インシーを例えるなら何がいいと思いますか?
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「ごっついウマ娘やで……」
藤井記者は思わず言葉を漏らすと、観客席をなぞるインシルカスラムの写真を撮りだす。
「派手な記事を頼むぞ、藤井記者」
「任しといてください」
藤井記者は一眼レフに収まったインシルカスラムの出来に満足しつつ、この記事の見出しのタイトルを考える。
「しっかし、まるで鉄砲玉みたいなウマ娘やな。あ、一応女の子やし失礼やったか……」
「一応も何もインシーが男だったことは1度もないぞ……」
森内トレーナーは軽くツッコミを入れつつ。
「俺の意見だが、鉄砲玉じゃインシルカスラムは足りない、とか言いそうだな」
「そら予想外の返事やわ。なんや、ほな大砲とかがええんですか?」
藤井記者がインシルカスラムを鉄砲玉と呼んだことに対してひらめきを得た。
「……"スラム"ファイア、という単語を知っているか?」
「ほお……」
なかなかうまいことを、と単語を知っている藤井記者は感心した。
スラムファイア、とは本来ウマ娘の世界で使われる単語ではない。
もともとはウィンチェスターM1897やイサカM37など、昔に開発された散弾銃、ショットガンで使える射撃テクニックのことだ。
引き金を引いたままポンプアクションを連続で行うことで、本来連射できないショットガンを無理矢理連射することができる。
そして、このスラムファイアとは暴発の一種であり、新しい銃では使えなくなっている。
なぜか?
銃にとって想定外の行動であるスラムファイアを繰り返すと、簡単に銃が"壊れてしまう"からだ。
まさにその名の通り、壊れやすいながらも意に介しないかのように敵を滅多打ちにするインシーらしい単語と言える。
「言い出しっぺのボクからそうかもしれへんけど、そんな可愛さの欠片もない二つ名でええんですか?」
「インシー担当の俺が言うんだから構わんさ。本人も可愛く取られることは望んでないだろう」
「ほな遠慮なく書かしてもらいます」
ダートウマ娘だからな、と森内トレーナーは独り言をこぼした。
"インシルカスラム、平安ステークス圧勝!5カ月ぶり、奇跡の復活!"
"--彼女の荒々しい逃げはまるでショットガンを彷彿とさせる。対戦したウマ娘は、まるで散弾でズタズタに引き裂かれるような感覚を味わったことだろう。"
"たとえ壊れようと限界以上の力を出す。スラムファイアという言葉がインシー以上に相応しいウマ娘はいない。"
後日、部室で平安ステークスで勝利した記事を渡されたインシルカスラムは、何とも言えない表情で自分の記事を読んでいた。
「なんだ、気に入らないか?」
「いつのまにかアタシの二つ名、銃にされてるし……」
ショットガンのようだ、と言われて褒め言葉だと感じるウマ娘は相当ヤバイ奴だろう。
だが、記事を読み進めていたインシルカスラムは何とも言えない表情からだんだんとまんざらでもない表情になっていく。
インシルカスラムはヤバイ奴だったようだ。
今更かもしれないが。
「でも、これがアタシの走りって知ってもらえたんだな!まだまだこんなもんじゃない!」
「テンカ!待ってろよ、ブッ潰しに行ってやる!」
インシルカ"スラム"だから"スラム"ファイアってわけです。
まあでも、おひんばにつける名前ではないか…