ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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本来ならここが100話になる予定でした。


第112話

ーーー100ーーー

 

「反対票は23票で否決された」

 

重役の男は持っていた1枚の書類をぐしゃぐしゃに丸めた。

 

「……つまり、俺はこれからもインシーのトレーナーを続けられると?」

 

「ああ。この議題は初めからなかったことになる。秋川理事長、あなたも今回の件は不問としよう」

 

重役の男はぐしゃぐしゃにした書類をゴミ箱に投げ捨てた。

 

森内トレーナーと秋川理事長の表情が明るくなる。

 

「--感涙ッ!!やったな、森内トレーナー!!」

 

「ああ……!!インシーもきっと喜ぶ!」

 

秋川理事長と森内トレーナーは抱き合って喜びを表現する。

 

だが、重役の男はその抱擁には混ざらず、あくまで厳しい態度で接した。

 

「勘違いするな、森内トレーナー。続けられるとは言えど、インシーを故障させた事実は変わらん」

 

「はい、2度は起こさぬよう肝に銘じます」

 

重役は空いた手を腰に当ててため息をついた。

 

「全く、無駄な仕事をしてしまったものだ。自分からこの議題を上げておきながら、最終的に反対票を投じるなんてな……」

 

森内トレーナーは先ほどの投票結果をもう1度思い出す。

 

賛成22票、反対23票での否決。

 

つまり、目の前の重役の男がもし賛成票を入れていたなら賛成23票、反対22票になり、今頃森内トレーナーはクビを言い渡されていたということになる。

 

「--森内トレーナー。私が最終的に下した決断は、間違いではなかっただろうか」

 

ふと、重役の男は少し弱く言葉を漏らす。

 

それは自分の決定に自信がないようにも聞こえたが。

 

自分の決定が間違いかどうかはこれからの森内トレーナーにかかっている、とも捉えられる。

 

「はい。来年の今頃に、同じ言葉を言わせてやります」

 

打って変わって、森内トレーナーの返事は強かった。

 

 

早速森内トレーナーは病室のインシーに結果を伝えに行く。

 

「--ということだ。改めて、今後もよろしく頼む、インシー」

 

それを聞いたインシルカスラムは鼻を鳴らし、腕を組んでベッドにふんぞり返った。

 

喜ぶ、という感情とは違う。

 

「ようやく終わったのかよ。改めても何もないだろ」

 

「アタシは最初っから最後までアンタがトレーナーって言ってるのに周りが勝手にギャーギャーと騒ぐもんだから……」

 

どうやら、インシルカスラムにとって、森内トレーナーが自分のトレーナーを続けてくれるのは喜ばしいことではなく、当然のことだと思っているようだ。

 

「そうだったな。お互い今のままでいたいという気持ちは最後まで変わらなかった」

 

森内トレーナーは軽くうなずき、記憶からこの話題を消した。

 

インシルカスラムだって、罷免の話はもう二度とごめんだろう。

 

トレーナーを続けられることが決まった以上、森内トレーナーがやることは決まっている。

 

「インシー。まずはケガを治さなければ何も始まらない。まずはリハビリに専念してくれ」

 

「分かった、トレーナー!次は帝王賞って約束しちゃった。それでいい?」

 

「医者の見立てでは間に合うだろう。あの医者がヤブ医者だとも思えん。次の目標はそれで行こう!」

 

インシルカスラムと森内トレーナーは固い握手を交わして次の目標に合意した。

 

もし、森内トレーナーがURAを去り、代わりのトレーナーが就いていればどうなっていただろうか。

 

例えインシルカスラムが知っている3人のトレーナーになったとしても、この時点で食い違う意見を譲らず大喧嘩に発展していただろう。

 

やはり、インシルカスラムには森内トレーナーしかいない。

 

そうじゃないだろうか?

 

 

東京大賞典から、2人は地獄ばかり見てきた。

 

だが、ようやく、そこから抜け出す糸口をつかんだ。

 

 

インシルカスラムの物語は、まだまだ続く。

 




ということで7章「誰が悪いの?」は終了です。
インシーにはまだシニア級があります。

森内トレーナーはインシーが病弱なウマ娘であることを知っていながら、無理な連闘させた結果、骨折させてしまいました。 あなたの意見は?

  • トレーナー失格だ!クビにしろ!
  • ペナルティを受けるべきだ!
  • 事情があったなら仕方がないのでは?
  • トレーナーは何も悪くない!
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