ブラス・トレーサーはおよそ157話まであります。
どうにか完結まで投稿できればと思いますのでよろしくお願いいたします!
ーーー99ーーー
当事者であるインシルカスラム自身が、誰よりも強く反対している。
そのサインを見て嫌でも実感が湧いてきた賛成派からはどよめきが広がった。
重役の男はどよめきが収まるのを待つと。
「--我々がここにいる意味をもう一度考えていただきたい。これはインシーのために作られた委員会だ」
「ならば、インシーが納得できる答えを出すべきではないだろうか?」
その言葉で形勢は大きく変わった。
賛成派の中のざわつきは「いや、たしかにそうだが……」といった戸惑いが見られる。
「待て!インシルカスラムはなぜこの署名にサインをした?」
「書いたのではなく"書かせた"んじゃないだろうな?」
しかし、賛成派のざわつきは収まり、負けじと反論を返す。
「ならばインシーに"書かせてみますか"?少しでも彼女について知っているなら、無理に書かせようとしたらペンをへし折られるだけだと分かるでしょう」
「この悲劇が起こるまで、森内トレーナーは3つのG1をもたらしました。彼のトレーナーとしての腕が劣っているわけではありません!」
「理由などいるか?インシーが森内と今後もタッグを組みたい、それだけ分かれば十分だ!」
もちろん、反対派も一歩も引かない。
やがて、この議題は両派閥が激しくぶつかる論戦へと発展する。
「森内トレーナーは何も違反行為はしていない!トレーナー資格の剥奪は世論や感情に任せた私刑だ!」
「違反行為をしたかどうかは問題ではない!未然に防げた怪我をさせたのは事実だ!それだけで剥奪理由には事足りる!」
「世論の大半は森内トレーナーを罷免するべきとの意見です。URAがそれに逆らった答えを出すほどの価値があの男にあるというのですか?」
「ネットに出回っている噂の多くは悪意にまみれています。我々URAこそ惑わされない結論を出すべきです」
秋川理事長もまた、涙ながらに訴えるように論戦へと参加する。
「全ての責任は私が負うッ!理事長を辞すべきであるなら甘んじて受けよう!だから森内トレーナーを辞めさせないでくれ!」
「彼と、インシーの間にできた絆を引き裂かないでくれッ!!」
議論は与えられた時間いっぱいまで続くが、全員の意見が概ね一致する様子は全くなかった。
「--静粛に、静粛に!」
委員長が鋭く議場を制止し、議論の応酬が収まっていく。
「時間だ、これより投票を行う」
全員には小さな紙切れが配られ、賛成、反対のどちらかに丸を書いて投票箱に入れていく。
紙切れをもらってすぐに丸を書いた者もいれば、5分近く悩んでようやく決断して書いた者もいた。
「以上で審議は終了だ。皆、ご苦労だった。投票は直ちに開票され、中央トレセンへと伝えられる」
1月30日。
再び重役の男はトレセン学園を訪れ、森内トレーナーと秋川理事長を招集していた。
森内トレーナー本人に、結果を伝えに来たのだ。
「昨日、予定通り君の罷免についての審議が執り行われた」
その言葉に、森内トレーナーはこれから判決を下される身にしては吹っ切れたというか、清々しい表情をしていた。
「今更足掻いても意味がありません。どのような結果であろうとも受け入れます」
「分かった。全体の意見はまとまらず、最終的に投票によって決定した」
「君の罷免について、賛成票は22票に対し――」
投票した人数は"40人"ではなく、"40人ほど"。
彼の運命は?
森内トレーナーはインシーが病弱なウマ娘であることを知っていながら、無理な連闘させた結果、骨折させてしまいました。 あなたの意見は?
-
トレーナー失格だ!クビにしろ!
-
ペナルティを受けるべきだ!
-
事情があったなら仕方がないのでは?
-
トレーナーは何も悪くない!