【第五章 魔法少女アンジュソニアがスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった   作:初雪空

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元凶の女子2人を調べるため、キャンパスライフ♪
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第61話 陽キャだけが、青春を楽しめる!?

「酷いよ、忘れてくるなんて!」

 

 ハンドバッグの中から文句を言った妖精のフルールを見下ろした火野平(ひのひら)翔花(とか)は、息を吐いた。

 

「今度は、持って帰るわよ」

 

 安くない買い物をした直後に、同じものを買う。

 

 スイーツが入った箱を置き忘れたとはいえ、痛い出費だ。

 

 それでなくても、同じ行為を繰り返すのは、大きなストレス!

 

 しかし、魔法少女にしてくれたうえ、小さな友人であるフルールを怒らせた以上、選択の余地はない。

 

(しばらく、節約しないと……)

 

 そう思いつつ、前に訪れた菓子店へ。

 

「いらっしゃいませー!」

 

 ひんやりした空気を感じつつ、ショーケースの中にケーキが並ぶ店内へ――

 

 視線を感じて、立ち止まる。

 

 イートインスペースのほうを向けば、見覚えのある黒髪ツインテール。

 

 赤いルビーのような目が、翔花を見据える。

 

 すぐに残りを食べて、トレイを持ちながら、立ち上がった。

 

 トレイを置き、まっすぐ翔花の前へ。

 

「ごきげんよう……」

 

「やる気?」

 

 すぐに変身できるよう、身構える。

 

 けれど、水鏡(すいきょう)アレーテは首を横に振った。

 

「いいえ……。そちらがやる気なら、構いませんけど?」

 

 見つめ合う、女子2人。

 

 先に息を吐いたのは、翔花だった。

 

「何の用?」

 

「情報交換です! わたくし達とあなたの獲物は、おそらく一緒……。あなたが私たちを恨んでいようと、今は協力したほうがいいのでは?」

 

 笑顔のアレーテに対して、苛立たしげに足を踏み鳴らす翔花。

 

 ハンドバッグの中から、フルールが指摘。

 

「まずは、太陽東(たいようひがし)高校を片付けよう? 私たちだけじゃ、手が足りない」

 

 沈黙。

 

 翔花は、迷った末に、肩を上下させる。

 

「いいわ! どうするつもり?」

 

 店内で注目されたまま、ぐるりと見回したアレーテは、肩をすくめる。

 

 冷蔵のショーケースを見たまま、提案する。

 

「持ち帰りで、買いません? 奢りますよ?」

 

「……そうね」

 

 視線をそらしたギャラリーを気にしない翔花は、同じくショーケースを眺める。

 

 

 外にある公共施設みたいなテーブルに陣取った女子2人が、プラスチックのフォークで箱から食べる。

 

 テーブルに座ったフルールも、笑顔で口へ運ぶ。

 

 翔花が、口火を切る。

 

「そちらは、どこまで把握しているの?」

 

「伊沙花(いさか)市の太陽東で、調子に乗っている陽キャがいることは……」

 

 アレーテの返事に、翔花は頷く。

 

「あいつは、私と同じクラスにいる……。下手に刺激しないため、すぐ不登校になったけど」

 

「わたくし達は、太陽東に絡んでいません! そちらで動きがあったら、任意に支援するということで?」

 

 スマホを取り出した翔花は、テーブル越しにアレーテを見つめる。

 

「それしか、ないわね? 連絡先の交換を……」

 

 

 ◇

 

 

 まさに、青春だ!

 

 太陽東高校の敷地に入った男子は、登校してくる生徒たちを見る。

 

「おはよう、差玖(さく)!」

 

 女子の声に、そちらを向く。

 

 シャンプーのCMに出そうな髪をなびかせた女子だ。

 

 例えるなら、ヒロインA。

 

 駆け寄ったヒロインAが、笑顔で言う。

 

「今日は、早いね?」

「……今日も、だろ?」

 

 2人で笑えば、いつものグループが集まってくる。

 

「おはよ!」

「……はえーな、おい?」

 

「お前らが、おせーんだよ!」

 

 いかにも陽キャな彼は、百舐目(ひゃくなめ)差玖。

 

 この高校を代表するようなイキりだが、周りの生徒は横目で見るぐらい。

 

 男女が交ざったグループは、騒がしいまま、教室へ。

 

 

 昼休みに、差玖は担任の男に呼ばれた。

 

 禁煙の敷地内であるのに煙草を吸いつつ、一方的に告げる。

 

「お前も知っているだろうが、転校した火野平が学校に来ない……。何とか、してくれ」

 

「それ、担任の仕事でしょ? 俺には、関係ない――」

「お前でなければ、ダメなんだ! 完璧な陽キャのお前でなければ……」

 

 真剣な声音に、差玖は肩をすくめる。

 

「何をしろと?」

 

「お前、火野平の連絡先を知っているか?」

 

 担任のツッコミに、首を横に振る差玖。

 

 煙と共に息を吐いた担任が、スマホを取り出す。

 

「火野平の住所を教えるから、後は何とかしろ」

 

「そんな、ご無体な……。ハイハイ! 分かりました!」

 

 

 教室に戻れば、ヒロインAを始めとするグループが集まってくる。

 

「何だったの?」

「……不登校の引き籠りを説得しろって」

 

 一瞬だけ表情を変えたヒロインAは、すぐ満面の笑みに。

 

「じゃあ、私も行く! 差玖だけじゃ、その子に何をするか不安だし?」

 

「ハハハ! 言ったな、お前? まあ、助かるけど」

 

「そういえば――」

 

 周りの男女も、中身のない会話で加わった。

 

 その中心にいる差玖は、しみじみと実感する。

 

(陽キャだからこそ、青春を楽しめるんだ!)

 

 毎日が、楽しい。

 

 気の合う仲間たちは、男女問わず、他校と比べても見劣りしない面々ばかり。

 

 思い返してみれば、転校初日の火野平翔花は緊張していた。

 

「誘ってやれば、良かったかな?」

「……差玖は、優しすぎ!」

 

 ヒロインAが、すぐに突っ込んだ。

 

 ため息をついた彼女は、しぶしぶ言う。

 

「そいつの自宅へ行くんだったら、早くしよ? 引き籠りの説得なんて罰ゲーム、とっとと終わらせたいし」




過去作は、こちらです!
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