ようこそ同志、革命主義の教室へ   作:道瀬 昆那門

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よう実の特別試験は個人的には教育として素晴らしいと思ってます。運用がクソですが。


第6話・ネタバレ

 いろいろと言ったが、クラスメイト達の反応を見るにこの学校がどれほどヤバいのかまだ実感がないようだ。そう上手くはいかないか。もちろん、今日この一瞬で彼らの認識を変えようとは思っていないけど。今はくさびを打ち込めた。それだけでいい。

 

 この学校はネタには困らない。どうせすぐに嫌がらせみたいな上から目線の試練を押し付けて来るだろうから。

 

 これで僕の言いたいことの大半は言えた。あとは仕上げといこう。

 

「僕の話にそれぞれ思うことはあると思う。ただ、今はまだ情報が少ない。みんなも、何か気づいたことや情報があったら共有してほしい。

 さて、僕がみんなに提案したいことが一つあるんだ。僕らはこれから中間試験に向けて対策を行わないといけないわけだけど、一人で勉強するのには限界があると思う。そこで勉強会を開こうと思っているんだ。自慢じゃないけど、僕は成績がいい方だから、わからないところがあったら教えてあげられることもあると思う。みんな、どうかな?」

 

 そう呼びかけながら、ちらりと一之瀬の方を見てみると、意図を察したのかうなづきながら手を挙げてくれた。

 

「私は参加するよ!」

 

 クラスのアイドルともいえる一之瀬が参加を表明したことで、雰囲気は一気に参加へと傾いた。

 

「ありがとう。勉強会は明後日の放課後から始めようと思っている。参加する人は放課後になったら教室に残ってほしい。参加しない人も、なにか聞きたいことがあったら、遠慮なく声をかけてほしい」

 

 

********************************************

 

 

 クラスメイト達の意識改革は今後も継続して行っていく必要がある。ただ、僕がいたずらに学校への不信を叫ぶだけでは、彼らがついてくることはないだろう。何より、僕への信頼が不足しているからだ。一之瀬のような華やかな印象と日常的なコミュニケーションがないならば、実績を積み上げていく必要がある。

 

 僕は放課後の演説からその足で堀北先輩に会いに行った。今朝のメールでの質問の答えを対面でも聞かせてもらうため、追加の質問をするため、そして過去問をもらうために。

 

 堀北先輩に会うのはたいてい食堂か寮のエントランスだったので、わざわざ生徒会室に足を運ぶのは初めてである。

 

「失礼します。一年Bクラスの浦路零人です。堀北先輩に会いに来ました……先輩おひとりですか?」

 

「ああ。そのほうが話もしやすいと思ってな」

 

 初手に殴りかかってきたとは思えないほど、堀北先輩は他人に気を遣うのがうまい。相手の気持ちを慮ることができる人なんだろう。それが分かった時から、僕は堀北先輩をそれなりに信用するようになった。しかし不思議なのはそんな人が橘先輩の気持ちに気づけないことだ。数回会っただけの僕でも分かるのに。

 

「それにしても、今朝チャットに大量の質問が送られてきたのには驚いた。今日この日に学校から重大発表があることを読んでいたのか」

 

「ええまあ。10万円相当なんて毎月もらえるわけがないと思ってましたから。毎月あると明言しないのは大金を得て舞い上がった生徒を絶望に突き落とすため。ならそのネタバレは次の振り込み日なのは明白でしょう」

 

「そこまで考えつくこと自体難しいだろう。例年、Sシステムのからくりに気が付く生徒は少ない。先生方も浦路の実力を認めていたぞ」

 

「僕が思うに、この学校に来る人の多くは10万円の価値を知らないのでしょう。お金というものを知っていれば、ろくでもない何かがあるということぐらいには気づくでしょうから」

 

 僕がそう言うと、堀北先輩はふむと呟きながら僕を見つめてきた。

 

「それは大手企業・イズミの経営者としての考えか?」

 

「一応は。ただ、普通はそれでも10万はもらえないということぐらいは分かると思いますけどね。あと僕は経営には関わっていないですよ。名義こそ共同経営者でしたが、実際は秘書みたいなことをしてましたからね」

 

 懐かしい話だが、僕はとある天才の秘書みたいなことをしていたことがある。中学校なんてほとんど行かず、彼女に振り回されるようにしてあちこちに出かけた日々が思い出される。彼女はあらゆる点で天才というべき人間で、彼女と一緒に行動したところで僕にできるのは秘書業務ぐらいだった。

 

「相沢月那(ルナ)の共同経営者……相沢は中学生でありながら創設した企業を大企業といわれる規模まで育て上げたことで有名だったが、共同経営者の正体はまったく知られていなかった。同年代との噂もあったが、まさか本人と会えるとはな」

 

「名前は公表されていましたから、いつか特定されるとは思っていましたが、まさか学校に知られることになるとは思いませんでしたよ。この学校の調査能力は侮れませんね。ここは諜報員の養成校か何かなんですかね。あとなんで生徒会長が個人情報を知っているんですか」

 

 高育諜報員養成校説、意外とありえそうでいやだな。警察や銀行だと採用者の身元調査が行われるが、まさか高校の分際で僕の正体まで嗅ぎつけるとは。別にそこまで隠してなかったけどさぁ……

 

「生徒会長は生徒の情報の一部にアクセスできる。もちろん限定的ではあるが、俺が閲覧できたのはこのことが浦路の評価につながっていたからだろう。中学校の出席日数が少ない理由が、いじめや家庭事情だった場合、それは機密となっていただろうな」

 

「まあ、その辺はいいです。それよりも堀北先輩に聞きたいことがある」

 

「ああ。察するに今朝の質問の詳細だろうか」

 

「はい。やはり、この学校はクラス対抗でポイントを奪い合い、学校は退学とポイントを使って競争を煽る。そういう認識でよろしいのですね」

 

 言葉にするとより醜悪だな。特に生徒たちを見下ろしている教師どもが。やっぱり僕はこの学校が嫌いだ。それは僕ら生徒の平穏を、日常を、望みを、希望や夢すらも教育という名前の窯に突っ込もうとする制度に嫌悪を感じるからだ。まったくふざけた話だ。

 

「その通り。そしてポイントの増減に大きく関わってくるのが特別試験だ。詳細は言えないが、定期的に開催され、報酬としてポイント、クラスポイントとプライベートポイントのどちらかまたは両方が用意されている。ペナルティとしてもポイントがあるが、重大なペナルティだと退学措置となっていることもある。このあたりはチャットの返信でも触れたな」

 

「ええ。そしてそれに関してもう一度聞きたいのですが、3年になっても特別試験は開催されるというのは確かですね?たとえ受験期であっても」

 

「確かだ。事実、俺が2年の時でも3年の先輩方は特別試験で忙しくされていたからな」

 

「やっぱり、ふざけた話だ。正道で進路を決めさせる気はないということか……これは追加の質問になるのですが、先輩がこれまで経験した特別試験の中で危険を伴うものはありましたか?」

 

 そう聞くと、堀北先輩は腕を組んですこし黙った。

 

「……多少リスクがないと言えなくもない試験もあったが、それでも危険は普通の高校の行事と同程度だった」

 

「まあ、その辺はしっかりしているでしょうね。学校側としても余計なところをつつかれたくはないでしょうし。あと、自主退学するときのペナルティについて聞きたいのですが」

 

「かなり重いぞ。自主退学する生徒が在籍しているクラスはクラスポイントを300引かれることになる。なんであれ、この学校は退学を良くも悪くも重大事項としているからな」

 

「なるほど……そういえば、先生方はポイントで買えないものは何もないと言っていましたが、ポイントを支払って退学の取り消しやテストの点数の購入、あるいは授業の欠席の取り消しを行うことはできますか?」

 

 僕の質問に、堀北先輩はニヤリと笑って答えてくれた。だから笑顔が怖いんだって。

 

「いずれも可能だ。テストの点数の購入などは詳しくは先生方に聞くといい。俺からいえるのは、退学の阻止には多額のプライベートポイントとクラスポイントが必要になるということだけだな。2000万プライベートポイントを支払うことで、クラスを移動することができることも教えておこう」

 

 遠まわしな言い方ではあるが、だいたい2000プライベートポイントと300クラスポイントで退学の取り消しが可能、ということか。この辺は試験とかによっても変動しそうだから、目安程度に考えておいたほうがいいかもしれない。

 

「いろいろと教えていただきありがとうございました。実はもう一つお願いがありまして、小テストと中間テスト、期末テストの過去問をいただきたいのですが、5万でどうでしょうか」

 

 堀北先輩の驚いた顔というのは初めて見たかもしれない。しかし、表情を変えないよう気を付けてはいたものの、驚いているのは僕の方だった。

 

 なにしろ、堀北先輩が驚く理由がわからない。

 

「……さすがだな。もう中間試験のからくりに気がつくとは」

 

 さっぱりわからないが、適当に話を合わせるのが吉だろう。

 

「まあ、案外わかりやすいからくりでしたから」

 

 堀北先輩は何度かうなづいた後、端末をポケットから出した。

 

「いいだろう。小テストと中間テストと期末テストの過去問を送ろう。ただし、対価として10万ポイントを支払ってもらう」

 

 さすがに10万は高い。今手元にあるポイントはざっと20万。出そうと思えば出せる金額だが、それはすこし気に食わない。

 

「7万5000でどうでしょう。生徒会長も入学してから2か月も経っていない新入生に10万も吹っ掛けたりはしないですよね?」

 

 冗談っぽく問いかけてみると、堀北先輩はフッと笑いながらうなづいた。

 

「もう新入生とは言えないだろうが、そういうことにしておこう。その代わり、浦路。生徒会に入る気はないか?」

 

「ないです」

 

 まさか即答されるとは思っていなかったらしく、堀北先輩は一瞬黙り込んだ。

 

「正直クラスの方に手いっぱいです。生徒会も面白そうではありますが今は……それで値段は結局10万ですか?」

 

「いや、5万でいい。優秀な後輩への期待分の値引きだと思ってくれ」

 

「ありがたくお気持ち、受け取りましょう」

 

 5万ポイントを堀北先輩に送信すると、すぐに小テストと中間テスト、期末テストの過去問が送られてきた。これで堀北先輩が口止め料として支払った5万は、結局差し引きゼロとなった。もしかして最初から5万で取引する気だったとか?だとすると見事に恩を着せられてしまったわけだが。

 

「では先輩、いろいろとありがとうございました」

 

「何かあれば連絡するといい」

 

 お礼を言って生徒会室を出ると、僕はさっさと部屋に戻って送られてきた過去問に目を通した。

 

 まず小テストの過去問のファイルを開くと、見覚えのある問題がずらりと並んでいる。

 

「ま、まさか……!?」

 

 嫌な予感を押し殺して中間試験の過去問を開き、問題を見る。まだ授業でやっていないすこし先の範囲まで出題されているのは気になったが、そのままスクロールしてさらに前年の過去問に目を通す。

 

「同じじゃんか!あ、赤点を取らないと確信しているって、そういうこと?おいおいおい!」

 

 まったく、ひどいからくりもあったものだった。

 

 普通試験対策に過去問を用意するなんて定番中の定番だと思うのだが。それをあんなもって回った言い方でしか誘導できないとは、まったく意図が分からない。

 

 なんとなくなのだが、これを考えた人は最初は純粋に試験対策として過去問を活用するというヒントを出そうと考えていたのではないだろうか。それを完全に過去問使いまわしをするようにして、そうすると過去問という実質解答が手に入りやすくなってしまうからあえてわかりにくい表現に変えた。うん、そう考えると納得がいく。

 

 だとすればひどい話だな。過去問の活用という至極まっとうなことを教えようとして、かえってわかりづらくなったのだから。




この小説、実はハーメルンの投稿方法を知るために実際にやってみようと思って適当に書いたものでした。つまりプロットも何もありません。ちょっと前まで消そうと思っていたのですが、多くの方に閲覧・評価していただき、うれしい感想もたくさん頂きました。私の頭の中で誰かが『これはお前が始めた物語だろ』と言っているので頑張ってプロットを考えようと思います。
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