ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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むしろ雨天だからこそ燃えます。
こんなのでビビるかよ!ってね。


第131話

ーーー119ーーー

 

JBCレディスクラシックに出走する16人のゲートインが完了する。

 

もちろん、スターティングゲートに屋根などついておらず、16人がゲートインする数分間の間、ウマ娘たちは濡れながらじっと目の前のゲートが開くのを待たなければならない。

 

そんな状態で雨にも負けず、寒さにも負けず、いつも通りのコンディションを出せるかどうかはレースの勝敗に大きく影響する。

 

「……スタートです!綺麗なスタート、出遅れなし」

 

ゲートが開いて、各ウマ娘が一斉に飛び出した。

 

しかし、雨ごときで気が散って出遅れをかますような奴はJBCレディスクラシックにはいない。

 

16人のウマ娘たちは晴れの日と変わらないパフォーマンスで、レースの序盤を作り上げていく。

 

もちろん、インシルカスラムとフルセイルサルートも。

 

「先頭争いに勝ってレースを引っ張るのは予想通りインシルカスラム!2番手がすぐ後ろで追走します」

 

「フルセイルサルートは5番手に位置しました」

 

 

1800m中、およそ300mが終了し、レースは序盤を過ぎて中盤のコーナーへ。

 

インシルカスラムは先頭こそ取れたが、2着にいるウマ娘との間は1バ身も離れていない。

 

3着、4着も同じく団子状態でインシルカスラムに追走しており、いつでも追い抜けそうな雰囲気を出している。

 

インシルカスラムお得意のセーフティリードをあらかじめとる作戦はこの時点で破綻している。

 

「(全然離せない……コダンでもない奴らなんかに!)」

 

そして5着にいるのがフルセイルサルート。

 

1着にいるインシルカスラムと5着にいるフルセイルサルートの差がようやく2バ身と3/4といったところか。

 

まるで「3バ身離せなきゃ安心できないんでしょ?だから2.75まで詰めてあげるわ」とインシルカスラムを揺さぶっているかのようだ。

 

そして実際、2.75と3では逃げ一辺倒なインシルカスラムにとって感じるプレッシャーが0.25という数字以上に重い。

 

そんなはずはないのに、フルセイルサルート含めた4人が協力してインシルカスラムを追い詰めているかのようだ。

 

「ありゃ去年も出てた逃げウマ娘たちですね」

 

関係者席で藤正トレーナーが2着から4着までのウマ娘をなぞった。

 

「いやー懐かしい。このG1は外すまいとあの子たちのことは去年、研究に研究を重ねました」

 

「……お前だけじゃない。俺だってあの子たちのデータは把握していた」

 

それでも予想外だ、という風に森内トレーナーは唇をかんだ。

 

問題は2着から4着までの3人のウマ娘たちではない。

 

フルセイルサルートがその子たちを利用してインシルカスラムを追い詰めているかのように感じるのだ。

 

ひいては、5着にいるはずのフルセイルサルートが、JBCレディスクラシック全体を支配しているようにも。

 

「アンタがどれだけデータを頭に叩き込んで、インシーがどれだけリハーサル重ねても、俺とサルートのほうがJBCレディスクラシックのことは良く知ってるんです」

 

「なんせ、去年実際に走ってますからねえ」

 

 

「(それに、逃げウマ娘はあなただけじゃないのよ、インシー)」

 

4番手にいるウマ娘をスリップストリームにしながら、フルセイルサルートはほくそ笑む。

 

「(川崎記念でコダンと戦った時、インシーによく似ていると思ったわ)」

 

今年、インシルカスラムが病室で指をくわえてみているしかなかった川崎記念で、フルセイルサルートはガルディアコダンと一騎打ちになった。

 

そして、ガルディアコダンを下して勝った。

 

それだけじゃない。

 

この年シニア級となり、コンスタントにG2やG3にも出場したフルセイルサルートは様々な逃げウマ娘と戦った。

 

そして、その多くのレースで勝利を重ねてきた。

 

「(私がこの中央で成し遂げたい目標はあと1つ!)」

 

 

「インシー!!あなたに勝つことだけよ!!」




5カ月のブランクがある間、フルセイルサルートはずっと戦い続けた。
今や経験値は逆転している。
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