ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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いよいよレースが始まります!
G1レースはブラス・トレーサーのメイン、しっかり描写していきます。


第17話

ゲートが開き、ウマ娘が飛び出した。

 

ここで2人は出遅れることなく飛び出す。

 

そして、まずは先頭争い。

 

全体の主導権を奪うため、逃げのインシルカスラムはどんどん加速していってハナを取ろうとする。

 

――しかし。

 

「序盤、先頭を取り合うのはインシルカスラムと……フルセイルサルート!張り合っています!」

 

明らかな対抗心を燃やして、先行であるはずのフルセイルサルートがインシルカスラムの横に並んでいく。

 

……いや、前に出る。

 

最初からフルスロットルを出すインシルカスラムに、フルセイルサルートがそれ以上の出力を出して勝ちに来た。

 

「サルートが先頭争いに来たか!」

 

これには森内トレーナーも驚きを隠せない。

 

その驚きに対し、藤正トレーナーはしてやったり、といった顔をする。

 

「インシーの前2戦のやり方はリサーチ済みです。レースの主導権を取り、そのままセーフティリードを保ってゴールインする。今回もそう来ると思ってました」

 

「だから、"それを崩してやったら?"」

 

"初めてのG1"において、インシルカスラムは"想定外のレース"を強いられることになる。

 

逃げウマ娘に走り方のバリエーションはあまりない。

 

自分の最も得意な走り方を崩されたら、かなり厳しいだろう。

 

これが、藤正トレーナーのインシルカスラム対策だった。

 

インシルカスラムも負けじとフルセイルサルートから先頭を取り返そうとするが。

 

「(くっ……サルート、速い!取り返したいのに!)」

 

しかし、フルセイルサルートとの差は少しずつ開いていき、1バ身に到達。

 

もはや序盤の大勢は決定した。

 

全体のペースはフルセイルサルートが取ることになる。

 

「(やはりトレーナーの目に狂いはなかったわ!あのインシーの悔しそうな顔ったら、カメラがあったら撮りたかったところよ!)」

 

先行ウマ娘が逃げウマ娘に勝ってペースを握るのは並大抵のことではない。

 

さっそく息を上げながらも、フルセイルサルートは勝ち誇った顔をする。

 

 

「レースは中盤に差し掛かります、ここでもう一度先頭からウマ娘を見ていきましょう」

 

「先頭は変わらずフルセイルサルート、レースを引っ張っていく。対抗のインシルカスラムは3番手」

 

「……3番手?」

 

実況を耳に入れながら、フルセイルサルートは小さくつぶやく。

 

何でもかんでも1番でなければ気が済まない先頭民族なインシルカスラムが3番手に甘んじている。

 

異常事態だ。

 

「森内さん。インシーが身体弱いことは俺も聞きました。まさか……?」

 

藤正トレーナーは自分の担当から目線を外してバ群に飲まれかけるインシルカスラムを心配しだす。

 

まさか、何かあったのか。

 

「……大丈夫だ。あれは故障じゃない。俺も何も対策しなかったわけじゃないんだ」

 

いつの間にか森内トレーナーから驚きの表情は消えている。

 

「ハナを進む逃げウマ娘に対しての対策は、もっと前に行って自分がハナを奪うか、大人しく引き下がってチャンスを待つか。大きく分けたら2つだ」

 

「……そうだな。サルートなら前者だな」

 

それに対して「まさか」と呟いた藤正トレーナーの心境は10秒前のそれとは違った。

 

 

全日本ジュニア優駿の1600mのうち、800m地点を通過する。

 

後半戦に差し掛かったが、通常のスパートなら残り400mくらいからかけるのが普通だ。息切れはまだ早い。

 

しかし、フルセイルサルートはこの時点でかなり息が上がっていた。

 

当たり前だ。本来、先行ウマ娘が逃げの真似事をすればそうなる。

 

藤正トレーナー、そしてフルセイルサルートの狙いは「そうなってでもインシーのプランを崩すこと」にあった。

 

……崩れただろうか、インシルカスラムの走りは。

 

フルセイルサルートは苦しさをこらえながら意識を後ろに向ける。

 

「(インシーは……すぐ後ろにいるわ!スタミナ切れの私を……狙ってるの!?)」

 

心の中から出てきた焦りを、フルセイルサルートは必死に抑え込む。

 

逃げウマ娘=序盤で先頭でなければ終わり、なんてことはない。

 

確かに先行以降のウマ娘に比べて前にいなければ不利なのだが。つまりは先頭が簡単に奪い返せるくらい前にいればそれでもいいのだ。

 

インシルカスラムは、2位の位置で疲れたフルセイルサルートを刈り取る瞬間を狙っている。

 

「(やっぱりトレーナーの目に狂いはなかったな!あそこで張り合ってたらアタシも危なかった。冷静に、サルートをチャンスが来た時に追い抜く!)」

 

インシルカスラムは、崩れてなんかいない。

 

 

一杯食わしてやったと思っていた藤正トレーナーは逆に自分が一杯食わされていたことに気づき、唇を噛む。

 

「やられましたね……」

 




インシーは頭先頭民族だけど、バカじゃないんですよ。

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