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「温泉にインシーさんを連れていきませんか?」
ある日、急に病院の診察室に呼び出された森内トレーナー。
インシルカスラムのファンでもある担当医は森内トレーナーにインシルカスラムと温泉に行くことを勧めていた。
「湯治か……」
森内トレーナーは顎に手を当てて考え込む。
確かに、ウマ娘と一緒に温泉に行くトレーナーはちょくちょくいる。
商店街の福引の特賞として温泉旅行券のペアチケットが進呈されるのは有名な話だ。
また、福引でなくとも"ご褒美"の一環として温泉を予約するトレーナーは多い。
が、"治療"の目的で温泉に行くのは中央トレセンにおいては少し珍しいかもしれない。
「馴染みはないかもしれませんが湯治によって骨折の症状が改善することはウマ娘医学界でも証明されています」
「もちろん、劇的に改善するわけではありませんし、快復までの期間が何日短縮する、と厳密に申し上げられるわけではありません」
人間と同じで温泉に入ったからと言って急に歩けるようになるわけではない。
温泉による治療の効果は医学的に有意に差がある、という結論こそ出ているが、正直その効果のほどは眉唾物と紙一重だ。
「それでも、インシーさんのためにできることは何でも取り入れてみてはいかがでしょうか。少なくとも逆効果にはならないはずです」
「ありがとうございます。インシーもそろそろ病室の景色に飽きてきた頃でしょう。善は急げ、早速インシーを連れ出します」
医者と森内トレーナーは顔を突き合わせて頷いた。
診察室を出る際に、森内トレーナーはふとこの小旅行について考えをめぐらす。
2人だけでは行けない。インシルカスラムは未だに1人で歩くことができないため、温泉の出入りには誰か付き添いが必要だが……。
「そういえば……」
森内トレーナーの頭に電球が付き、指を鳴らす。
同行させるにピッタリの人物がいることを思い出した。
「ひろーい!」
扉の向こうに広がる露天風呂にインシルカスラムは喜んでいる。
今日はあまり他の客もおらず、ほぼ貸し切り状態だ。
「疲労回復に効果のある秘湯だ。私のオススメだぞ」
付き添いに来てくれたオグリキャップは自慢げな顔でインシルカスラムをお湯まで連れていく。
――そう、今回の温泉旅行に付き添いとしてピッタリな人物だったのはオグリキャップ。
伝説の有馬記念を制し、ローテーションがひと段落していたオグリキャップは温泉旅行の同行を快く承諾してくれた。
もともと秘湯巡りが趣味なうえにインシルカスラムにとって最も仲のいい先輩。これ以上の逸材はない。
「インシー、飛び込んだり泳いだりしたらダメだからな。温泉ではリラックスだ」
「はーい。まあ、今はしたくでもできないしね……」
インシルカスラムはゆっくりお湯につかっていく。特に痛みは感じない。
腰を下ろしたインシルカスラムは露天風呂の先にある絶景を眺める。
レース場の誰もいない景色とはまた違った気分に浸ることができ、これはこれで悪くないね、とインシルカスラムは心で感想をつぶやいた。
「あー気持ちいい!今はしっかり休んで、また治ったらがんばらないとなー!」
インシルカスラムはぐいーっと背を伸ばして精一杯リラックスする。
オグリキャップもまた、温泉の温かさをしばらく楽しんだ後に。
「インシー、君のトレーナーについてなんだが……」
この話、本来は無人島シナリオが最新のときに書いたもので「治療目標で温泉が取り入れられてるならトレーニング中ばんばん温泉に入ってるだろうが」と思って書いたのですが。
ゆこま温泉シナリオでトレーニング中ばんばん温泉に入りだしたので少々改編。
森内トレーナーはインシーが病弱なウマ娘であることを知っていながら、無理な連闘させた結果、骨折させてしまいました。 あなたの意見は?
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トレーナー失格だ!クビにしろ!
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ペナルティを受けるべきだ!
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事情があったなら仕方がないのでは?
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トレーナーは何も悪くない!