ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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さあトレーナーの件もどうにかなったし、次の帝王賞まで一気に突き進むか!


8章 Rechallenge(帝王賞編)
第113話


ーーー101ーーー

 

インシルカスラムの骨折は全治3か月。

 

つまり、年末に故障したので、4月になってようやく歩けるようになる、というのが医者の見立てだった。

 

時間は飛んで3月中旬。

 

芝であれば大阪杯や高松宮記念、クラシックのトライアルレースに向けて本格的にスタートする時期だが、ダートは2月のG1を過ぎるとひとまず大きなレースはない。

 

川崎記念はフルセイルサルートとガルディアコダンの一騎打ちになり、フルセイルサルートが勝利。

 

フェブラリーステークスはテンカバスターが2連覇を果たした。

 

「あー!ケガしてなかったらどっちもアタシのだったのにー!」

 

2連闘してケガしたくせにインシルカスラムは、川崎記念とフェブラリーステークスをどっちも出たかった、という気持ちで見ていた。

 

「そんなインシーさんに朗報です」

 

するとそこへ担当医が入ってきた。

 

「いい知らせってこと?」

 

「ええ。去年、私は治療に少なくとも3か月かかると言いましたよね?」

 

医者はレントゲン写真をインシルカスラムに見せた。

 

つい先日撮ったインシルカスラムの左足のレントゲンだ。

 

はっきりと折れていた去年の時のレントゲンに比べ、写っていた脚に損傷は見当たらなかった。

 

「これ……治ったってこと!?」

 

「もう少しだけ様子を見ましょう。異常がなければ4月に入る前にリハビリを始めたいと思っています」

 

「お願いお願い!アタシ早く元通り走れるようになりたいの!」

 

これまでになく嬉しそうにでインシルカスラムは担当医に詰め寄った。

 

「……これ以上短くなることはないと思っていましたが、温泉の効果でしょうか。想像以上でしたね」

 

 

3月も終わりに入る。

 

インシルカスラムは看護師に付き添われながらリハビリルームにやってきた。

 

「この時点で予定より早いペースで治っています。焦らず行きましょう」

 

インシルカスラムは頷いて手すりに手をつき、左足の靴をコンコンと鳴らす。

 

……大丈夫だ、痛くない。

 

「まずはゆっくり歩いてみましょう。手すりを頼りながらで構いません」

 

看護師は5mほどの手すりをなぞる。

 

「歩くだけでしょ?平気平気!痛くなかったし手すりなんか使わなくても……」

 

インシルカスラムは手のひらをひらひらと看護師に見せながら歩きだす。

 

1歩、2歩……問題なく歩けている。

 

しかし。

 

3歩目で左足の膝がクシャっと崩れた。

 

「あれっ?あっ、危なっ!」

 

インシルカスラムは尻餅をつきそうになり、慌てて手すりを掴む。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あ……うん。痛くはなかったんだけど……」

 

全然脚に力が入らなかった。

 

「もう1回……」

 

インシルカスラムは手すりを掴んで立ち上がり、もう一度しっかりと両足で立つ。

 

しかし。

 

今度は1歩目すら踏み出せず、左足にまた力が入らずに身体が左に倒れこみ、手すりにもたれかかる。

 

まるで自分の左足が新聞紙で作られた義足みたいになってしまったかのようだ。

 

「あ、あれ……!?」

 

「せ、先生は完治したとおっしゃっていましたが……」

 

これには看護師も原因が分からないという風に不思議そうな顔をしている。

 

「なんで立てないんだろうな……このっ!」

 

インシルカスラムは思うように力の入らない己の左脚に苛立ち、ダンッ!と左足を踏み鳴らして両足で立とうとする。

 

 

ビキッ。

 

「あ゛……っ!?」

 

左脚の神経に、鋭い痛みが走った。

 

インシルカスラムは呻いて姿勢を崩す。

 

手すりすら掴むことができずに尻餅をついて、床に倒れこんだ。

 

「ダ……ダメですインシーさん!今日のリハビリは中止にしましょう!」

 

看護師は慌ててインシルカスラムを抱え上げる。

 

インシルカスラムの担当医の診断は、間違っていたのだろうか……。




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