【第五章 魔法少女アンジュソニアがスタート!】宇宙の神秘を詰め込まれてオカルト探偵になった 作:初雪空
「酷いよ、忘れてくるなんて!」
ハンドバッグの中から文句を言った妖精のフルールを見下ろした
「今度は、持って帰るわよ」
安くない買い物をした直後に、同じものを買う。
スイーツが入った箱を置き忘れたとはいえ、痛い出費だ。
それでなくても、同じ行為を繰り返すのは、大きなストレス!
しかし、魔法少女にしてくれたうえ、小さな友人であるフルールを怒らせた以上、選択の余地はない。
(しばらく、節約しないと……)
そう思いつつ、前に訪れた菓子店へ。
「いらっしゃいませー!」
ひんやりした空気を感じつつ、ショーケースの中にケーキが並ぶ店内へ――
視線を感じて、立ち止まる。
イートインスペースのほうを向けば、見覚えのある黒髪ツインテール。
赤いルビーのような目が、翔花を見据える。
すぐに残りを食べて、トレイを持ちながら、立ち上がった。
トレイを置き、まっすぐ翔花の前へ。
「ごきげんよう……」
「やる気?」
すぐに変身できるよう、身構える。
けれど、
「いいえ……。そちらがやる気なら、構いませんけど?」
見つめ合う、女子2人。
先に息を吐いたのは、翔花だった。
「何の用?」
「情報交換です! わたくし達とあなたの獲物は、おそらく一緒……。あなたが私たちを恨んでいようと、今は協力したほうがいいのでは?」
笑顔のアレーテに対して、苛立たしげに足を踏み鳴らす翔花。
ハンドバッグの中から、フルールが指摘。
「まずは、
沈黙。
翔花は、迷った末に、肩を上下させる。
「いいわ! どうするつもり?」
店内で注目されたまま、ぐるりと見回したアレーテは、肩をすくめる。
冷蔵のショーケースを見たまま、提案する。
「持ち帰りで、買いません? 奢りますよ?」
「……そうね」
視線をそらしたギャラリーを気にしない翔花は、同じくショーケースを眺める。
外にある公共施設みたいなテーブルに陣取った女子2人が、プラスチックのフォークで箱から食べる。
テーブルに座ったフルールも、笑顔で口へ運ぶ。
翔花が、口火を切る。
「そちらは、どこまで把握しているの?」
「
アレーテの返事に、翔花は頷く。
「あいつは、私と同じクラスにいる……。下手に刺激しないため、すぐ不登校になったけど」
「わたくし達は、太陽東に絡んでいません! そちらで動きがあったら、任意に支援するということで?」
スマホを取り出した翔花は、テーブル越しにアレーテを見つめる。
「それしか、ないわね? 連絡先の交換を……」
◇
まさに、青春だ!
太陽東高校の敷地に入った男子は、登校してくる生徒たちを見る。
「おはよう、
女子の声に、そちらを向く。
シャンプーのCMに出そうな髪をなびかせた女子だ。
例えるなら、ヒロインA。
駆け寄ったヒロインAが、笑顔で言う。
「今日は、早いね?」
「……今日も、だろ?」
2人で笑えば、いつものグループが集まってくる。
「おはよ!」
「……はえーな、おい?」
「お前らが、おせーんだよ!」
いかにも陽キャな彼は、
この高校を代表するようなイキりだが、周りの生徒は横目で見るぐらい。
男女が交ざったグループは、騒がしいまま、教室へ。
昼休みに、差玖は担任の男に呼ばれた。
禁煙の敷地内であるのに煙草を吸いつつ、一方的に告げる。
「お前も知っているだろうが、転校した火野平が学校に来ない……。何とか、してくれ」
「それ、担任の仕事でしょ? 俺には、関係ない――」
「お前でなければ、ダメなんだ! 完璧な陽キャのお前でなければ……」
真剣な声音に、差玖は肩をすくめる。
「何をしろと?」
「お前、火野平の連絡先を知っているか?」
担任のツッコミに、首を横に振る差玖。
煙と共に息を吐いた担任が、スマホを取り出す。
「火野平の住所を教えるから、後は何とかしろ」
「そんな、ご無体な……。ハイハイ! 分かりました!」
教室に戻れば、ヒロインAを始めとするグループが集まってくる。
「何だったの?」
「……不登校の引き籠りを説得しろって」
一瞬だけ表情を変えたヒロインAは、すぐ満面の笑みに。
「じゃあ、私も行く! 差玖だけじゃ、その子に何をするか不安だし?」
「ハハハ! 言ったな、お前? まあ、助かるけど」
「そういえば――」
周りの男女も、中身のない会話で加わった。
その中心にいる差玖は、しみじみと実感する。
(陽キャだからこそ、青春を楽しめるんだ!)
毎日が、楽しい。
気の合う仲間たちは、男女問わず、他校と比べても見劣りしない面々ばかり。
思い返してみれば、転校初日の火野平翔花は緊張していた。
「誘ってやれば、良かったかな?」
「……差玖は、優しすぎ!」
ヒロインAが、すぐに突っ込んだ。
ため息をついた彼女は、しぶしぶ言う。
「そいつの自宅へ行くんだったら、早くしよ? 引き籠りの説得なんて罰ゲーム、とっとと終わらせたいし」