ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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インシーは自分のためにも、誰かのためにも負けられない。
テンカはただ自分が楽しみたいだけ。

どっちも強キャラじゃないでしょうか?


第126話

ーーー114ーーー

 

帝王賞も残り400mを切る。

 

順位は変わらずインシルカスラムが先頭となって最終直線へ。

 

2番手に上がりつつあるテンカバスターとの差は1バ身あるかないかといったところ。

 

インシルカスラムはテンカバスターからのプレッシャーに圧され、差がだんだん縮まるかのように思われた。

 

 

「追い抜けない……!」

 

しかし、プレッシャーを感じているのは何もインシルカスラムだけではなかった。

 

テンカバスターは経験豊富なダートウマ娘だ。

 

インシルカスラムがどれくらい強いか、今のリード差ならどれくらいのスピードで走ればゴールまでに追い抜けるか、全部勘である程度分かる。

 

その"勘"は。

 

このままでは負けるぞ!と激しく警鐘を鳴らしていた。

 

 

「……ならこのままじゃいられない!」

 

テンカバスターは歯を食いしばってさらに加速する。

 

テンカバスターは目の前にいた2位のウマ娘を容易く追い抜き、残りの敵はインシルカスラムただ1人。

 

1と1/2バ身の差は、どんどんと縮まっていき、やがて1/2が消えるくらいまでの距離になる。

 

……しかしインシルカスラムとの差は思った以上に縮まらない。

 

インシルカスラムもまた、ラストスパートでスピードを上げてどんどんと集団を突き放して逃げている。

 

目の前にいるはずのインシルカスラムが、まるで地平線の彼方にいるかのように遠い。

 

いつの間にか、テンカバスターの視界からは2が書かれたハロン棒すらも消えていた。

 

残り200mもない。

 

インシルカスラムとの差は……1バ身!

 

さっきからまったく縮まらない!

 

「……インシー!!」

 

「"インシーーー!!!"」

 

たった2mの距離しか離れていないのに、テンカバスターは喉が潰れそうなほどの絶叫を上げて、インシルカスラムの名を叫んだ。

 

そこまで叫ばないと聞こえないんじゃないかと思うほど、インシルカスラムは遠くにいるように感じたのだ。

 

「強かったよ、テンカ」

 

自分の名を叫ばれたインシルカスラムは、ぽろっと漏らすように呟いた。

 

「だから、アンタに勝てたこと、自慢にしてやる!」

 

インシルカスラムは、そう叫び返してゴールへと向かう。

 

 

「ふふっ……」

 

それを聞いたテンカバスターはレースの結果を悟り、口角を上げた。

 

――それが、たまらなく嬉しかった。

 

まもなく、テンカバスターはいわゆる完全敗北を叩きつけられる。

 

それは、テンカバスターにとって本望だった。

 

自らがあらゆる手を尽くして、それでもなお敵わぬ強者に討ち取られるのなら。

 

そして、その強者に、自らの強さを認めてもらえたのなら。

 

戦士として、これ以上美しい散り様などなかろう。

 

 

「インシルカスラムだ!インシルカスラム、逃げ切ってゴォォォルイン!」

 

「テンカバスターを打ち破り、今年の帝王賞覇者はインシルカスラムとなりました!!」

 




実に74話ぶりの優勝。
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