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最終的なインシルカスラムの戦績は以下の通りになる。
戦績:
・ジュニア級
メイクデビュー:1着
カトレア賞:1着
ジャパンダートダービー:1着
・クラシック級
関東オークス:1着
ジャパンダートダービー:1着
南部杯:1着
チャンピオンズカップ:3着
東京大賞典:故障により競争中止
・シニア級
平安ステークス:1着
帝王賞:1着
JBCレディスクラシック:1着
チャンピオンズカップ:1着
東京大賞典:1着
総合戦績:13戦11勝。内G1は7勝。
インシルカスラムの物語はこれにて幕を閉じた。
年が明け、トレセン学園では出会いと別れの季節になる。
あるトレーナー室で赤いスーツジャケットを着た30代の男がアルバムを見返して思いに耽っていた。
男の机の上にはややくすんだトレーナーバッジ。
ネームプレートには"森内 洋一(もりうち よういち)"の名前。
今や森内トレーナーは3人のウマ娘を育て上げた、これから4人目を担当する敏腕トレーナー。
彼の居室にはG1の優勝レイが8個も飾られている。
そして、彼が見ているアルバムは、これまで担当してきたウマ娘たちの思い出と軌跡だ。
ページをめくっていくとインシルカスラムの写真が出てくる。
どれをとってもやんちゃで、生意気で、手に負えないのが分かる写真ばかりだ。
写真だけ見れば実は病弱で身体のケアに細心の注意を払う必要があるなんて思わないだろう。
思えば、インシルカスラムは無茶ばっかりして、皆の先頭になって導くようなレースをしていた。
ふと、森内トレーナーは地下バ道でたたずむインシルカスラムの写真を見つける。
インシルカスラムは栗毛だ。
光に当たっているとインシルカスラムの髪はオレンジ色に輝いて見えたが、薄暗いところだと黄色っぽくも見える。
まるで、"真鍮"を想起させるような色合いだ。
ところで、急に話は変わるが、曳光弾というものを知っているだろうか?
曳光弾とは銃弾の一種であり、撃つ時にレーザーのような光を残して、どの方向に銃弾が飛んでいるかを"導いてくれる"ものだ。
英語では"トレーサー"と呼ばれている。
実は、森内トレーナーはインシルカスラムの逃げを心の中でこのトレーサーに例えていた。
まるで銃弾のように飛び出し、皆を導く光のように走るインシルカスラムにふさわしい例えだとずっと思っていた。
薬莢だけでなく、銃弾の本体(弾頭)を真鍮にすると銃が摩耗しやすい、というのもインシルカスラムらしいかもしれない。
森内トレーナーはインシルカスラムのアルバムページに小さく文字を書き加えた。
インシルカスラムというウマ娘を例えるこの字をもって、物語を閉じるとしよう。
"Brass Tracer"(真鍮の曳光弾)。
fin.
ブラス・トレーサーの物語はここで完結します。
ここまで読んでくださった皆様ありがとうございました。
自分のオリジナルウマ娘を見て「かっこいい!」「すごい!」と思っていただけたなら幸いです。