Fate/Fantasia edge   作:わがし狂太郎

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7話

 『フロイド・タカダ記す。

 

 突暦四二年五月五日

 ※現在は三国のうちの山本國居住しているためこの暦表記とする。尚、他国ではズガン暦、落穂暦と呼ばれる別の暦が使用されていることに留意されたし

 

 激甚厄災対応終わり。

 かの翼の生えた黒蛇が消失してからそれなりに時間は経っているはずだが、まるで昨日の事のように思い出される。事後処理がここまでかかったということもあるが、そのインパクトが凄まじかったからであろう。

 今しがた『アペプ』と命名されたその厄災は、朱色の空を呼び出し厄鬼災霊と死者、厳密には肉体だけを蘇らせ自らの下僕とした死者、それらを使役する厄災だった。

 今回の対応は酷いものだった。

 無論、厄災の規模、規格がこれまで以上に強力であったこと、アペプそのものが不死身の能力を有していたこともあるものの、大きな要因は、巡礼の結果、主宰になったゴブリン族のエダが協力しなかったこと、これに尽きるであろう。折角、主宰にしたというのに、これでは何の意味もない。どうして彼が協力しなかったのか、結局わからずじまいだ。

 ギガンテ族の族長モンタ、月群族の王である趙、ドワーフ族の王ガランデ、彼、彼女らが命を賭して厄災を押し止め、弱体化に成功し、そして、柊木が命を代償に封印術を行使してくれたのでなんとか対処できた。

 彼、彼女らがいなければ今頃もまだ厄災は猛威を奮っていたであろう。

 シルビア、彼女は特に柊木と仲が良かったので、今はとても見ていられないほど落ち込んでいる。バフムートやロイも流石に言葉が少ない。私も寂しい気持ちで一杯だ。なんとかこうして文字にして書くことで平静を保っているようなところもある。伝えなければというこの気持ち、意識あるうちに伝えられれば良かったのだが、書き残せるだけでも慰みか。

 ありがとう。柊木。そしてさようなら。

 

 突暦四二年六月一二日

 

 今日は柊木を讃える石像のお披露目式であった。

 ドワーフの石工数人に急造させたその像は安山岩からできており、彼の魔術的特徴を反映させ猫を象ったものとした。今後は各地に大なり小なりこの像を設置する方針らしい。

 ところで、今日の参列者の中にシルビアがいたのだが、驚くことに彼女はパイプを咥えていた。すっぱり紙タバコはやめたらしく、聞くとどうやら柊木のパイプを譲り受けて、それを利用した魔術行使を考案中らしい。本人のポテンシャルなどを鑑みれば、例えば煙を使用した魔術などはうまい具合にハマりそうではある。鍛錬にバフムートも時折付き合っているらしいので、私も今度は顔くらいは見せに行こうかと思う。あと、急に爺さん口調になっていたのは、あれはどういう心境の変化だろうか?

 

 年輪暦七〇年七月三日

 

 各部族には、それぞれ独自の言語が存在する。それも各地方ごとに異なるため、その数はかなりのもので、有名どころだけ抜粋して例を挙げるだけでも以下のようになる。

 人間族の英語、スペイン語、日本語。ドワーフ族のロワ語、エンバフ語、エルフ族のエルフ語、パルレンキ語、ギガンテ族のド語、ムム語、月群族の艮泉綿語、鐘蕭語、ゴブリン族のゴブリン語、ブリュタル語、ビコト族のヒュープ語、ノイ語。

 これが一例に過ぎないというのは大したものだ。これはこの世界の文化的豊かさの賜物と言えるものではあるが、使用するとなると不便さは否めない。なにせ、隣村では全く違う言語が使用されていて、満足に買い物もできないといった有り様なのである。

 では共通言語を作ってしまおう、と森聖王サクセフォンが考えたらしい。

 そこで発明されたのがウヌス語というものだ。

 なるほど、史上初の統一王とは伊達ではない。

 もちろん、そもそも統一国家が初なので、言語を統一するならこのタイミングが適切であろう。ただ、かの王が優れているのは、自身の使用している言語、つまり、エルフ語を共通言語とするのではなく、様々な人物の意見を聞いて全く新しい言語を創出したという点だ。

 それも自身の同胞であるエルフ族の人物だけではない。私の知るだけでもドワーフ族のノズン氏、ゴブリン族のパデアス氏がこの歴史的事業に関わっていた。

 全く新しい言語を公用語とすることは、スタートの修練度が統一されているということだ。そうなれば言語に通ずる者が出し抜くという恐れがない。全ての部族が政治に参加をしうる権利を得るということだ。この点がこの史上初の統一王の聡明さを表している。

 そして今日、ウヌス語の発布が行われた。簡素な木簡で発布されたその言語は、魔法でもかけられているかのように、不思議なくらい覚えやすいものだ。

 今日は記念すべき日とも言える。仮に言語学者がいたならば涙を流すに違いない。

 私も早々にウヌス語を習得してみようと思う。まずは、ドワーフの職人に私のメガネを治してもらうことをお願いしたい。

 

 石英暦四三二年一月五日

 

 サーヴァントは霊体化というものが行える。

 これは姿を消すことができる(厳密には異なる、アサシンの有する気配遮断とは全く異なるため説明が必要だが長くなるため割愛)とともに、現界時の魔力を抑えるのに効果的な機能ではある。ただ、使用はあまりオススメできないことが判明した。

 というのも、災霊はこの霊体化に過敏に反応するようだ。この前の聖杯戦争では霊体化したサーヴァントに数千を超える災霊が群がり、そのサーヴァントが非力なのもあってマスターともどもやられてしまった。

 これでは儀式どころではない。バフムートに言ってなるべく霊体化は行わないようルール付をするべきだろう。

 

 ルカ暦二二七年二月二七日

 

 ウァルー王がゴブリンの地上からの追放を宣言した。ロイは最後まで頑なに反対していたが、かの王の独断ではなく、他六部族の総意でもあるので、この決定を覆すのは難しかったようだ。

 これにより、地底での生活を余儀なくされるゴブリンたちだが、地底ではすでにギガンテ族の亜種であるトロールたちが住まわっている。彼らは食人も行う種族なのだが、共存はできるのだろうか?

 ともすれば彼らは絶滅もありうるが……。

 よもや、それを見越しての判断なのか?

 いや、よそう。ゴブリンたちの横暴は以前より見聞している。その因果応報と思いたい。

 ロイはゴブリンたちと共に地底へと住まいを変えるらしい。魔術の腕も相当だが、頑固さも相当な彼らしい判断だ』

 

 「ふっ、なにを。このわしが頑固とでも言うのか」

 

 そう言ってロイは今読んだばかりの用紙を放り投げた。

 しかし、とロイは思う。かなりの筆まめだったのか、フロイドのやつ。この量は骨が折れるわ。

 既に読み終えた用紙で山が出来上がっているものの、まだ手つかずの用紙はその十倍を超える。岩が切り出されて本棚のように仕切られているが、その一ブロックを読み切ったに過ぎなかった。ロイが目的としている情報は何一つ出てきていなかった。

 ──しかも、時系列もバラバラときた。

 だが、彼は諦めるわけにはいかなかった。

 求める答え(・・)、その手がかりがあると信じて。

 

 「さあ、次の日記を……」

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