牧場作ってお腹いっぱい食べてる無惨様成り代わりと「一応悪行より善行の方が多いし殺すのもな…」と悩むモグラさんの出会い。

※pixivにも投稿してます。仮に続編が出るとしたらpixivのみになる可能性が高いです。
作者にしてはボーイズラブ色が薄いので試しにハーメルンで投稿してみました。初めてなので至らない所がありましたらご容赦ください。

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※主人公が人間牧場を作っています


無惨成り代わりと仙人のぐだぐだ千年

 

 

【悲報】鬼舞辻無惨に成り代わり転生したっぽい

 

目覚めたら人間の体を食べていたし本能的に日光を危惧してしまう。その他いくつかの特徴が鬼滅の刃の鬼と一致していた。たぶん推測は合っていると思う。マジやってらんねえ。

 

せめてもの救いは最初の一人を食べた時点で理性と前世の記憶が戻った事だ。

しかも犠牲者はわざとじゃなくとも人を化け物にした医者である。それに加えてあの男、私の容態が落ち着いたら高位貴族の館に赴いて病弱な子息に同じ薬を処方する予定だと言っていた記憶がある。正直言うと次の鬼を生み出す前に死んだ方が世のためだと思ってしまい罪悪感は薄かった。

 

 

鬼になる前の状況を思い出す。

確か容態が急変したので医者を呼ぼうとしたが、遣いの者が連れて帰ってくるのを待っていたら往復になり時間がかかる。そのため一か八かで医者の家に直接赴いたのだった。

医者はひとり暮らしだし、善良だが変人扱いされてご近所付き合いは薄め。私を連れて来た御者や護衛は治療にしばらくかかると知り帰った。

世話係くらい残せと怒る心はあれど、それが今は都合の良い。お陰でこの家には医者と私しか居なかった。目撃者はいないし、急がずとも逃げる時間はあるだろう。

私はめぼしい荷物を拝借すると家に火を放ち、延焼しなかった事を確認して立ち去った。

 

 

 

現代と違い管理など全く行き届いない平安時代は都ですら死体が道端に転がっている。都の外などもうゴロゴロであった。有り難い事に人を殺さずとも飢えずに生きていけそうだ。感情的にはめちゃくちゃ複雑だが。

間違っても空腹で正気を失ってはならないのでモリモリ食べる。

 

そして爆速で血鬼術らしき物に目覚めた。

内容は何だろう?ツイステのオアシスメイカーが近いか?

身を割いて肉塊を作ると、それが水っぽい液体を吐き出すのだ。

見た目や味は綺麗で美味しい普通の水なのだが、植物に掛けると対象が急成長したり枯れたのが瑞々しく回復したりしたので普通の水ではない。調べれば他にも効能がある気がする。

これが馬鹿みたいなローコストで生成できるのでオアシスメイカーも言い過ぎではない。

 

しかしすごい能力だが私にはそこまで役に立たないな。水道のない土地でいつでも綺麗な水を使えるのは有り難いが一人分なら使うのは微々たる量である。無駄に強力な能力で至極残念だった。

でも活用しないと勿体ない。というか使ってみたい。

 

 

水を多量に必要とする事業でもやってみるかと考えて人間牧場を作ってみた。

老化に病気、孤児という理由で捨てられる人間などそこら中に居るので適当に声をかける。

彼らは生きてる間は血液、死んだら肉体を納める代わりに生活を保障すると約束するとホイホイ着いてきた。

それでいいのかお前ら?他に生きる術がない人間を狙って誘ったとはいえ人食いの化け物だとちゃんと説明したのに。まあ、人柱やら生贄とかそこら中でやってるので抵抗感は薄いのかもしれない。

 

 

 

牧場において私がやるのは水の供給と農作物の促成栽培、重機が必要になるような人間の身体能力では出来ない作業ぐらいだ。後は自分達で頑張れとほぼ丸投げな環境なのに彼らは大層感謝してくれた。

良い共存関係を維持できていると思う。

 

 

 

そんなそれなりに平穏な生活をしていたら奴が現れた。

 

「佐助、今夜がお前の峠だ」

「はい、無惨様。今までありがとうございました」

 

百発百中とまでは言わないが病死や老衰の場合は相手の死期を悟るのが異様に上手くなった。せっかくなので配下の人間の死に際になったら赴いて看取るようにしている。

 

「お前はよく働いてくれた。それに免じて食糧にはせず普通に埋葬してやってもいいがどうだ?」

「いえ、どうぞ私が死んだら直ぐにお召し上がりください。ようやく貴方様のお役に立てる。これほど喜ばしい事はありません」

 

肉体は私が食べるという約束は両者同意で成立したが、最期に気が変わるかもしれないと思いできるだけ確認しているが一度たりとも反故にされた事はない。みんな律儀だな。

 

「冥土の土産をくださるなら旅立ちの時まで抱きしめてくれませんか?」

「いいぞ」

 

それからは佐助の鼓動が薄れゆくのを静かに聞いていた。

「もういいか」

何も聞こえなくなって五分、私は遺体の肩に噛みついた。口の中に血の味が広がる。

(ああ。いつも通りの反吐が出る程の美味)

吐き気と体が震えるの抑えこみ、意を決して今度こそ噛み千切った。

 

「いっってぇーーー!!!!」

次の瞬間、佐助の体から生気溢れる声が響く。

 

え?佐助死んでなかった?いや、私の見立てに間違いはない。

鬼の膂力を活かして不審者の首根っこを押さえつける。

「お前は佐助ではないな?何者だ?」

 

不審者は百暗と名乗った。

「百に暗いでもぐら?《いつまでもくらやみ》という意味か?」

「そうそう」

「洒落ているな。私も使えばよかった」

 

永遠に日陰者である鬼にはピッタリな言葉だ。人間だった時の名前を忘れたので新しく付けようとした時に候補が鬼舞辻無惨としか出て来なかったのが悔やまれる。

 

「この状況で先ず出てくるのがその感想って、アンタ相当のんきだろう?」

「さてな。で、何で貴様は佐助の体で動いている?」

 

モグラは罪と罰のせいで死ねないと語った。

普段は怪我しても元の体を修復するが、肉体の損壊が激しいと間近の死体に魂が移動して取り憑くらしい。

 

「貴様はこの辺りで死んだのか?何故こんな所に来た?」

秘密の保持や脱走者の防止のために本拠地ここは高度な科学技術か異能でもなければ住めねぇよと言いたくなるような不毛で利便性の低い土地を選んだ。

旅人など滅多に立ち寄らないので他所から人間が来たらわかるし、周辺住民は私の配下しかおらず顔はほぼ全員把握している。

つまりコイツは人に知られないようコッソリきた余所者である。

 

気まずそうな顔でモグラはすっごい遠回しに此処に来た理由を話した。以下は要約である。

 

モグラはここから近い村(それでもかなり距離がある)に住んでいた。

近隣の村が災害に遭い死傷者がかなり出たと聞いて幽霊から灯を貰うため向かったらしい。

危険な道を苦労して進み、着いた先で見たのは私と数人の人間が共に消えた瞬間だった。

一目見て私がこの世に在ってはならない存在だと看過したモグラは見過ごす事などできないと私達の居場所を探し始めた。

そのうち人など到底住めないと言われていた土地に集落ができて急速に発展しているという噂を聞く。

直感が働いて私や連れ去られた人間がここに居ると悟ったモグラは人間たちの救出のため潜入して来たとの事だ。

「呆れるほどのお人好しだな」

それはまあいい。気になるのはその先だ

 

古来より怪物を人々から救うのなら方法は退治と相場が決まっている。

 

「つまり私を殺すために追いかけてきたと?」

「……」

「沈黙は肯定と見なすぞ」

 

人食いの人外が人間を連れ去ったら殺すのもわかる

怒りはそこまで湧かない。

しかし安全のためには対処しなくては。でもコイツを殺した所で他の遺体に憑依するだけで根本的な解決にはならない。どうするべきか?

 

悩んでいるとモグラは電気ショックを流されて麻痺し動けない所を殴られてぶっ飛ばされたみたいな変な動きを始めた。

「痛い痛い痛い!!やっこさんが悪い奴じゃないのは俺だってわかってるから止めて!」

「一体なんだ?」

「この体の持ち主がお前を侮辱されたって怒ってるんだ。そんでお前のための体だから俺に使われるなんてゴメンだから返せってさ」

「そうか。礼を言うぞ佐助。だがコイツの言い分もわかるから止めろ」

 

モグラの体から力が抜けるのを見て佐助が矛を収めたと判断する。

 

「確認するが貴様は霊と会話できるのだな?」

「そうだよ」

「佐助、誰か私が知ってる人間の幽霊を連れてこい」

「『その必要はありません。無惨様を狙う不届き者が現れたと聞いて近場の霊はほぼ全員集まって来てます』だとさ」

自発的にモグラが通訳してくれた。本当に人が良い奴だ。

 

 

そのままモグラを通訳を任せ、霊に名乗らせた後は本人ならわかる質問をしていく。

モグラの口からは佐助が知らないはずの質問の答えも出てきた。という事は佐助の脳にある情報を読み取っているのではない。本当に霊と会話しているのだ。

 

「よし、決めた。モグラよ。貴様は今日からここで働け」

「は?」

「その体は死後私が貰う受けるという約束で養ってきた。もちろん佐助の同意もある。つまりもう私の物だ。それを勝手に使っているのなら貸出料を寄越せ」

この辺りの村民は貧乏人ばかりだ。たぶんその例に漏れずコイツも困窮している可能性は高い。支払いは無理だろう。

「それは…その…」

モグラの目が泳いでいる。私の主張の正当性は認めたが払えないのが読み取れた。

本当に人が良い。踏み倒してしまえばいいのに思いつきもしない様子だ。

「できないなら代わりに働いて返せ。なに、心配するな。基本的にはここの住人に混じって普通に生活していればいい。そして私が呼んだ時に霊の言葉を伝えろ。他は特にない」

「本当にそれだけでいいのか?」

疑わしい目を向けてくるな。

「これは独り言だが死なない存在を無力化するなら

手足をもいで何もできない状態にして閉じ込めてしまうのが一番だと思う」

「…………」

「おっと、話の途中ですまない。他の待遇の話をしようか。衣食住に関する費用は全て私が出そう。幽霊を集める手段には幾つか心あたりがあるからそれもやってもいい」

「ここで働かせてください!」

 

モグラの目尻に涙が浮かんでいた。泣くほど喜んでくれるとは思わなった。偶になら善行するのも気持ちいい。

私は奴に笑みを向けてやった。




主人公
現代からの転生者。平安で人間してた頃の記憶はおぼろげ。
『これがあったら生活が楽になる血鬼術』の申し子であり、人間を養う代わりに食糧を提供してもらっている。


モグラ
攫われた人間を助けに潜入したら、化け物は人間しか栄養にできないから人間食べてるだけで好き好んで人肉食べている訳でないし、人々を丁重に扱っている事を知る。
無惨を殺して解決でいいのか?とぐだぐだ考えている間に無惨様狂信者に見つかって殺された。
そのうち『無惨様に謁見したいから取り次いでくれ』と何もしなくとも霊が寄ってくる環境と無惨の提供する便利な生活に骨抜きにされる。


無惨の配下
今は人間オンリー。無惨様狂信者を多数抱えている。
無惨を利用しようとしたり殺そうとする人間を見つけたら躊躇なく殺す。無惨様にはナイショ。

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