ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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インシルカスラムのラストラン。
ライバルたちは何を思う?


第151話

ーーー140ーーー

 

「(ウソだろ、インシー。お前いつの間にこんなに強く……!」)

 

ガルディアコダンには分かる。

 

同じ逃げ勝負で、残り300m強で追い抜かれることがどういうことか。

 

ガルディアコダンは2位。

 

もう、どうあがいたって勝てない。

 

「(ちっくしょう……お前が出てたって勝てる、って証明したかったぜ……)」

 

去年、東京大賞典を勝利したのはガルディアコダンだ。

 

だが、「それはインシーが途中でいなくなったから繰り上がってコダンが取ったんだろ」と言われたことは想像に難くない。

 

そうやって嘲笑う奴らを認めたくなくて。

 

そんな奴らを見返すつもりで、今日この場に来たつもりだった。

 

だが、残り100mくらいで負けたならいざ知らず、残り300mで突き放されてしまえば、潔く認めざるを得ないだろう。

 

「(--なら、ハッキリお前に言ってやらないとな。)」

 

「……お前の勝ちだぜ!」

 

それと。

 

ガルディアコダンにはもう1つ、目の前のインシルカスラムに対して言いたいことがある。

 

「だから、最後まで走り切れインシー!!」

 

 

「(インシー……!待って……!)」

 

テンカバスターもまた、このままレースが進めばどうなるかが分かっている。

 

テンカバスターの順位は3位。

 

ガルディアコダンは追い抜けると自分の勘が告げている。

 

フルセイルサルートに自分を差しきることはできないと勘が告げている。

 

だが、インシルカスラムへのお告げは。

 

もはや勝つ見込みなし、だった。

 

テンカバスターは帝王賞から半年の間、さらなるトレーニングを積んできた。

 

半年前よりも成長したつもりだった。

 

それでも、インシルカスラムの背中には、手を伸ばしても届きそうにない。

 

インシルカスラムもまた、成長してテンカバスターを突き放していたということか。

 

全力を出して届かず負けるのなら、テンカバスターにとっては本望だ。

 

「(なら、私の負けね……)」

 

それと。

 

テンカバスターにはもう1つ、目の前のインシルカスラムに対して言いたいことがある。

 

「だから、走り切って!私に勝ってインシー!!」

 

 

「(ありえないわ!なんでこんなに追いつけないの……!)」

 

そしてフルセイルサルートは、遠くを走るインシルカスラムに動揺を隠せなかった。

 

フルセイルサルートの順位は5位。

 

インシルカスラムとフルセイルサルートは同期の、まさにレース人生の始まりからの因縁だった。

 

全日本ジュニア優駿、ジャパンダートダービー、そしてJBCレディスクラシック。

 

誰よりもインシルカスラムについて知っているつもりだった。

 

誰よりもインシルカスラムに勝ちたかった。

 

それでも、今、なぜこんなにと思うほど遠くにいる。

 

「(……私は、こんなに強いウマ娘と戦っていたのね)」

 

結局1度も勝てなかった。

 

それでも、なんだか誇りに思えた。

 

これから、G1を7勝する伝説のダートウマ娘と一緒に戦えたことを。

 

そんなダートウマ娘に、3回も2着で食い下がった自分自身を。

 

だから、7つ目のG1をちゃんと取ってもらわなきゃ困る。

 

フルセイルサルートには1つ、目の前のインシルカスラムに対して言いたいことがある。

 

「最後までちゃんと走り切りなさい、インシー!!」

 

 

「もう少しだー!!」

 

「そのままゴールへ行けー!!」

 

「頼むっ……最後まで……!!」

 

観客たちもまた、このまま進めばインシルカスラムの勝利を確信した。

 

自らの喉が張り裂けるような、あるいは三女神に祈るような想いで。

 

最後のインシルカスラムの応援をする。

 

 

「行っけぇ!!!インシーーー!!!」

 

東京大賞典のゴール版が消えるかどうかのゴール間際で、インシルカスラムの耳に届いたのは。

 

感情がぐっちゃぐちゃになっても声を張り上げた、森内トレーナーの声だった。

 

 

「インシルカスラム、1着でゴールイン!!」




自分で切り開いたゴール。
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