アメリカ本国ではダートが主流。2人はアメリカで有名ウマ娘。
つまりは観客席がこうなります。
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インシルカスラムはハイエストフェローと仲良く手をつなぎながら中京レース場のパドックに出る。
それほど大きくない観客席には、去年以上に多種多様な、つまりは日本人とアメリカ人で埋め尽くされていた。
どうやら去年以上に、わざわざ2人のアメリカウマ娘のために、海を越えて何万人というアメリカ人ファンが中京レース場に駆け付けてくれたらしい。
「Hang in there everyone!(みんな気合入れろ!)」
「Incy! "SLAM" the champ of last year!(インシー!去年のチャンピオンなんか"叩きのめせ"ー!)」
「今年のチャンピオンズカップもお前のモンだフェロー!」
「先行逃げ切りなんて全部差し切っちまえアンベール!」
そして、観客席のファンたちは自分やウマ娘たちの国籍になど囚われない。
思い思いに、自分の"推し"となったウマ娘を、そしてチャンピオンズカップに挑む全員を応援していた。
パドック中ずっと、インシルカスラムとハイエストフェローは仲良く手をつなぎながら歩いてきて、その2、3歩後ろをアンベールがついてきていた。
しかし、ゲート前まで近づいた時。
インシルカスラムとハイエストフェローはほぼ同時にお互いの手を振り払った。
そして、ハイエストフェローの方から、インシルカスラムを挑発的に手招きする。
「C'mon, Incy! Try'n defeat me with your front run!(来いよインシー!お前の逃げで私を打ち負かしてみろ!)」
もちろん、売られたケンカを買わないわけにはいられない。
「Sure, bring it again, Fellow!(ああ、もう1回かかって来いよ、フェロー!)」
するとその時。
インシーの後頭部に、指が突き付けられた。
もしこれが拳銃だったなら、振り向く暇もなく、インシルカスラムは頭を撃ち抜かれている。
そして、インシルカスラムの後ろにいるウマ娘は1人しかいない。
インシルカスラムが振り向くと、アンベールがインシルカスラムだけでなく、ハイエストフェローにも指で作った拳銃の人差し指を突き付けていた。
さながら二丁拳銃で2人を足止めしているかのようだ。
「You wanna run away from me, don't you?(あなたたち、私から逃げたいんでしょう?)」
インシルカスラムの全身がゾクッ、と震える。
去年、アンベールと戦った時は負けているのだ。
一応、差しウマ娘対策はしてあるが、一般的な対策で易々と勝てるほど、アンベールは甘い敵ではないだろう。
アンベールは指で作った銃を上に向けた。
「BANG!」とでも言ったつもりだろうか。
「It will never come true(その願い、絶対に叶わないでしょうね)」
「I, I won't let that happen!(さ、させるかよ!)」
ハイエストフェローにとっても、アンベールのマークと最終直線での速度は怖いのだろう。
多少ビビっていることが分かりながらも強がって返している。
「Shoot me if you can!(撃てるものなら撃ってみな!)」
そして、インシルカスラムもまたアンベールの手を払いのけて言い放ち、相手に物怖じしない精神を見せつけた。
やがて、全員のゲートインが完了する。
「各ウマ娘、ゲートイン完了……」
「They're in the gate......」
観客席が静まり返り、日米両方のアナウンスの合図のみが流れ。
ガコン、とゲートが開いた。
「スタートです!」「And, they're off!」
「C'mon! Try'n defeat me!」
「You wanna run away from me, don't you?」
は2人の決めセリフにしたい。