翌朝。
ダリルが目覚めた時には体調は万全の状態になっており、ホームのドタドタも聞こえない。
今のホームにはダリルとアストレア以外は居らず、全員ダンジョンに行っているのだ。
ダリル
「
ダリルは早起きしてアリーゼ達を追いかけるつもりだったが、寝坊して大失敗。
Lv.1で大した走力も無いダリルが、いまからLv.3以上の軍団である仲間達に追いつけるとは思えない。
だが、ダリルは爆速で身支度を終わらし、閻魔刀片手に全力ダッシュ。
ダリル
「俺はまだ弱いからな...仲間の戦いの様子から学ばなきゃならねぇ!」
「主神様!俺、ダンジョン行ってくるぜ!」
アストレア
「え?ちょっと!」
アストレアが止める暇もなく、ダリルはダンジョンに向かって走り出す。
その表情は、正に新たな発見に心を躍らせる少年そのもの。
歳相応の笑顔だ。
間も無く死地へ立ち入ろうとする者の表情ではない。
ダリルはオラリオの中央、ダンジョンの入口へと駆ける。
冒険者を含め、沢山の人々がダリルを奇妙な目で見る。
ダリル
「はぁ...はぁっ...クソっ!足が遅ぇ!って...待てよ?」
ダリルは足を止める。
手に持つのは閻魔刀。
ダリルは閻魔刀を抜き、十字に振るうと、裂け目が出現する。
チャキッ
ダリルは閻魔刀を鞘に収めると、その裂け目にゆっくりと入っていく。
冒険者1
「はぁぁぁあ!?なんだあれ!?」
それを見た冒険者達は驚く。
それはそうだ。
街中でLv.1のナンパ師(15歳)が刀を抜き、消えたのだから。
ダリルは師匠にダンジョンのあれこれを教わっているので、意外と階層移動用の通路が何処にあるか...等を把握している。
故に、師匠から詳細を教わっている28階層までなら余裕で移動できる。
ダリルは記憶力が途轍もなく良いのだ。
ダリル
「情景からして28階層だな。間違いねぇ。花が美しいな。」
ダリルは当たりを見渡す。
30階層まで移動できない理由は、29階層から32階層にかけて情景が同じで、師匠から聞いた情報でも、閻魔刀の移動が正確に利用できないためだ。
ダリル
「こっから走りか。
ダリルは再び走り出す。
だが、ダリルは閻魔刀によるショートカットを使用した為に、既にアリーゼ一行よりも先に28階層に到着している。
別に走る必要もない。
ダリル
「
ダリルは順調に歩みを進め、遂に30階層に到達する。
風景は変わらない。
一面クソデカ樹木塗れ。
樹海としか言いようがない。
走るのを辞め、ゆっくりと歩く。
左手には閻魔刀が握られており、何時でも抜刀ができる状態だ。
ダリル
「団長達が居ねぇな。閻魔刀で追い越しちまったのかね。」
ダリルはそう言いながら歩いていると、足元からバキッと言う音がする。
ダリル
「あ?」
足元から眩い光が発せられる。
ここから逃げることは出来ない。
バァァァァァァアン!
ダリルは火炎石というアイテムを踏み抜き、無事に爆散した。
だが、ダリルには再生力がある。
爆発程度じゃ死なない。
ダリル
「いってえええええ!!?!爆発ってこんな痛いのか!?」
ダリルは絶叫する。
だが、その衣服は無事だ。
足がぐっちゃぐちゃになった程度で済んだ。
ダリル
「クソっ!足がグチャグチャだぜ...」
ダリルの足は再生しているが、火炎石の誘爆で爆発は続く。
せっかく仕掛けた罠が、たった1人のLv.1によって崩壊していく。
ジュラ
「もうアストレア・ファミリアの連中がきやがったのか!?」
その奥の方で、1人の獣人が喚き散らかす。
ダリル
「そうか...アイツらが
ダリルの口が緩む。
足の再生が終わり、靴を履き直したダリルは立ち上がる。
爆発は続いている。
ダリル
「WOW!素晴らしいショーじゃねぇか!あ!?」
爆発を見たダリルは、閻魔刀を持ち、ステップをしながら回る。
ジュラ
「アイツは...誰だ!?」
ダリル
「俺か?俺はな、アストレア・ファミリアの下っ端、ダリル・クラネル様だよ!!」
ダリルは閻魔刀で居合抜刀の構えを取り、閻魔刀からも魔力が溢れる。
ダリル
「
ダァァァアン!
ダリルは凄まじい踏み込みの後、そのルドラ・ファミリアの残党に急接近する。
疾走居合だ。
ジュラ
「なぁっ!?」
ルドラ・ファミリアの頭角とも言えよう獣人、ジュラは後退りし、枝を踏む。
パキッという音が鳴ったと同時。
ダリルの閻魔刀がジュラの腹を捉え、ジュラの腹から大量に血が溢れる。
神速の刃は鞘に収まり、ダリルは着地する。
ジュラ
「うぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
ダリル
「んだよ...案外弱えじゃねえか...」
闇派閥1
「何なんだテメェはぁぁぁあ!?」
闇派閥の一員が足を引くと、また枝を踏む。
すると次の瞬間。
ギヤァァァァァァァァァァァァァァァァ!
ダンジョンから甲高い悲鳴のような音が聞こえる。
ダリル
「うっせぇなぁ...
その音が聞こえたと同時に、アリーゼ達も現場に到着する。
アリーゼ
「何故ダリルがここに!?」
輝夜
「バカが!何故ホームに居なかった!!」
ライラ
「でも、
リュー
「待ってください...あの黒い影はなんですか...?」
ライラがダリルを褒めていると、リューがダンジョンの天井を指さす。
そこから、黒い影が降ってきていた。
闇派閥1
「逃げろ!今のうちに!」
闇派閥2
「ジュラが死んだ以上、連中に勝つ手は残ってねぇ!」
ダリル
「逃がさねぇよ!」
ダリルが素早くマグナムを引き抜き、その2人の足を精確に撃ち抜く。
闇派閥2人
「「うぁぁぁぁぁあ!」」
足を撃たれた
ダリル
「悪党には地面に這い蹲っている姿が似合いだぜ。」
ダリルはマグナムをホルスターにしまうと、先程リューが指さしていた方向を見る。
だが、そこには何もいない。
ダリル
「...ああん?」
次の瞬間。
先程の黒い何かがダリルの目の前に現れる。
ダリルの目には、それが途轍もなくゆっくりに見えたどころか、世界がゆっくりに見えた。
体を動かそうと思っても動かない。
ダリル
「(こいつ...速ぇ...!)」
ダリルは確信した。
コイツの攻撃は避けられない。
自身はここで死ぬと。
死にたくない。
生きていたい。
目的を果たせていない。
黒い何かの爪が、ダリルの胴に迫る。
動けない。
速い。
何もかもが遅く見えるその世界ですら、その攻撃は見えない程に速かった。
ズバァッ...
ダリル
「がぁぁっ!?」
ダリルの胸を、黒い何か...ジャガーノートの爪が貫通し、ダリルの口、胸から赤黒い液体が流れ出る。
ライラ
「は...?」
ジャガーノートが爪を抜き、ダリルは宙に浮いた。
バァァァァアンッ!
直後、ダリルの胴にジャガーノートの長い尾による振り払いが直撃。
ダリルの骨は粉々になり、大木に激突した。
ダリル・クラネルは死んだ。
“最強”という目標を掲げた少年は、夢を叶えられず...絶命した。
アリーゼ
「ダリル!!!!!!!」
アリーゼの顔が強ばる。
輝夜も顰めっ面となり、ライラもショックを受ける。
リューもまた、涙を流しそうになっていた。
ダリル
「(クッソ...こんな所で...)」
暗転した視界でダリルは呟く。
彼は深い海の底に投げ出されたような感覚を感じていた。
そして、脈打つような重低音の「心臓の鼓動」が聞こえてくる。
心臓は貫かれ、動いていないはずなのに聞こえている。
ダリル
「(まだだ...まだ終われねぇ...俺は最強になるんだ...!)」
声
「(そうだ。貴様はまだ終われない。)」
ダリル
「(師匠...?)」
ダリルの脳に、聞き覚えのある声が木霊する。
声
「(貴様はまだ弱い。だが、その刃を受け取ったからには示して見せろ。)」
「(貴様の欲望を叶えろ。そして呼び覚ますがいい。己の力を。)」
ダリル
「(そうだ...俺にはあれが残されてんじゃねえか!)」
直後。
ダンジョンで、激しい魔力の奔流が、ダリルを渦巻く。
紫、白、そして黒の3色だ。
ダリル
「ガァァァァァァァァァァァァァァア!」
直後、そこから現れたのは人型の異形。
胸が縦に裂け、そこから紫色の発光部が現れ、全身に白い鎧のような鱗を肩、腕、足に纏い、胸部と腹部には黒い鱗、そして頭部はダリルの面影を残しつつも、白い4本の角、そしてオッドアイの黒い方が青色に光っており、ロングコートまでもが白い鱗に覆われていた。
ダリルはゆっくりと閻魔刀を鞘から抜き、凝視してくるジャガーノートと目を合わせる。
ダリル
「やってくれたじゃねぇか...」
「さあ、ここからが本番だ。殺り合おうじゃねえか!」
ダリルは閻魔刀片手に、高速でジャガーノートへ向かっていった。
今回はここまでです。
次回は本格的にジャガーノート討伐戦を描こうと思います。