ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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どうなった?


第134話

ーーー122ーーー

 

インシルカスラムとフルセイルサルートは、大井レース場のゴールを駆け抜けて。

 

ゴール後10秒くらいの様子を、関係者席の森内トレーナーと藤正トレーナーは見守っていた。

 

インシルカスラムはゴール後にゆっくりと減速した後。

 

ぬかるんだ泥沼と化している大井レース場のダートにバチャリと倒れこんでしまった。

 

まさか、また故障か、とその様子に群衆がざわつき、肝を冷やしたが。

 

倒れこんだインシルカスラムはただ激しく息をしているだけだった。

 

故障なら痛がっているはず。

 

ただ疲れ果てて寝ているだけだと理解した群衆の大半がホッと胸をなでおろした。

 

「……森内さん。インシーのあのレース後にブッ倒れるのどうにかなりません?」

 

「見てるこっちが不安になってくるんスけど」

 

不機嫌そうに、藤正トレーナーはレース後のインシルカスラムを指さした。

 

「すまんな、どうにもできん。さて藤正、ここでクイズだ」

 

あっさりと森内トレーナーは首を横に振ると、不機嫌な藤正トレーナーに向けて人差し指と中指で2を作った。

 

「インシーの特技は2つある。1つは領域。あともう1つは何だったか、思い出したか?」

 

藤正トレーナーはクソ、忘れてたと言わんばかりの悔しそうな表情で髪をくしゃくしゃとかきまわした。

 

「……"Incy Lead the Way"」

 

「正解だ」

 

森内トレーナーは自慢げに腕を組み、藤正トレーナーの不機嫌の原因である掲示板を眺める。

 

Ⅰ:11 Ⅱ:6。

 

馬身差を表す間の表示は3/4。

 

つまり、今年のJBCレディスクラシックの勝者となったのは11番のインシルカスラムだった。

 

おそらく、このレースの結果はすぐにデータ化されるだろう。

 

そこで、インシルカスラムとフルセイルサルートの差は。

 

1、3/4、1/2、1/4まで縮めることができたが。

 

土壇場でのIncy Lead the Wayで一気に飛び出したことにより、1/4、1/2、3/4と離されてゴールした。

 

そう分析されるだろう。

 

 

「……ハッ!?」

 

レース終了して10秒後くらいに、インシルカスラムは意識を取り戻した。

 

まだ激しく呼吸を繰り返していて肺が苦しい。

 

どうやらゴールした後、そのまま意識を失って倒れこんでいたらしい。

 

インシルカスラムの顔右半分にはぬかるんだ砂がべったりとくっついていた。

 

「(うぇ、ばっちい……)」

 

右目も見えなかったのでちょうどよかった。

 

そのまま背中を雨に打たれながら、インシルカスラムは呼吸を整えようとする。

 

すると、フルセイルサルートが軽く咳をして、枯れた声を整えながらやってくると。

 

「……まさか本当に死んだんじゃないでしょうね?」

 

とインシルカスラムの左足と右足をつついた。

 

インシルカスラムが痛がる様子はないし、息なら今も荒くしている。

 

「ゼェ……アタシが……ゼェ……死ぬなんて、ありえないだろ」

 

「ありえそうだから心配してんのよ!」

 

フルセイルサルートは大きくため息をつくと、インシルカスラムの赤いショートブラウスをひっつかみ。

 

インシルカスラムの腕を自分の首に回して、インシルカスラムを支持搬送のように引きずりだす。

 

絵面は負傷したインシルカスラムを搬送するフルセイルサルートだ。

 

「全く、これじゃどっちが勝者か分からないわ。あなた勝ったんだから勝ったウマ娘らしいポーズしなさいよ……」

 

拍手とインシルカスラムを称える観客席の声に見送られ、2人は大井レース場を去り、地下バ道へ行こうとする。

 

「(……全力は出したわ。気持ちでも負けてなかったはず)」

 

「(それでも勝てないのね。インシー、あなたが羨ましいわ……)」

 

フルセイルサルートは心の中でため息をついた。

 




これだけやっても結局勝ったのは全部インシーじゃない。
私はかませ犬に過ぎなかったってこと?
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