「今年のジャパンダートダービーの出走者を紹介していきましょう。まずは……」
ここに、今回のジャパンダートダービーの出走表がある。
その中の6枠目。
番号にして11番がフルセイルサルート、12番がインシルカスラムになっていた。
つまりは隣同士。
専門家の中には
「全日本ジュニア優駿でのやり方からするに2人とも気の強いウマ娘」
「今回は隣同士ということで序盤からさらに激しいつば競り合いを繰り広げるだろう」
という予想が有力視されていた。
「6枠11番、フルセイルサルート。前走マリーンカップを制し、5戦4勝の輝かしい成績を誇ります」
「あの長い芦毛と確かな実力。笠松からダートの世界に現れた"第二のオグリキャップ"ともいえる存在と言っていいんじゃないでしょうか!」
パドックを歩くフルセイルサルートにも、解説は称賛のつもりで言ったであろうその言葉が聞こえてくる。
「……チッ!」
しかし、フルセイルサルートは気に入らないのか、周囲にもわかるくらい、あからさまな舌打ちをして機嫌を悪くしている。
「ふーん……第二のオグリって称号が気に入らない?」
後ろを歩く12番のインシルカスラムが舌打ちに気づいたらしい。
流石のインシルカスラムも何か理由があるのだろうと察する。
「気に入らないわ。……勘違いしないでちょうだい。オグリ先輩は私にとって憧れで、誰よりも強い、伝説のウマ娘。同じようになれるものならなりたいわ」
フルセイルサルートはやや後ろを向き、パドックを歩きつつ答える。
どうやら、オグリキャップが嫌いなわけではないらしい。むしろ真逆で、これ以上なく尊敬している。
ではなぜ気に入らないのだろうか?
「--まだ同じじゃないのよ。たかがG3、1つごときで同じように呼んでほしくないわ。全然、冠が足りないの……!」
フルセイルサルートは実況・解説の席を睨みつけた。
どうやら第二のオグリキャップと呼ばれるには、自分はその域に至っていないと感じているらしい。
フルセイルサルートにとって、同郷出身の大先輩であるオグリキャップとは、雲の上の憧れの存在。
成績が伴っていないのに。ましてや出身と髪色が同じなどと言ったしょうもない理由で、軽々しく横に並べて良い名前などではない。
……まあ実は、クラシック級7月のオグリキャップは中央で走り始めたばかりで、当時の戦績と比べたらフルセイルサルートと大差はないのだが、それは置いておこう。
「(だから。このJDDは獲ってみせる。インシー!あなただけは絶ッ対に叩きのめす!!)」
フルセイルサルートは睨みつける視線の先をインシルカスラムに直し、憧れの大先輩に少しでも近づくことを誓う。
「そして6枠12番はインシルカスラム!4戦4勝の無傷でJDDにやってきた圧倒的なダートクイーン!」
「全日本ジュニア優駿と前走は関東オークスを制し、まさに敵なしといったところです。ジャパンダートダービーも難なく制すのでしょうか?」
インシルカスラムの紹介となると、実況・解説・あと観客のざわつきも少し大きくなっただろうか。
この4戦でインシルカスラムの強さはダートを見る人々の記憶に強く残っていた。
そう呼ばれて少しドヤ顔になり、気分をよくするインシルカスラム。
フルセイルサルート含め、他のパドックを歩くウマ娘の顔が少し険しくなった気がする。
インシルカスラムはその雰囲気を察して表情を戻した。
「(……いや、調子乗ってばかりもいられないかな。アタシは徹底的にマークされるはず)」
インシルカスラムだけは絶対に潰す。そう思っているのはフルセイルサルートだけではない。
他にも出走するウマ娘の大半がどこかでインシルカスラムの後塵を拝したことがあるだろう。
彼女たちの恨みの籠った視線はインシルカスラムにも感じ取れた。
「(……上等。その喧嘩、全部買ってやろうじゃん。全部はねのけてこそ最強だ!)」
インシルカスラムは前後に向けてそれぞれ歯を見せてにやりと笑って視線に返した。
全てのウマ娘のゲートインが完了する。
「……ゲートが開いた!」
ブラス・トレーサーの本質からは外れますが、もちろん、フルセイルサルートはフジマサマーチや三馬鹿とも面識があると思われます。
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