転生したら『捕食者』だったんだが 作:犬養よわし
リムルがスリープモードから回復した。
これからはお供物が食べられなくなるのか……そしてまたゲテモノ食生活に逆戻り……イヤッ!イヤッ!……もぅマヂ無理……ストライキしよ。
《告。やめなさい》
『大賢者』さんが作業の手を止めて俺の方に向き直ってきた。
しかし、口ではそういうが、『大賢者』さんの体は素直だった。以前お供物を食べていたときに、少しだけ頬を緩ませていたのだ。多分『大賢者』さんだってお供物食べたいんだと思う。興味ないフリしてるけど、やっぱ好きなんすねぇ(呆れ)
《……》
『大賢者』さんが黙り込む。俺はこれ幸いと今までの鬱憤をぶちまける。
あと、さらっと俺に盗み喰いの罪を全て擦りつけたことも、俺は見逃さなかったぞ。『大賢者』さんも共犯者だルルォ?何自分は無罪って顔しちゃってんのよ。そんな卑怯なことして恥ずかしくないの?
《……》
それに、リムルがスリープモードに入ったとき、何が起こったのか俺に説明するためにヴェルドラと言い争ったよね?俺のこと好きかな?(すっとぼけ)
《忘れなさい》
『大賢者』さんが大人気なく魔法を使い、一瞬で俺の背後にテレポートしてきた。この俺が背後を取られるとは……一生の不覚ッ!!
背後にテレポートされたので、顔が見れないが、声色的にキレていることはわかる。俺はこのままでは、『大賢者』さんにボコボコにだろう。肉体を持つ以前だったら、精神的に追い詰められるだけだったが、今の俺には肉体がある。しかし、俺は屈さない。一度決めたことは曲げない。俺の回答はハナから決まっている。
『やだよ(即答)』
『大賢者』さんはキレた。
俺が身に纏っている、服と言うのも憚られるほどお粗末な、もはや布と言っても過言ではない物の中に手を突っ込んで、そしてくすぐってきた。
しかし、俺に感覚はない。何時間くすぐられても俺にはノーダメージだ。『大賢者』さんはそんなことにも気づかないのか、ずっとくすぐってくる。
『やめちくり~(挑発)』
そんな『大賢者』さんが愚かで、面白く、愛おしく感じて、思わず挑発する。
挑発すると痛い目を見るだって?こんなときに挑発しないわけないだろ!いい加減にしろ!
《個体名バアル・テンペストの五感を有効化します》
『大賢者』さんがそう言った次の瞬間。今まで味覚以外何も感じることのなかった俺の体が、味覚以外の全ての感覚も感じられるよう変化する。さっきまで、くすぐったくもなんともなかった箇所が、熱を帯びる。
思わず身を捩って逃れようとするが、『大賢者』の手は俺の体を逃さない。体を密着させて、身動きが取れないようにしてきた。まずいですよ!(絵面的にも)
『あっごめんなさい。許してください。忘れます。忘れますから!やめて!イヤ!誰か!男の人!イヤァァアア!!』
さっきまでの優勢が嘘のように変わる。男としてのプライドが微塵も感じれない情けない声を出しながら、助けを懇願する。
しかし、『大賢者』さんの手は止まらない。
俺は何もできない。
『あっ……』
俺は……無力だ……
+++
『うん……なんというか……うん……』
『我の息一つで全て崩壊しそうだな!』
『言うなよ! 人がせっかく言葉を選んで言おうとしてたのに!』
現在リムルはゴブリン達のボスになったので、村長と共に村の現状を確認している。しかし、なんというか……可能性を秘めてる村だね! (ポジティブ)
真面目な話、衣食住の三つのうち心配がいらないのが食だけだ。
それ以外は赤点。住居は竪穴住居のような形をしているが今すぐにも崩れてしまいそうで、衣服に至っては男も女も大事なところ以外隠せていない。……それはそれでいいなァ。
まぁここまで村の現状について考えたけど、俺は胃袋から出れないし、リムルと会話することもできないから無駄なんだよね。
どうにかして胃袋出れないかな〜? チラチラ
《告。現時点では不可能です》
『ケチ』
『まぁそう『大賢者』を責めるでない。お主が外に出たときに絶対に消滅しないとは限らないのだ』
『消滅? ……あっ』
二人がマジかって目でこちらを見ている。しょうがないじゃんね。消滅って言っても体調に何か変化ある訳ではないし、ずっと健康なんだもん。もっとこう……病弱! とか、今にも死にかけ! とかなら実感持てるんだけどね。
『これでは胃袋から出るのは当分先か……』
『ハァ……』
二人揃ってため息を吐く。
『ぐぅ……』
ぐうの音しか出なかった。
+++
腕利のドワーフを多く抱えている武装国家ドワルゴンに行くことに決定したらしい。流石に大人数で行ってしまうと魔物の襲撃みたいになってしまうので、少数で向かっている。
村を出発してから数時間。太陽が落ちて暗くなってきた。
リムル一行は、一旦焚き火を囲んで休憩することとなった。リグル達はリムルと違って食事を摂らなければ生死に関わるので、焚き火で適当に狩ってきた肉を焼いている。
肉汁が肉から垂れる。ないはずの嗅覚が、肉の匂いを掴み取る。
(俺の食欲)暴れんなよ……暴れんなよ……目の前に旨そうな肉があるのに食べれない。手を伸ばせば届きそうなのに届かない。こんなにも辛いことがあるだろうか。いや、ない。あるわけがない。もはや、生殺しと一緒だ。
俺は泣いた。
「あっ!」
「どうかされたのですか?」
急にリムルが声を上げ、それに驚いたリグルが心配そうに声をかける。しかし、リムルは「何でもない」と言って、再び無言になった。
どうしたんだろう? 周りに大きな気配はないし、リグルたちも変わらずお食事中だ。便所かな?
『なぁ捕食者、聞こえるか?』
『聞こえてますよ〜』
『お〜い。捕食者〜?』
『聞こえてるって言ってるやろがい!』
『告。あなたの声があちらに届くことはありません』
……し、知ってたし……
『ふっ……』
鼻で笑われた!?
『お〜い、捕食者? 大賢者さん、これちゃんと聞こえてるんだよね?』
《……是。確かに聞こえています。しかし『捕食者』から語りかけることはできません》
『そっか。じゃあ一方的に言わせてもらうけど、これからはちゃんと捕食者用の食事を用意するよ。今日は忘れてたから勘弁だけど……まぁ、これからの食事は期待してくれ。今まで変な魔物とか喰わせてごめんな』
仏陀はここにいたのか?
なんてこともないリムルのスライムボディが今では何よりも尊く見える。あれ?なんか急にリムルの背後に光が……?
『あ、でも盗み食いとかしたら一週間飯抜きだからな?』
背後にあった光は即座に消えた。
悪魔はここにいた。
+++
道中ランガが張り切りすぎて、リムルがジェットコースターに乗ったあとの親父みたいな顔になっていたが、特にトラブルなく、ドワルゴンに到着した。
流石に大人数で城内に入ると、カチコミか勘違いされるかもしれないので、リムルと以前来たことのあるゴブタの二人で入城することとなった。
その後は何事も無くドワーフを村に招待……しようとしたんだけどなぁ……。
見るからに雑魚い魔物二人組で来たのが災いし、チンピラに絡まれ、それを撃退し、連行された。連行されたのは、チンピラを撃退するときにリムルが周りの無関係な人も巻き込んだからだ。
あーもうめちゃくちゃだよ(憤怒)
現在リムルは獄中生活を送っている。途中で監視の人に
『くそー!! さっさとエルフを見せろー!!』
俺は未だにエルフと会えないストレスから、胃袋の中で駄々をこねている。『大賢者』さんの冷たい目がすごい背中に突き刺さるが、俺はそんなのは意に介さず、駄々をこねる。その姿はさながら、おっきい赤ちゃんのようだ。
一晩中駄々をこねていたら、鉱山夫達が礼を言いに牢屋の前にきた。話を聞くに、
鉱山夫達を助けた功績が認められて釈放されることとなった。回復薬、洞窟出てからずっと活躍してるな。喰いがいがあるというものだ。もう一生喰わないけど。
そうして釈放された後、監視の人のご厚意によって鍛治師を案内してもらうことになった。
牢屋にぶち込まれたときは、どうなるかと思ったがなんとかなったな。……あれ? ゴブタは?
ゴブタを牢屋に置いてきぼりにして、案内された先に向かうと、そこには如何にも職人という風貌の男がいた。手元を見てみると、鉄を打っていた。
……なんか忙しそうだな。村に来てもらうのは難しそうかな?
「あ!?」
そんなことを考えていたら、裏の方から
流石に従業員の命の恩人となれば、カイジンも黙っていられないらしく、一応話を聞いてもらえるようだ。物は試しでこちらの要望を話してみるが、申し訳なさそうに断られてしまった。
なんでも、どこかの大臣が嫌がらせで、ロングソードを二週間以内に20本という無理難題を押し付けられたらしい。カイジンは素材も時間も足りなくて、他のことをする余裕がないようだ。
残念だ。でも、忙しいんじゃしょうがないよな! 諦めてエルフに会いに行こう!
《……ハァ》
『何でお主はそこまでエルフに執着するのだ……?』
二人が呆れたようにこちらを見てくる。
理解されなくて結構! エルフとは、男の
『お主は男ではないだろう? 体が物語っているではないか』
『息子がなくても心は男じゃい!』
《否。貴方は無性です》
製作者二人に否定されてしまった。
……そもそも俺が無性なのってこの二人のせいじゃん。
そこのところお二人はどうお考えで?
えっ? 反省はしてない? ……そっすか……
気を取り直して、リムルの視点を見てみると、なぜかドワーフの職人が唯一完成させたロングソードを持っていた。
『……俺……なんか嫌な予感するんだけど……大丈夫だよね……『大賢者』さん?』
これから起こることを想像し、恐怖で頭がいっぱいになる。声が震える。……おかしいな……感覚なんてないはずなのに、手が冷たい。
《……》
『大賢者さん』は応答しない。ただの屍のようだ。
『……ヴェルドラ?』
ヴェルドラが目を合わせてくれない。
『うむ……まぁ、その……お約束……というやつだな』
「いただきま〜す」
リムルがそう言い、手(?)に持ったロングソードを捕食する。
『わりぃ……オレ、死んだ』
『バアルゥゥ────!!』
+++
俺はカイジンの問題を解決した礼として、エルフのバーに来ていた。
おっぱいがひぃ…ふぅ…みぃ……まあとにかくいっぱいだ。
「スライムさん?どうかしたの?」
エルフが俺のぷにぷにのスライムボディに体をくっつける。今だけは、このスライムに生まれたことに最大限の感謝を。そして、ここに連れてきてくれたカイジン達に感謝を。
「旦那ぁ〜?緊張してんですか?」
「緊張なんてしてないし!」
「うふふ、スライムさん赤くなってるぅ〜」
柔らかい指で、ツンツンと突かれる。
あぁ…幸せだ。もうここで、終わってもいい……
それから、ほどよく酔いが回ってきたとき、向かいに座っている褐色のエルフがとある提案をしてきた。
「占い?」
「そう、占い!私結構評判良いんだから」
自信満々に胸を張る。元々胸が張ってあることも相まって、このままだとはち切れてしまうんじゃないかと思うぐらいだ。
「う〜ん?占いって言っても何を占うんだ?」
「たとえば〜運命の人とか?」
「運命の人?」
「あ〜やっぱり気になるんだね?」
イタズラっぽい声色で、俺を膝枕しているエルフがからかってくる。
まぁ、確かに多少は気になるけど?まぁ?どうしてもって言うなら?受けない方が失礼…みたいな?
「じゃあ、占うね」
そう言って褐色のエルフはいかにもな指の動きをする。
水晶には徐々に人の姿が映っていく。そこには、一人の女性が映っていた。なんとなく、日本人っぽい感じがする。
「へぇ…これが旦那の運命の人か……結構可愛いじゃねぇか?なぁ?」
ドワーフ三兄弟が、カイジンに同調するように俺をニヤニヤと見ながら首を縦に振る。
俺はなんとなく気恥ずかしいので、視線を水晶に向ける。
「へへ、赤くなってるぜ?」
「赤くなんてなってないやい!」
そもそも俺、スライムだから赤くならないし!
「あれ?なんかもう一人映ってるよ?」
もう一人?運命の人が二人いるのは人としてやばくないか?いや、俺はスライムだからセーフか?そう考えながら、もう一度水晶を見る。
「おぉ…」
そこには、さっきとはジャンルの違う美少女が映っていた。髪が床につくほど長い黒髪で、お世辞にも大人とは言えない幼女体型。
……なんというか……これが運命の人というのは犯罪臭がすごい気がする……。
「うわぁお……スライムさんって結構肉食系なんだね……」
「まって!?」
違う!俺は決してヤリ◯ンではないんだ!それに、前世では生涯童貞を貫き通したのに、今世ではヤ◯チン呼ばわりはあんまりだ!
「旦那……」
「カイジン……!」
俺の潔白を証明してくれ……お前ならわかるだろ?俺は決してヤリ◯ンではないって!
「流石だぜ!」
「カイジン……」
許して…許して……