き、屈託のない笑顔で「おはよう!」と挨拶をしてくる。奴の顔面の皮を剥ぎ取りたくなった。

 

 さて、そんな自分の欲望の為なら他人に幾らでも被害を出させる事を良しとする最低男を尻目に、教室のドアから担任教師が入ってくる。

 

 バツイチで頭髪をハゲ散らかし、おまけに極度の肥満。生徒たちからは『ハゲ』だの『ハゲ山』だのとあだ名をつけられた挙句、一番悲惨だったのは本名すら校内の全員から忘れ去られた事だ。そんな哀れな高校教師は、教卓に着くと、朝の挨拶も程々に、重要な連絡事項を説明した。

 

「いいか。肥土美が校舎の電気室を使ってタイムマシンを作るなんてバカなマネしたせいで電気室が爆発炎上、補修の間はずっとクーラーが使えない。そして補修で使う課題類も肥土美のせいで全て燃えた。今急いでプリントし直しているが、かなりの時間を要するから、3日の予定だった補修は6日に延長された。暑いと思うが頑張ってくれ」

 

 その瞬間、クラスにいる全員が裕也に視線を向けた。この場にいる25名が裕也の業によってここに来る羽目になった者たちである。

 

想いはひとつだった。

 

「「「冗談だろッ?肥土美裕也、最低だな!!」」」

 

 

 


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