「ハァ……ハァッ……」
ゴールしたフルセイルサルートは荒い呼吸を繰り返しながら掲示板を見上げる。
確定のランプはついている。自身が2着であることに抗議は通らない。する気もないが。
インシルカスラムのほうに視線を移すと、こちらもまた激しく肩で息をしていた。
どうやら、Incy Lead the Wayは急激な加速と引き換えにスタミナも急激に消耗してしまうらしい。
裏目に出た対策に、予想だにしなかったインシルカスラムの急加速。
「……言い訳したって順位は変わらないのよ、サルート」
そう自分に言い聞かせると、フルセイルサルートはパイレーツハットを投げ捨て、砂地に倒れこんで休んだ。
「おーい、2着!何寝てんだよ、1着におめでとうくらい言えよな!」
だが、すぐにインシルカスラムが大の字になっているフルセイルサルートを見下ろす。
「……あなたのせいでなった2着よ」
「それを誉め言葉ってことにしておく!ほら起きろサルート!」
インシルカスラムはフルセイルサルートの手を取って、強引に引っ張り上げるようにフルセイルサルートを起こし、落ちていたパイレーツハットを投げつける。
フルセイルサルートは砂まみれのパイレーツハットを受けとると、たいして砂を払い落としもせずに頭にかぶり直した。
「よくやったぞインシー!今日はお祝いだな!ゲホッ」
「お疲れ様、サルート!インシー相手によく戦った……ゴホ、あーこりゃ洗濯は大変そうですね」
控室に戻ると、2人のトレーナーが開口一番、担当ウマ娘の健闘を称え、そしてすぐに少しむせる。
芝で勝負服が汚れるのは不良バ場や雨天くらいのものだが、ダートは良バ場晴れの今日であっても砂まみれは確実。
そんな砂まみれの状態で控室に戻ったら咳き込まれるのは当然だったが。
インシルカスラムとフルセイルサルートはお互いを見つめ、咳き込まれたことを含めて健闘を称えてくれた、と思うことにした。
「で?サルート、笠松に帰る気にはなった?」
「なんでよ?今じゃ笠松のみんなに合わせる顔がないわ、あなたに『悔しいコノヤロー、覚えとけサルート!』って言わせるまで絶対帰るもんですか!」
「絶対言ってやんなーい!」
目線を合わせてすぐに2人は言い合いを開始する。
「あー、言い合いの前にだ。今日の夜は豪華なウイニングライブになるぞ」
「Unlimited Impactですね。ライブ衣装も持ってきましたが……」
藤正トレーナーはちらっと2人を見る。砂で汚れた服装なら着替えるかも……
「いや、この服がいい!せっかくの勝負服だしな!」
「いらないわ。その服気に入らないの」
2人は躊躇なく断った。どうやら、余計なお世話だったようだ。
次回は1話つかって聞いたことはあるあのライブシーンです。
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