「インシーは~」という人と「インシルカスラムは~」という人がいると思います。
前者がファンです。
後者はこれから議論するウマ娘についてよくわかってねえカスです。
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「じっくり考えるとは言うが、議論の余地などあるのかね?」
話を切り出したのは、賛成派、つまり森内トレーナーをクビにするべきと考えている側だった。
「正直、意見が分かれたこと自体、理解に苦しむ」
「1月初旬にほとんど反対派はいなかったはずだ。誰が根回しした?」
何かしら裏で糸を引いている者がいるのではないか、と賛成派は反対派に対して疑いの目を向ける。
それに対し、反対派、つまり森内トレーナーをクビにするべきではないと考えている側は強くは反論しなかった。
「確かに我々の多くは途中で意見を変えている。最初から森内トレーナーの罷免に反対していたのは秋川理事長くらいのものだ。そうですよね?」
発言した反対派の男はおなじく、反対派の席にいた秋川理事長に視線を向ける。
「うむ。ニュースや報告書を見ただけでは無理もない。インシーはトレーナーの無理難題に応えようとして壊れてしまった、君達はそう捉えているのだろう?」
秋川理事長は返事以外は賛成派に向けて質問を投げかける。
しかし、その質問に対して、賛成派の何人かが苛立ちをぶつけるように立ち上がり、机を叩く。
「当たり前だ!お前ら反対派はそう思っていないのか?」
「インシーが壊れたのは事実だ!トレーナーが壊した以外に何が考えられる!?」
「図々しいぞ理事長。元はと言えば無理難題を出したのはあなたが始まりだ」
激しい糾弾が飛んできて、秋川理事長は言葉に詰まる。
理事会の議題である以上、秋川理事長は出席しているが、秋川理事長がチャンピオンズカップへの出走を提案しなければ、そもそもこんなことは起きなかった、と考えている者は多い。
「裁定は厳しくするべきです。担当ウマ娘に怪我をさせたトレーナーが無罪放免される前例を作ってはなりません」
「森内はインシーの安全より希望を取った。優先順位を間違えたのは明らかです」
「そもそもインシルカスラムは引退させるべきだ!続行させてもう1度彼女が故障したら、我々全員の首でも償えんぞ!」
賛成派は言いたいことがたくさんある、という風に次々に意見を述べていく。
彼ら賛成派は悪人でもなければ身勝手な人物でもない。
インシルカスラムのことについて考えに考え、最善の結果として出した答えが森内トレーナーのトレーナー資格剥奪だった。
賛成派が勢いづく中。
森内トレーナーに極刑を言い渡した男が挙手をして賛成派の言葉を止めた。
彼は、反対派の席に座っていた。
「よろしいか?皆に見てもらいたいものがある」
重役の男は数センチほどの書類の束を机の上に出した。
書類のタイトルは"森内洋一のトレーナー資格剥奪に対する反対署名"。
あまり分厚い紙束ではない。
だが、ここで重要なのは署名した人数ではない。
藤正勝也、打出康隆、小原幸生をはじめとして、森内トレーナーをよく知るトレーナーたちの署名をはじめとしてインシルカスラムのコアなファンたちの名前が綴られている。
その字は、とても濃く、力強いものばかり。想いを込めに込めて自分の名前を書いたのだろう。
ウマ娘たちも、フルセイルサルート、ガルディアコダン、テンカバスターの名前を始めとしてインシルカスラムを知るウマ娘たちの名前がいくつもある。
ページをめくるとオグリキャップ、ダイタクヘリオス、ダイイチルビー、アグネスタキオンなど王道路線で名を遺す有名なウマ娘たちの署名もあった。
また、わざわざアメリカまで行って書いてもらったのか、UnveilとHighest Fellowの直筆サインまで。
何より、署名欄の一番上に書かれていたサイン。
意外と鮮やかな筆記体で、勢いよく書かれていたサインがあった。
"Incy!!"
文中でも言及していますが、彼ら役人たちは"悪"ではないんです。
どっちの意見も間違いではない、と思いながらこの話を書きました。
森内トレーナーはインシーが病弱なウマ娘であることを知っていながら、無理な連闘させた結果、骨折させてしまいました。 あなたの意見は?
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トレーナー失格だ!クビにしろ!
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ペナルティを受けるべきだ!
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事情があったなら仕方がないのでは?
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トレーナーは何も悪くない!