ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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いつ引き金を引けばいいかなんてお見通しだ。


第143話

ーーー132ーーー

 

「っ!?」

 

インシルカスラムがアンベールからハイエストフェローに意識を向けた瞬間に、実況の叫びが聞こえた。

 

わずかに向けられた意識、視線が外れた瞬間を突いたとでもいうのか。

 

インシルカスラムの後ろから、強大なオーラと足音が迫ってくる。

 

12位……8位……!5位……!!

 

そして、そのオーラは、ただ近づいているだけではない。

 

去年、アンベールは領域を出せるのにも関わらずその力を捨てた。

 

領域とは、自分一人で走るような感覚に陥ることで周囲の雑念を受けないようにするもの。

 

つまり、先頭をひたすらマークするアンベールにとって安易に領域を出すとマークするべき相手を見失ってしまい、逆効果につながる。

 

だが、今日のアンベールは第3コーナーから最終コーナーに回ろうとしている最中で視線をゴール板に固定し。

 

その集中を限界まで研ぎ澄まし、領域に入った。

 

もうインシルカスラムやハイエストフェローに合わせてレースをする必要はない。

 

自分のみを信じて、ミスをせずにゴールに向かえばいい。

 

なぜなら……

 

「--You're already "OVER"!!(あなたたちは、もう"終わっている"のよ!)」

 

 

「Damn, you monster! It's not over yet!(クソッ、バケモンが!まだ終わっちゃいねえ!)」

 

ハイエストフェローも、アンベールの怒涛の追い上げに気づいた。

 

アンベールと比べると天と地ほどの差ながらも加速を始める。

 

「アタシだって!」

 

それに合わせるように、インシルカスラムもラストスパートを始めた。

 

「They're go to the final stretch! Highest Fellow and Insilca Slam still fight for the lead, but Highest Fellow is slightly ahead!(レースは最終直線に入る!ハイエストフェローとインシルカスラム、未だ先頭争いを続ける、ハイエストフェローわずかに前か!)」

 

英語実況者が立ち上がり、備え付けのマイクを手で持って興奮気味に最終局面を実況する。

 

スタートした直後から続けていた先頭争いは、1400m時点で頭1つ分程度、ハイエストフェローが優勢だった。

 

インシルカスラムはハイエストフェローの隣でわずかな差で2番手に甘んじながらも隣からもオーラを感じ取る。

 

ハイエストフェローもまた、領域に入ろうとしている。

 

だが、その大きな赤と黄色のオーラはバシュッ、バシュシュッ……と途切れ途切れに感じ取れた。

 

まるで燃料切れ寸前の火炎放射器のような、完全に出し切れていないような感じだ。

 

領域を出せるに至ったからと言って、いついかなる時でもそれが出せるとは限らない。

 

基本的に極限まで研ぎ澄ました集中が必要な以上、ほんの少しでも焦りや迷いがあると途端に発動は困難になる。

 

「Damn, you monster!(クソッ、バケモンが!)」とアンベールを恐れたせいだろうか。

 

ハイエストフェローの領域は不完全なものになっており。

 

全力を出せないのにもかかわらず余計に疲れる羽目になる。

 

これは、インシルカスラムにとってはハイエストフェローを出し抜くチャンス。

 

インシルカスラムの奥の手、Incy Lead the Wayを使うなら今しかない。

 

 

しかし。

 

Incy Lead the Wayの発動条件は"自分が1位でいること"。

 

今の先頭は。

 

まだわずかにハイエストフェローだ。

 




このまま自分の強みすら封じられて負ける?
そんなの去年以上に最悪じゃないか。なってたまるか。
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