忘れちゃったら24話参照。
ーーー111ーーー
パドックでの紹介が終わり、ウマ娘たちは大井レース場のゲート前に集合する。
テンカバスターやインシルカスラムも集まり、後は係員のゲートイン指示を待つだけ。
「テンカ!」
だったのだが、ゲートイン前にインシルカスラムはテンカバスターに声をかけた。
「アタシ、アンタに聞きたいことあるんだけど!」
「何?」
「--アンタさ、2番人気なのが悔しくないの?」
インシルカスラムはやや不満そうにテンカバスターを見上げた。
この私が2番人気ですって!?
ふざけんじゃねえ、このオレが1番だろーが!
ガルディアコダンやフルセイルサルートなら言葉にするかどうかはともかく。
そういう2番人気でいることが悔しそうな態度をインシルカスラムに隠さなかった。
だからインシルカスラムに食って掛かり、インシルカスラムもまた喜んでその喧嘩を買ってきた。
だが、目の前にいるテンカバスターは、そんな2人に比べてあまりに冷静すぎる。
まるで自分は何番人気でも構いませんよ、という風に素っ気ない。
「うん。別に悔しくなんかない」
そして案の定、テンカバスターは首を軽く横に振って、自分の人気に興味がないことを示した。
あれだけ病室で誓っておいて、真面目に戦う気がなさそうなその姿勢は、インシルカスラムの神経を逆なでしそうになるが……。
「だって、インシーを倒すことしか興味ないもの」
テンカバスターは少しだけ目を細め、重々しい強者のオーラを出した。
予想以上に自分に矢印が向いていることに対して、インシルカスラムは唾をのんだ。
人気とは単に周囲の勝敗予想から導き出された結果でしかない。
別に1番人気だろうが、2番人気だろうが、16番人気だろうがどうでもいい。
何ならG1の帝王賞である必要すらなかった。
テンカバスターは"インシーと勝負できれば"、後は何でもいいのだから。
「ッ、なら望み通り正面からぶつかってやる!やれるもんならやってみろ!」
「その言葉、ずっと待ってた」
それを聞いたテンカバスターは、満足気にゲートインする。
まるで、これから獲物を狩って、欲望のままに貪ろうとしている猛獣かのよう。
狩られてたまるか。という念を後ろから送りながらインシルカスラムもゲートへ入った。
「テンカの奴、美味そうな獲物を見つけた時の顔しやがって」
関係者席では、テンカバスターの様子に小原トレーナーも嬉しそうだ。
隣にいるインシルカスラムを獲物扱いされた森内トレーナーはやや苦笑いだ。
「去年会った時は物静かな子だと思っていたんだが、三度の飯より戦が好きなウマ娘とはな」
「そりゃあ見る目がねえな森内」
テンカバスターは生まれながらの戦闘狂だぜ、と小原トレーナーは自慢気に話す。
「俺は見る目がないかもしれんが、さてインシーはどうかな?」
森内トレーナーもまた自慢げにインシルカスラムを指さした。
その様子に小原トレーナーも興味深そうにインシルカスラムを見つめる。
「インシーは見る目がありそうだ、こいつは期待できるぜ」
「最後のウマ娘のゲートインが完了しました」
実況がスタートまで秒読みの合図を送ると、大井レース場が静まり返る。
「……スタートです!」
武士かな?と思ったそこのあなた。
せ い か い。