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「コダン、アタシ走れてる!痛くないよ!」
「そうかよ!オレに感謝しろよな!」
友人に背中を押してもらい、引っ張ってもらったことでトラウマを忘れ、走れるようになったインシルカスラム。
走るトラウマを抱えたインシルカスラムを無理やり走らせることで治す荒療治、普通のトレーナーなら躊躇うだろう。
だが、結果的には大成功。
「今くらいは素直に感謝しておくよ!ありがとなコダン!」
そしてまともに走ることができた、とわかるようになると。
今まで考える余裕のなかったことが考えられるようになってきた。
今、前にはガルディアコダンに引っ張られながら、後ろにはフルセイルサルートが見守るように走ってくれている。
つまりこの状態で走ることは……
「それとコダン、もう1つあるんだけどさ……」
「なんだ?オレにできることなら何でも言ってくr」
「"アンタが前なのムカつくんだけど!!"」
インシルカスラムはガルディアコダンの手をバッと乱暴に振り払うと。
自分の脚で全力疾走しだしてガルディアコダンを追い抜いた。
「おい!元気になったと思ったらこれかよ!待てインシー!それはオレのセリフだー!!」
ガルディアコダンは去年みたいなクソ生意気な態度を取り出したインシルカスラムに、まんざらでもない顔をしながら追いかけていった。
「まーた始まったわ。でも始まらないより断然いいわね」
「インシー……よかった」
「ううっ……!」
少し離れたところでは、それぞれの担当をしていた4人のトレーナーたちがウマ娘たちを見守っていた。
ガルディアコダンによってPTSDを克服したインシルカスラムを見た打出トレーナーは、あまりの感動に涙を流していた。
「これぞ漢の……いえ、乙女の友情……ッ!」
「歩けないインシーをグラウンドに連れてくるなんて聞いた時はマジかこいつと思いましたが……」
藤正トレーナーはやれやれと呆れるように首を振った。
それは俺達にはできないことをやりましたね、という風だった。
「さすがインシー担当トレーナー。他の誰にも、あんな荒療治はできませんよ」
「ああ。オグリに言われてな。"インシーにとって最善の選択"を考えた結果がこれだったんだ」
「その選択、褒めてやるぜ。これでようやくテンカとの約束を果たせるな」
小原トレーナーもまた、4人のウマ娘を見たまま軽く笑っていた。
それを聞いた森内トレーナーはふとテンカバスターに目をやる。
遠くから見ても控えめながら嬉しそうな仕草だ。
「ああ。テンカもインシーと戦えるのを喜んでいる」
「おっと、それじゃ60点だ。テンカバスター担当の俺が、心の中で思っていることを教えてやる」
小原トレーナーは森内トレーナーを指さすと、テンカバスターにその人差し指を向けた。
「"インシーを討てば大手柄だ。絶対に逃すものか。"ってな」
元気になったとたん早速これだよ!
でもようやく、全ての問題が、26話かけて片付いた!