オリジナルですが、元ネタがおり、その元ネタの要素をめちゃ入れ込んでます。
もしかしたら詳しい人は元ネタがわかるかも。
時は過ぎ、メイクデビュー当日。
インシルカスラムは体操服にゼッケンをつけて、軽く自分の頬を叩く。
「気分はどうだインシー?」
「アタシが緊張してると思うか?」
インシルカスラムは森内トレーナーに普段通りの笑顔で答える。
メイクデビューは誰にとっても初めての公式戦となるレース。
そして、今回出走する12人のうち、11人は無慈悲にも「1戦0勝 未勝利」と記録に書かれてしまうことが確定する世界だ。
それを必要以上に恐れ、緊張や動揺で思うように実力を発揮できないウマ娘は少なくない。
だが、インシルカスラムにそんな心配は無用らしい。「1戦1勝」と書かれる未来しか考えていないのだろう。
「いや、今更愚問だったか。ここまで来たらトレーナーの俺ができることはインシーを信じて見守ることだけだ」
「へへ、それじゃ、アンタは安心してゴールで待ってろよな!それだけでいいから!」
インシルカスラムは森内トレーナーを指さして勝利宣言をして、ゲートに続く地下バ道へと向かっていった。
インシルカスラムと別れた後、森内トレーナーは関係者限定の観客席に向かう。
ゲートからゴールまでを一瞥できる特等席だ。
といっても、多数の記者やウマ娘が押し掛ける芝に比べて、いるのは出走者のトレーナーくらいのもので、相変わらずがらんとしている。
誰もダートのメイクデビューなんかに興味がないのだ。
森内トレーナーも、模擬レースの時と同じように最前列の手すりに体重をかけて、ゲートにいるインシルカスラムに目を合わせる。
するとそこへ。
「隣、いいかしら?」
声の主は森内トレーナーの返答を待たずに隣にやってくる。
振り向くと、そこには銀髪、つまり芦毛のロングヘアのウマ娘がそこにいた。
ややつり目で強気そうな雰囲気のウマ娘で、金色の剣、おそらくカトラスを模した髪飾りを左耳側に着けている。
制服を着ているが、インシルカスラムとは違う。
深緑をベースにした笠松トレセン学園の制服だ。
そして人気のないダートのメイクデビューの関係者席にわざわざやって来るようなウマ娘。
初対面だが、名乗られなくても大体見当はつく。
「……フルセイルサルート、かな。実際に会うのは初めまして」
「自己紹介は必要ないかしら、インシーのトレーナーさん」
「藤正とは会ったか?」
「ええ。私のトレーナーはインシーを、そしてあなたを負かせるつもり満々みたい。もちろん私も」
印象だけでなく、話し方や態度も強気で高飛車な女王様、と言った感じだ。
まるで「私が勝つのは当たり前のことよ」と言っているかのよう。
「なるほど、敵情視察ってところか。好きに見ていくと良い。隠すことはない」
「言われなくても」
視線を戻すと、すべてのウマ娘のゲートインが完了するころだった。
ガコン。
ゲートが開いて、ウマ娘が飛び出す。
何人かのウマ娘が先手を打とうとするが、ここでもインシルカスラムがやや強引に前に行った。
主導権を握るにために一番前を取りたい。
しかし、あまり一番前を取ることに執着しすぎれば、無駄なスタミナ消耗にもつながりかねない。
「インシルカスラム、ハナを進んで後方3バ身……」
「よし、模擬レース通り、うまくセーフティリードを取れている」
実況を聞き、森内トレーナーは心の中でガッツポーズをする。
短期決戦でサッと先頭を取り、取った後は適切な距離を保って前に行き過ぎない。
それが逃げウマ娘として最も無駄なスタミナ消耗の少ない、効率的な主導権の取り方だ。
「あら、理論派なのかしら?」
フルセイルサルートはインシルカスラムに視線を合わせて値踏みを始める。
「そう言えるかもしれないな。だが、最も注目するべきところは」
インシルカスラムはゴールが近づくにつれてどんどんとリードを広げていく。
「残り400m、インシルカスラムさらにリードを広げる!これは大勢決まったか!」
4バ身……4.5バ身……5バ身……。
ゴールに向かいながらもインシルカスラムはどんどん後方との差を突き放していく。
小細工を弄した芸当というよりも、これはそもそもスピードとパワーの圧倒的な差が見せる光景。
「インシルカスラム、他を寄せ付けず1着でゴールイン!これは文句なし!」
観客席からでも、インシルカスラムがガッツポーズをして喜んでいる様が見て取れた。
基礎力がしっかりと強いことに加えて、一目見たフルセイルサルートに理論派では?と思わせるほどの冷静さ。
これは一筋縄では勝てそうにない。とフルセイルサルートが悟った瞬間だった。
「このフルセイルサルートってもしかしてシングレ組と関わりがある?」と思ったそこのあなた。
正解!
コメントいただければ泣いて喜びます!ぜひお願いいたします!