Fate/Fantasia edge   作:わがし狂太郎

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29話

 

 「ええー!?それはちょっと違ってるわねえ。だいぶ言葉足らずというか、説明不足というか」

 

 と桂珍喬は苦笑いしながらアルフォンスに言った。

 

 「一ツ星党員って、犯罪者の階級じゃあないんですか?え?そう聞いてたんだけど」

 「犯罪者()いる、ね。厳密には違うものよ。正しくは『党の管理、庇護下にある人たち』の階級、なのよ。例えば知能に障害があるとか、そういった方たちは公的な支援を適切に受けられるようする必要があるでしょう?だからこの階級になるの。必ずしも罪を犯した者だけがその階級になるわけじゃないわ」

 「じゃあ元嶺さんは?」

 「そうよ。犯罪者なわけじゃない」

 「ワケありだな」

 

 横で聞いていたセイバーがぽつりと言う。

 

 「犯罪者じゃねえが、なにか障害があるって感じでもなかったろ。つまり思想的に異分子とかじゃねえの。それこそコレクトネスとかいうやつ」

 「はっはっは。全っ然違うねー」

 

 少し前を歩く星晶が言った。

 

 「セイバーさん、それにアルフォンスさんも」

 

 と淑女らしく改まって桂珍喬は言う。

 

 「せいちゃんはね、普通の人なの。誰とも変わらない、普通の人。競い合う間柄かもしれないけれど、そこは分かって接してあげてね」

 

 そこまで言うと桂珍喬は再びワニらしからぬ人懐こい笑顔を浮かべて言う。

 

 「ああ、それで、まだ教えてなかったわよね、コレクトネスについて。コレクトネスって言うのはテロリストグループのことなのよ。平たく言えばだけどね。党もそう指定しているけれど、本当はそんな簡単なことじゃないのよね。彼らは水を管理している党に、もっと水を配れと要求しているの。でも、勿論水は無限にあるわけじゃないから、分配を党首が考えた上で適切に配ってくれているの。で、彼らはそれが気に入らない。もっと公平に、沢山の人たちに配れるはずだって怒ってるの。私としては、彼らの言い分も分かる気がするし、だからって強引なやり方はどうかと思うわ。昔はアンジョっていうテロリストがいたらしいけど、もう今は居ないから、この街における最大最悪の危険集団ってことになっているわ、一応ね。とにかく見かけたら近寄らないことよ。わかったかしら?」

 

 ぶっ飛ばしゃいいんじゃ?とセイバーが口を開きかけた時

 

 「配水車が通る!道を開けろ!」

 

 という大声が背後からした。

 振り返ってみると軍人らしい詰襟の群青色の服を着た男がいて、何度も同じ事を叫んでいる。彼の背後から現れたのは巨大な陸亀。亀には家の柱ほどの太さもある縄がくくりつけられていて、なにかを引っ張っているようだ。

 桂珍喬に促されるままに、アルフォンスとセイバーは道の端に寄ると亀が通り過ぎるのを待った。体高は三メートル程だが、体長は七メートル近くもある巨大な亀が通り過ぎるとその亀に引かれていた、これまた巨大な大瓶を載せた二輪車が現れた。車輪ですら人間族二人分ほどはある巨大な二輪車なので、アルフォンスには瓶になにが入っているのかは視認できなかったが、桂珍喬が言うにはあの瓶の中に水が入っているのだという。

 

 「東区は五ツ星の方が多く住んでらっしゃるから、今回も大瓶が運ばれてきたのね」

 

 と桂珍喬は神妙なワニ顔になってぽつりと呟いた。

 丁度、その時であった。

 二輪車の後方がにわかにざわめいたかと思うと、銃声とともに何頭ものラクダが現れた。ラクダの上には何人もの人が乗り、各々が手に持つ武器を掲げて何事かを叫んでいる。

 

 「水は天下万民のものだ!占有する清河党から水を解放するため、我々コレクトネスがやってきた!」

 

 わあ、と道端に退いていた民衆が声を上げる。それは歓喜ばかりではなかったが喜びの声のほうが優勢のようだった。歓声と砂埃で混沌とした中、『コレクトネス』と名乗った軍団は手早い動きで亀から縄を外し、乗ってきたラクダへと付け替え始めた。

 

 「コレクトネス!この水はこの街のものだ!奪うことは許さない!」

 

 亀を先導していた軍人が、剣を手にして叫んだ。

 リーダーらしい男がラクダの上から見下ろして応える。

 

 「へえ。この街のものねえ。にしちゃあ、みんなにはいきわたってないんじゃねえの?」

 「そんなことはない!党は皆に水を配っている!」

 「本当にそう思ってんのか?ええ?自分の脳みそでちゃんと考えて、そう言ってんのか?」

 「当然だ!これまでも欠かさず水は配給している!今もだ!それを横取りしようなど、このテロリストどもめ!」

 「テロリストだあ?やめてくれよな、誹謗中傷は。別に俺たちはなにも悪いこたしてねえぞ?テロリストなんかじゃねえ」

 「テロリストであり、悪だろう!軍に、党に忠誠を誓っている限り、正義は私にあるのだ!」

 「正義がなんだと口論するつもりはない。あんたみたいな考えなしならなおさらな。とりあえずこれは俺たちがいただいた。後は好きにさせてもらうさ」

 「待て!」

 

 と叫んで軍人は剣を持って突撃し始めた。コレクトネスの何人かが統率の取れた動きで、リーダーの男を守ろうと立ち塞がる。だが、リーダーの男はそれを退け、自ら剣を握って迎え撃った。

 一撃、剣が打ち合う。

 二撃、リーダーの男はラクダ上から素早く剣を横へ払うと、軍人の剣を弾き飛ばし飛ばした。宙を舞った剣は綺麗に地面へ突き刺さった。

 リーダーの男は軍人の喉元に剣先を突き付けたが、にやりと笑うと剣を鞘に戻し

 

 「この荷車は俺たちのものとなった!野郎ども喜べ!叫べ!」

 

 とラクダを旋回させながら叫んだ。

 大喝采に大歓声。まるで劇場のようだ。

 

 「頭目(リーダー)!チンタラしてないでさっさとズラかった方がいいだろ!?」

 

 二輪車から女エルフが叫んだ。エルフらしからぬ巨躯にはち切れんばかりの筋肉。大斧を背負った女傑といった風貌だ。顎だって二つに割れている。

 

 「トットォ。準備は出来たのか?」

 「とっくだよ!」

 「よし!野郎ども!撤退だ!モタモタしてる奴は置いていけ!」

 

 おう、といくつもの返事が起こると、何頭ものラクダが亀の代わりに二輪車を引き出した。いつの間にやら二輪車の上にはコレクトネスの構成員が多数乗っていて、彼らは水風船を地上へとばら撒き始めた。それを見た群衆は色めき立って風船に群がり、道は混沌に満ちた。

 

 「ま、待て!」

 

 と軍人は叫んだものの、群衆の混沌の中でかき消されてしまった。砂埃を上げてコレクトネスが去っていった路上には破れた風船と、歓喜と悲嘆に渦巻く民衆が残された。

 

 「おい、今のは」

 

 とセイバーはコレクトネスが去っていった方角をぼんやりと見つめながら言った。

 

 「ええ」

 

 と桂珍喬はその声に応えて言う。

 

 「今のがコレクトネス。水を奪っていくテロリスト、とされている方々。でも、あなたたちついていたわねえ。リーダーのバーナーまで見られるなんて」

 「バーナー?今のラクダに乗ってたヤツはバーナーって言うのか?」

 「ええ。そうよ。コレクトネスのリーダー、バーナー。……もしかして、お知り合いかしら?」

 「いや。ちげえ。いや、ちがうこともねえが。いや、やっぱ知り合いって柄じゃあねえな。なあ、マスター」

 

 アルフォンスはあんぐりと口を開けながら頷いた。

 コレクトネスのリーダーと言われた男、バーナーは間違いなく街の外で会った大筒の男だったからである。

 

 

 熱狂と混沌に満ち満ちた民衆も疎らになった頃、二人の軍人がやってきた。どうやら騒ぎを駆けつけてやってきたらしいその軍人を見るなり、星晶はそうっとセイバーの背後に隠れた。桂珍喬も顔を強張らせているのがアルフォンスの横目に見えた。軍人のうち、丸眼鏡のエルフの男は先ほどバーナーとやりあった軍人に何事かを聞き、連れ立った部下らしい人間族の女に周囲を調べさせた。地面ばかり見ていたその女は、顔を上げてため息をついたなり桂珍喬と星晶の姿を認めたらしく言った。

 

 「あれ?桂珍喬様に星さん?」

 「おっとこれは桂殿に星中尉。どうしてこんなところに?」

 

 エルフの男も気づいてこちらへやってきた。星晶は小さくげえ、と唸ってセイバーの影から出た。星晶は作り笑いを浮かべ蝋人形のように固まり、黙っているばかりなので桂珍喬が社交的に答えた。

 

 「これは久しぶりです。ロジグマ大尉様。私と星晶さんはたまたま帰ってきたところでしたの」

 「そうでしたか。桂殿と星中尉と言えば巡礼へと旅立ったと聞いておりましたので、どうしてこんな道端でお会いできたのかな、と不思議に思いましたが、たまたまでしたか。それはそれは。それで星中尉?たまたまコレクトネスと接敵したようだが、なにをしていた?」

 

 星中尉とは星晶のことらしい。改まった態度になって星晶は答えた。

 

 「えー、頑張ったんですけどダメでしたー。申し訳ございませーん」

 「頑張った?衣服に汚れた様子は見えないが?」

 「そ、そういうこともあるかもー。あるよね?」

 「私に聞かないでください」

 

 ロジグマの部下である度の強い眼鏡をかけた女軍人はぴしゃりと言った。ロジグマは更に追及する。

 

 「応戦した野中一等卒によると応戦したのは、彼一人だったようだが?」

 「は?……は、ははは」

 「フハハ」

 

 ロジグマと星晶は笑い合うも、互いに目は笑っていなかった。二人ともつん、と黙ってしまったが突き刺すような空気に耐えかねて、星晶は破れかぶれに言った。

 

 「だー、やってませんよ。なーんにもやってませんよーだ。でも、あたいは今日はオフだしー、やんなきゃならないって義務はないしー」

 「軍人たるもの、常在戦場でなくてどうする!全く、減棒ものだぞ星中尉。報告はしっかり上げておくからな」

 「ええー。厳しいねー。クマちゃんはさー。ていうかさー、ララちゃんはどうしたのよ。ララちゃんがしっかり門を防いでくれればよかった話なのではー?」

 「く、クマちゃん……。全く、上下関係とは何たるべきか、覚えるべきだぞ星中尉。ララ大佐殿は『夜勤明けはお肌に悪いのでスキンケアへ行くから半日休み!』とやらで不在だった。こちらも党への報告へ回す」

 「はっはっは。ララちゃんらしいねー。安心したー」

 「こっちは頭が痛いよ。報告する身にもなってみなさいよ」

 

 と言いながらさらさらと何かを書き上げたロジグマは、紙切れを一枚部下の女に渡した。

 

 「さて、私はそろそろ次へ行くよ。コレクトネスは別の場所にも現れたとの報告を受けているからね」

 「ふーん。今回さー、結構大規模にやられたんだねー。こりゃ大変だー。おつかれさん」

 「何を言っている?」

 

 と呑気な星晶を眼鏡越しに睨めつけてロジグマは言う。

 

 「星中尉にはここの後始末を命じる。ミアに渡した指令書に事細かな詳細があるから、彼女の指示に従うように」

 「ええ?そんなー」

 「はい!では先ずは、そこで土ごと草を食ってる手持ち無沙汰な砂陸大亀(タトス)を亀舎に戻します」

 

 と早速任務を受け継いだ部下、ミアが星晶に指令を下した。

 

 「ちょちょちょ。早速ー?まだ、心の準備がねー」

 「はい。早速です。『野中一等卒とミア、それに星中尉で行うべし』と書かれてます。頑張りましょうね」

 「しっかりやるんだぞ、星中尉」

 「うわー。クマちゃん、スパルタだ。パワハラだー」

 

 と星晶は荷物をまとめて小脇に抱えたロジグマに文句を垂れた。

 

 「なんとでも言うが良い。せいぜい頑張るんだな」

 「うわーん。桂ちゃんも手伝ってよー」

 

 と星晶がそう言うと、桂珍喬は苦笑いを浮かべながら

 

 「仕方ないわねえ」

 

 と言うのだった。

 

 「悪いんだけど、案内はここまでで良いかしら。エデンへ行くにはここを真っ直ぐ行けばいいから、もう大丈夫だと思うわ」

 

 と今度はアルフォンスたちに向き直り、ワニの笑顔で桂珍喬はそう言った。

 アルフォンスは断る言葉を持たなかった。いつの間にやら彼女たちが案内をかっていたが故に。

 

  

 数十日前。

 地図の上を子供が落書きしたかのような無秩序さで、辺り一面の樹木は薙ぎ倒されている。

 樹木に混じって、地に転がる無数のゴブリンたち。

 息も絶え絶え、血を流しているのはまだ良い方で、大方の者たちは息はなく、腕や足が残っている方が希少だ。軍団を率いていたリーダー格らしいゴブリンも両腕両脚を落とされて、木の幹を背にすることでなんとか前方を見ることができていた。

 

 「ヤル相手ヲ……間違エ……タカ」

 「今更言ったところで、なんとなるわけでもなかろうて」

 

 と弱音を吐くリーダーゴブリンに対し、人間族らしい見た目の女が言う。黄と紺、それに派手な緑色を使ったローブを羽織ったその女は片手に握ったバオバブ製の杖を振り上げて、何事かを呟いた。杖を円形に回し己の眼前に火の輪を作り出すと、思い切り息を吸ってぷっと吐き出した。押し出された火は矢となって前方へ飛び、前方にいる一人の男へ目掛けて飛んでいく。

 男は腕を組んだままだ。

 避ける素振りもない。

 ──見るからに隙だらけ。普通であれば必中であるが。

 女は思いながら男の挙動を見る。

 男は動かない。

 そして、火の矢はとうとう男の目の前に到達した。

 ──命中。

 そう女が思った瞬間、突如として男の周囲に油膜のような虹色の靄が湧いたかと思うとそこから一本の矢が飛び出してきた。突然現れた矢は火の矢とぶつかり、火の矢は火の粉となって地に落ちた。

 

 「ちっ。仕組みが全くわからんの!」

 

 女は叫びながらその場を素早く離れる。

 

 「アサシン!なんとかせよ!」

 

 と女が叫ぶと同時に男の背後から、緑色の肌を持った人間、のようなものが現れた。ようなもの(・・・・・)と表したのは明らかにその者が人間ではないからだ。四肢があり、見た目は人間と似てはいるものの、頭からは角が二つ生え、目は頭部の中央に一つしかなかった。ゴブリンでもなく、その他どの部族でもなかった。異形と表現するにふさわしい。

 緑の異形は掌に小さなつむじ風を起こすと、掌底の要領で男めがけて掌を放つ。が、その腕もまた虚空より現れた矢によって下方へと叩き落とされると、異形はたまらず一回転して地に転んだ。地の底からの呼び声のような、この世のものとは思えない声で異形は喚く。抑えた片腕は剣山のように一面が矢だらけになっていた。

 

 「痴れ者めらが。これよりは我が愛を賜わす。咽びながら拝受せよ。『ザババ』」

 

 と男、つまりはライダーが言うとぬっと地面から突き出た漆黒の巨大な腕が、持っていた鎚矛で異形の体を何度も叩き潰した。骨が折れる音がし、異形は頭を潰されて頭蓋や歯が飛び散ると絶命したのか、黒い塵になって消えてしまった。

 

 「なんちゅう奴じゃ。こんの化け物めが!」

 「化生にあらず、帝王である」

 

 と言ってライダーが視線を向けると、黒い腕は女めがけて鎚矛を振り下ろす。女がすばやく前転をすると、すんでのところで鎚矛は地面を叩き穿った。荒ぶる呼吸。女のローブは激しく上下し、身体じゅうの毛穴から滝汗が噴き出していた。身体全体が鉛にでもなったかのように重く、肺は綿でも詰められたかのように苦しい。

 ──次は避けられまい。

 そう女が思うと同時に黒い腕が振りかぶる。

 生命を叩き潰す、その凶悪な光を持って振り下ろされる。女はゆっくりと痛覚を感じながら地面ごと穿たれた。石片が飛び散り、女は黒い靄となって消滅した。

 

 「些末事は済んだ。何奴だ?拝謁を赦す。出てくるが良い」

 

 とライダーは疎らに残った草木の塊に顔を向けて言葉を放った。一拍、音のない時間が流れた後、木々の間から一人の男が姿を現した。

 

 「流石は聡明なるサルゴン王。戦闘も圧倒的でありながら、私の存在に気づくとは」

 

 真っ赤な総髪の男はそう言った。後髪は束ねられて腰のあたりまで伸びている。唇は薄く頬はややこけているが、特に目を引くのはその眼差し。鷹のように鋭い眼差しである。

 

 「お前もいい加減出てきたらどうだ?六平寺杏介。この戦いはお前の勝利だ」

 

 男がそう言ったので、六平寺は岩の陰からケロ吉とともに姿を現した。

 

 「おめえさ一体何者だべ?まさか、さっきのサーヴァントのマスターだべか」

 「心配はいらない。俺たち魔法使いと呼ばれる者はマスターにはなれない」

 「魔法使い?んなら、おめえさもシルビアさんのお仲間だべか」

 「あんな落伍者と一緒にするな。俺はトンマーゾ。トンマーゾ・ルカーニアだ」

 「聞いたごどないべ」

 「だろうな。そもそも俺たちは表立って活動すべき者ではない。あの出来損ないが節操ないだけだ」

 

 トンマーゾはそう言うと、六平寺を猛禽類のような眼差しで睨めつけて尋ねた。

 

 「一つ訊く。お前の望みはなんだ?」

 「おらか?おらは村のみんなのために……」

 「違う。お前の望みはそんなものではないだろう。俺が聞いているのはお前自身の望みだ。参加したときの建前ではない」

 

 六平寺は下唇を噛み、少し苦しそうな顔つきになるとしばらく黙念した。一呼吸置いて六平寺は決心よりも諦観の強い口調で言った。

 

 「おらは、……おらは自分の祖先がなんだったのか、それが知りたい」

 「まだ踏み込みが甘いな」

 「?」

 「お前は探究者だ。根からの探究者だ。自分の先祖などではまだ甘い。広く、広範に知りたいはずだ。自分たちのルーツを、人間族とはなにかを」

 「!あ、あんた、なにか知ってとるんべか?」

 「人間族は他部族とは一線を画す存在だ。全ての基礎となり、根底となる存在である。お前はその人間族の中でも更に特別な一族の中から選ばれた存在だ。知る権利はあるだろう」

 「教えてけれ!あんた、あんた、何を知ってんべさ」

 「俺が話すより適切なものがある。宝石谷は知っているか?」

 「名前は、聞いたことあんべな」

 「宝石谷の近くに古代の工房がある。大昔の人間が魔術に憧れ取り憑かれ出来た無用の長物だが、お前には価値があるだろう。一見するとただの洞穴だが、ドラゴンの気配のする結界が貼られている。それで識別しろ。結界といっても防護の術は施されてはいない、そのまま押し入れ」

 「ほへー。いんやー、いきなり現れてどんな人か思ったけど、面白えこと教えてくれてありがとさんだべ」

 「礼には及ばない。お前を思ってやったことではない。これは俺がお前は知っておくべきという俺の理論からやった行動に過ぎない。いわばエゴだ」

 

 と言いながらトンマーゾは背を向けた。ゆっくりとした足取りで、あまりにも無防備な背中を晒しているので、六平寺は言う。

 

 「王様や?どうすんべ?」

 「あの男は殺せぬ」

 

 ライダーは真っ直ぐな瞳で、去りゆく背を見つめながら言った。

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