Fate/Fantasia edge   作:わがし狂太郎

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3話

 

 「「聖杯巡礼?」」

 

 「なんじゃ、二人揃ってクソ気色の悪い」

 「いや」

 

 とクー・フーリンことセイバーは首をすくめながら言う。

 

 「現界するにあたって色々と知識が叩き込まれちゃいるが、そいつに関しちゃてんでわからねえもんでよ」

 「……なるほどのう。丁度よい機会じゃし、説明しておくかの」

 

 シルビアはそう言うとふうっと煙を吐き出した。紫煙は森林の中を彷徨いつつ、一塊となっている。すると煙が意思を持つかのように形を変え大きな龍と小さな人を描き出した。彼女の説明を補佐するように煙は次から次へと形を変えていく。

 

 「まず、我々は厄災に対抗するために力を得ねばならん。サーヴァントがいくら強力と言えど、厄災、それも激甚ともなれば倒し切るのは難しい。そこで古来から存在する魔術装置、いわゆる『聖杯』の力を使って対抗しようと、こういうわけじゃよ。それで、この土地の何処かにある大八禮場と呼ばれる特に優れた龍脈、龍脈とは土地そのものが持つ魔力だまりのことじゃが、その大八禮場を巡って聖杯の端末でもある『小型魔力貯蓄盃(フラスコ)』に魔力を貯めることを巡礼と呼んでおる。その貯めた魔力をサーヴァントに使うなり、本人の強化に使うなりして厄災に立ち向かうわけじゃな」

 「フラスコって言うのはどんななの?」

 

 アルフォンスは尋ねる。

 するとシルビアは、彼に向かって指輪を投げた。

 アルフォンスが上手につかみ取りそれを見ると、白色をした何の変哲もない指輪だった。

 

 「それがフラスコじゃ。魔力を貯めるごとに色を変える。今はなにも溜まっておらんから白色をしておる」

 

 アルフォンスはセイバーにも指輪を見せたが、彼は激しく頭を振った。どうやら、何かトラウマでもあるらしかった。

 

 「それを持って九つの禮場を抑えるわけじゃが、なに、全てを回る必要はない。その前にフラスコは満水になる」

 「ん?ちょっと待て。回るその禮場つうの?はいくつある?」

 「なに?大八禮場なんじゃから八つに決まっておろう?」

 「……へえ。そうかい」

 

 と言いながらセイバーは頭の後ろに手を回す。

 

 「その大八禮場ってやつ?を俺達でゆっくり回っていこうっていうのが、この旅の目的のわけだ」

 「本来であれば、それでよいのじゃ。他のマスターとも協力し、魔力を集め厄災に一丸となって立ち向かうこそが聖杯巡礼の本来の姿じゃからの」

 「なんか引っかかる言い方じゃねえの?」

 「そも、聖杯に選ばれるのは七人のマスター。となれば当然サーヴァントも七騎。もちろんフラスコも七つ。じゃがな、厄介なことに一つの大禮場につき一つのフラスコにしか魔力は充填されぬのじゃよ」

 「へえ、つまり後から来たんじゃあ、もう大禮場さんは魔力をくれないってわけだ」

 「左様。そして、先にフラスコを満水にしたものは『主宰』と呼ばれる聖杯の保持者となり強大な魔力を得ることができる。本来、主宰は他のマスターたちを束ね、厄災に対抗するリーダーとしての役割を期待されていたのじゃが、今ではこう喧伝されておる。『主宰になった者の願いは何でも叶う』と」

 「ひゅう」

 

 セイバーは軽く口笛を吹き楽しげに言う。

 

 「つまりは早い者勝ちってわけだ。面白そうじゃねえの」

 「故にのんびり旅をするというわけには、いかぬのよ」

 「へいへい。まあ、のんびりし過ぎも体がなまっちまうわな。それで、俺達はどこに向かってるんだ?大八禮場とやらは場所が割れてんのかい?」

 「大八禮場のうち、場所が固定されているのは『大禮錨』と呼ばれる三つのみ。あとはその時その時によって場所が変わる。じゃが、安心せい。わたしは賢者なれば龍脈の気配は大体わかる。故に、わたしらはこれから大禮場がありそうな、月群族の戸狩集落へと向かう」

 「え?なんだって?月群族だって?!」

 

 突然叫ぶアルフォンス。顔には恐怖の色が浮かび震えた唇を手で抑えている。

 

 「どうしたよ?マスター。月群族ってのはそんなにやばい奴らなのか?」

 「月群族っていうのは、半人半獣の部族のことだよ。彼らは獣の血が混じっているから非常に好戦的で、野蛮で、おっかないとされている部族なんだ」

 

 シルビアはその話を聞きながら、麦藁帽下の顔を段々としかめていき、おもむろにパイプを咥えると吐いた煙をアルフォンスにぶつけた。

 

 「うわっぷ!」

 「アルよ。お主なあ、もう少し村の外に出たほうが良いぞ。月群族とはそのような部族ではない」

 「だとすると」

 

 とセイバーはシルビアに問う。

 

 「月群族ってのはどんな部族なんだ?というよりだな、マスターのビコト族?ってのもよくわからねえんだが?」

 「良いじゃろう」

 

 と言ってシルビアは煙を吐く。もくもくと煙が漂い、人型をなしていく。

 

 「この世界の霊長とも呼べる七つの部族について語り聞かせよう」

 「「七つ?」」

 「そうじゃ」

 「本当に七なの?六じゃなくて?」

 

 アルフォンスは首を傾げた。

 

 「お主が六と勘違いしているのも仕方あるまい。そこらも含めて今から話しをしよう」

 

 では、と言いながらシルビアは煙混じりに語りだす。

 

 「人間族。彼らは見た目はわたしみたいな感じじゃが、肌の色は白色だけでなく、黄色かったり黒かったりもする。一番の特徴は……ふむ、あんまり思いつかんが、そうじゃのう。文化的多様さかの。同じ部族で風習がこれでもかと異なるんじゃ。あと、寿命は一〇〇年も生きれば長い方じゃな」

 

 もくもくと煙が形を変える。今は小人のような形だ。

 

 「次にビコト族。そこのアルが典型的じゃが、背が低のが第一の特徴。そしてすばしっこくって寿命が長い。彼らはだいたい三〇〇年は生きるからのう」

 

 煙は耳の尖った人間のような形になった。背は先程よりも高い。

 

 「お次はエルフ族じゃ。彼らの身体的特徴は耳が尖っていること。あとの見た目はほぼ人間族と同じじゃな。エルフの特に優れているのはその魔術的素養で、優秀な者だと人の感情を目で見たりすることができる。彼らに対して嘘をつくなら注意することじゃな」

 

 またも煙は小人のような形になる。しかし今度の形はいささかがっしりした体型のようだ。

 

 「四つ目がドワーフ族。彼らもビコト族のように背が低いが、身体がとにかく頑丈でな。腕っぷしが強く、手先が器用なものが多い。金属加工を生業にしている者が数多いので、武器の手入れなら彼らに任せることじゃ」

 

 今度は煙が大きな塊となって人型を成した。

 

 「次にギガンテ族。彼らの特徴はなんと言ってもその大きさじゃ。平均身長が三メートルを超えておるから一目でわかる。争いごとを好まぬ性質じゃが、やるとなれば彼らに立ち向かえるものはおらんじゃろう。機嫌をとれ、とは言わんが、彼らと接する時には慎重にな」

 

 それで、とシルビアはアルフォンスを見ながら言う。

 

 「件の月群族じゃが、彼らは動物的特徴を持った部族じゃ。確かに下半身が馬、上半身が人間というようなものもおるから半人半獣も間違いではないが、正確ではない。背丈や体つきは人間族と同じじゃが全身の肌が魚のウロコ、という者たちもいるくらじゃからのう。まあ、多種多様、千差万別が彼らの特徴じゃな。故に、獰猛な性格を有する者がいないとは言わんが、全員が野蛮で好戦的というのは違う。性質は他の部族と大して変わらぬよ」

 

 煙はふわふわと漂ってまたも人型をなす。しかし、その印象はエルフのようでもあり、人間のようでもある。やや猫背なシルエットが特徴的だ。

 

 「最後の七つ目。これはゴブリン族じゃ」

 「ゴブリン族?ゴブリンがぼくらと同じ分類なの?」

 「そうじゃ。遡ること約二六〇〇年前。ゴブリン族が地上から追放されるまでは共に暮す一部族じゃった。彼らの特徴じゃが、肌が青系色であるのが見た目の特徴で、回復力の高さが部族の強みじゃな。残念ながら彼らは皆が皆、友好的というわけではない。アルが本能的に嫌っているように、彼らもまた他の部族を嫌っておる、それが地底に追いやられた遠因でもあるが、まあなに、昔の話じゃ。遠い昔のな。今じゃ地上の世界に溶け込んでおる者もおる。ここらでお喋りも、もうよいじゃろう。ほれ」

 

 とシルビアが指差す方向には三匹の厄鬼。肌が灰色で肋が浮かび、目は爛れたように赤い。口からは鋭い牙が見え、そこから発せられるのは敵意のこもった唸り声のみ。最早、意思疎通は不可能だった。

 

 「あのくらいじゃったら、わたしでもなんとかなるが……。折角の初陣じゃ。なんとかしてみせよ」

 「うん!頼むよ!クー……」

 

 とまで言いかけて、アルフォンスは慌てて口を抑える。つい先程みだりに真名を口にしてはならぬ、と釘を差されたばかりなのだった。

 

 「た、頼むよ!セイバー」

 「おうよ!任しときな!」

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