ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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このシーンをシンデレラグレイ風に描ける方お待ちしております。


第18話

純粋な実力勝負ではインシルカスラムに分がある。

 

しかも、フルセイルサルートは対策が裏目に出た。

 

森内トレーナーは勝利を確信しようとしたが。それはまだ早い、と言い聞かせる。

 

「インシーは頭を使って走れるウマ娘だった、それだけだ」

 

「……まだ終わっちゃいませんよ、純粋な実力勝負だと勝ち目は薄いですが、そいつに賭けます」

 

立場が逆でも、同じことを言っていただろう。

 

2人のトレーナーはゴール前に視線を移し、担当ウマ娘を信じて待つ。

 

「最終直線に入ります、先頭はフルセイルサルート、しかしインシルカスラムどんどん差を詰めていく!」

 

残り400m。ラストスパートに入る。

 

「--勝負だサルート!!」

 

ここまで逃げ・先行ウマ娘なら理論派でさえ考え、計算することはない。

 

あとは己に搭載されているエンジンを、ブッ壊れる寸前まで、ブン回すだけ。

 

インシルカスラムはだんだんと加速していき、フルセイルサルートを追い詰めて追い詰めて……

 

 

前に出る。

 

「ここで先頭入れ替わる!インシルカスラム!」

 

まだ残りは200m。

 

フルセイルサルートの体力は前半で使い切った。もう加速するようなスタミナはない。

 

これは、やはりインシルカスラムの勝利で決まるか。

 

「--ナメないで、インシー!!」

 

フルセイルサルートは、歯を食いしばり、ないはずのスタミナから力を引きずり出して、砂を強く踏みつける。

 

高飛車な女王様に見える彼女も輝かしい芝ではなく、わざわざ泥臭いダートを選んだウマ娘だ。

 

サルートには、砂を被る覚悟がある。

 

サルートには、土壇場の根性がある。

 

自身の気持ちに鞭を打ち、速度を上げて、インシルカスラムを差し返しにかかる。

 

「フルセイルサルートもまだ下がらない、差し返しにかかろうとする!」

 

「--しかし、さらにインシルカスラム飛び出した、なんだこれは!?」

 

突き放された。

 

フルセイルサルートは、垂れていない。まだ必死に3位を放して2位の位置をキープしている。

 

ではなぜ?

 

……インシルカスラムが、まるで急に飛び出したように、急激に速度を上げたからだ。

 

もし今の速度をグラフにしたなら、インシルカスラムは一瞬だけ、ほぼ真上に線が伸びるだろう。

 

効果時間は一瞬だったが。残り200mのラストスパートでは、十分すぎるリードを取った。

 

「インシルカスラム、そのままゴールイン!1着インシルカスラム!終わってみれば危なげなく勝利です!」

 

掲示板には9、5と点灯し、その間に2 1/2の着差、そして確定ランプがついた。

 

「……ありえないでしょ。追い込みですらあんなにスピード急に上げませんよ」

 

最後を見ていた藤正トレーナーは、乾いた笑いをしかできなかったが、それは森内トレーナーも同じだった。

 

「俺も初めて見た。あんな走り方、メイクデビューやカトレア賞どころか練習でもしていなかったぞ」

 

「じゃあわかるわけねえや。担当トレーナーが初めて見るのに、俺が予想できるわけないですね。ツイてない」

 

藤正トレーナーはやれやれと首を振って、観客席を離れ、フルセイルサルートを迎えに行く。

 

森内トレーナーもそれに続きつつ、今起こった出来事を冷静に整理する。

 

インシルカスラムがフルセイルサルートを最後で抜いた瞬間。

 

まだフルセイルサルートが差し返すチャンスはあっただろう。

 

だが、インシルカスラムはさらに突き放した。

 

まるで、自分が道を開く。後続のウマ娘よ、それに続け!と言わんばかりに。

 

「……"Incy Lead the Way(インシーが道を開く)"か」

 

森内トレーナーはぱっと思いついたそれを、"固有スキル"の名前とした。

 

そして、インシルカスラムにとっては初めての。

 

そして、森内トレーナー自身にとっても数年ぶりになるG1制覇の達成だ。

 

その喜びが、冷静になるほどだんだんと湧き上がってくる。

 

「やったな、インシー……!」

 

そう呟いて、担当ウマ娘を迎えに行った。




固有スキル:【Incy Lead the Way!】
レース後半で1位の位置に着けていると、スタミナを削って一気に突き放す。

コメントいただければ泣いて喜びます!ぜひお願いいたします!
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