方法は、どこかにあるはず。
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今すぐ走りたい。
今すぐトレーニングして、3カ月もある遅れを取り戻したい。
フルセイルサルート、ガルディアコダン、テンカバスターが走っている様をみて、インシルカスラムはそんな感情がどんどん湧き上がってくる。
なのに、身体がついていかない。
今、普通に歩くことすらできない。
「アタシ、なんでこんな身体が弱いんだろ……」
インシルカスラムは大きなため息をついて、地面をいじりだした。
もしこの状態をインシルカスラムのファンが見たら「あのインシーがため息だと……!?」と膝から崩れ落ちるに違いない。
「あー!クソ、見てらんねえ!」
それを見たのか、突如、ガルディアコダンがインシルカスラムに向かって走ってくる。
そして、インシルカスラムの腕を乱暴につかんで立ち上がらせた。
「ちょっとコダン!アタシはまだ――」
「だからってこんなお前を放っておけっていうのか!?」
うまく立てないインシルカスラムを無理やり手で支え、ガルディアコダンは詰め寄る。
「インシー、お前はいつまでもいじけてるような情けねえウマ娘じゃねえはずだろ!」
「……そんなこと言ったって」
インシルカスラムは歯を食いしばりつつうつむく。
歩けもしないのにガルディアコダンにケンカを売れというのか。
「黙ってついてこい!オレに去年みたいなクソ生意気な態度とって見せろ!」
そう言うと、ガルディアコダンはインシルカスラムの腕を引っ張り出してダートコースに連れていく。
「あ、コダン待って……!」
そのまま引きずられるわけにもいかず、インシルカスラムは歩を合わせだした。
すると。
後ろから背中を押された。
「何も考えずついていきなさい、インシー」
後ろからの声はフルセイルサルートだった。
「今日くらいは背中押してあげるわ。ほら、さっさと行かないと今度はグーで押すわよ」
「アタシをもう1度病院送りにする気かコイツ?」
遠回しにモタモタしてると殴り飛ばすぞ、と言われとりあえずインシーは言われた通り何も考えずについていく。
……軽いジョギングくらいのスピードだ。
もちろん、全力疾走とは程遠いが、歩けもしない奴がついていけるスピードじゃない。
「でも、インシー……!」
遅れてやってきたテンカバスターは、驚きと嬉しさが混じった表情でインシルカスラムを指さした。
"インシルカスラムは、一緒に走っていた。"
左脚も使って。姿勢も崩れることなく。
「あ……痛く、ない……」
ガルディアコダンに連れられて痛いと感じてる場合じゃなかったのだろうか。
「へへへ、大成功だぜ、サルート、テンカ!」
ガルディアコダンは後ろを向いて笑うと、さらにスピードを上げる。
「あ、ちょっと、それにはついて……」
いけている。
ガルディアコダンと同じペースで、脚を回せている。
インシルカスラムにとって、久しぶりの感覚だった。
思いっきり身体を動かせることも、早く鳴る心臓の鼓動も。
ウマ娘にとって、何物にも代えがたい、これ以上ない喜びだった。
絶望の終着点。連れて行ってくれたのは、仲間でライバル。