ー-ー94ーーー
「--君の意志が固いことは伝わった」
中央の委員長の男はでは本題に入ろう、という風にインシルカスラムに顔を近づけた。
「森内洋一は1月末で罷免される。続けるつもりなら、トレーナーの引継ぎを行わねばならない」
「君は確か逃げウマ娘だったな。ガルディアコダンの担当をしている打出康隆などは適任だろう」
委員長の男は考えながらなのか、インシルカスラムではなく右上を向きながら話す。
おそらく、委員長の男本人は、インシルカスラムのためにできることとして、代わりのトレーナーを精一杯考えているつもりなのだろう。
「--もちろん、君の意志で共に歩みたいトレーナーがいるなら……」
委員長の男はそこまで言って視線をインシルカスラムに戻した。
刹那、委員長の男は目を見開く。
インシルカスラムの両耳は、ペシャッと完全に後ろに倒れていた。
完全に逆鱗に触れてしまった。
「今のトレーナーがいいんだよ!なんで勝手に変えようとしてんだ!?」
一瞬、男たちは状況が呑み込めないようにポカンとしていた。
「……当たり前だろう。森内は君を故障させてしまったんだろう?」
「だから!!"アタシがいつクビにしろって言った"!?」
そこまで詰め寄られてようやく男たちは状況を理解した。
インシルカスラムの意志で、自分を故障させたはずの森内トレーナーと一緒に歩みたいのだ。
だが、そこまで理解できても、男たちにはインシルカスラムが森内トレーナーを庇っているように聞こえるだろう。
「……庇わなくていい。君の本心を――」
「アタシが嘘言ってるように見えるってのかよ!?」
インシルカスラムは話を最後まで聞くことなく男たちに怒り続ける。
「レース辞めるだとか、トレーナー変えるだとか頼んでもないことベラベラ並べやがって!」
「"アタシのことを、アタシ抜きで勝手に決めんじゃねえ!!!"」
今回の悲劇の当事者本人に怒鳴りつけられて委員長の男は思わず2,3歩たじろぐ。
インシルカスラムのために設立された査問委員会。
その委員たちがやっていたことは普通のウマ娘なら為になることだっただろう。
だが、当のインシルカスラム本人にとってはことごとく逆効果でしかなかったのだ。
「外まで聞こえてますよ。病院ではお静かに」
その時、コツコツと靴音を鳴らして、インシルカスラムの担当医が話に割り込んできた。
「……と何度も申し上げているのですが、インシーさんに静かにしろという私が間違っているのでしょう」
担当医は査問委員会の男たちに向き直り、ため息をついた。
「インシーさんは懸命に治療中です。あまり刺激しないでやってください」
「し、しかし我々はインシルカスラムの為を思って……」
「為を思ってこんなに怒らせたんですか?」
痛いところを突かれた委員長の男はまたもや黙る。
「本日のところはお引き取り願います。あなた方が存在するだけでインシーさんにとっても、他の患者さんにも悪影響です」
「……承知した」
病院で医者に出て行けと言われれば、査問委員会の男たちも従わざるを得ない。
納得しないまま、3人の男たちはインシルカスラムの病室を後にする。
男たちの姿が見えなくなってから、インシルカスラムは医者に少し気まずそうな顔をした。
「ごめん先生、怒鳴ったりしちゃって」
「まあ、構いませんとは言えませんが、気持ちは分かります。私はあなたのファンですからね」
ようやくあらすじ回収ができました。
彼らはインシーに優しくしている。
でも、インシーは優しくしてくれ何て頼んだのか?
森内トレーナーはインシーが病弱なウマ娘であることを知っていながら、無理な連闘させた結果、骨折させてしまいました。 あなたの意見は?
-
トレーナー失格だ!クビにしろ!
-
ペナルティを受けるべきだ!
-
事情があったなら仕方がないのでは?
-
トレーナーは何も悪くない!