……確定ランプが点灯した。
一番上のⅠ、1着の位置についていた番号は……
"12"
つまり。
「1着はインシルカスラムです!ギリギリと言っていいでしょうが、それでも逃げ切りました!」
2着のⅡには、11、フルセイルサルートが点灯していた。
2人の着差はアタマ。
約20~30cm、タイム差にして0.1秒未満。
何かが一手でも違っていれば、2人の順位は逆だったかもしれない。
「ハァ……ハァ……!」
ゴールした2人は自分の順位よりも、上がり切った心拍数と呼吸を整えるのが先だった。
フルセイルサルートは汗をダートに垂らしながら膝と手をつき。
インシルカスラムに至っては、十分に減速した後に砂地に横になって寝転んでしまった。
「ゼェ……ゼェ……うぇ、ゲホッゲホッ!」
寝転がった際に砂が口に入ったのか、インシルカスラムは激しくむせる。
芝のG1を見事制覇したウマ娘なら、大勢の観客に手でも振って嬉しさをアピールするものだが、今回のジャパンダートダービーの制覇者にそんな余裕はなかった。
だが、ジャパンダートダービーを見に来た観客も"おててふりふり"なんかは求めてなかった。
「っ……やっ……たーーーっ!!」
インシルカスラムは寝転んだまま両拳を突き上げ、整っていない息で喜びを表現する。
命を削らんばかりに走りぬき、砂にまみれて今の順位をもぎ取ったウマ娘こそがジャパンダートダービーの出走者としてとしてふさわしい姿だった。
それを体現したインシルカスラム、またフルセイルサルートをはじめ後続のウマ娘にも、観客から惜しみない拍手が送られた。
フルセイルサルートは大きく深呼吸して心拍数を平常に戻すと、ようやく起き上がろうとしているインシルカスラムに駆け寄る。
また悔しさをぶつけるのか、と思っていたら。
フルセイルサルートは清々しい表情で、伸ばした右手を自分の額の右側に当てて、敬礼のポーズをとると。
その手をインシルカスラムに向けた。
「あなたの強さ、認めるわ、インシー」
インシルカスラム、フルセイルサルートは双方小細工なしに、自分の最も得意な戦法で、ぶつかり合った。
それで出た結果に、言い訳の余地はない。
強者には"敬礼(サルート)"を。
フルセイルサルートは目の前の強者に礼を尽くす。
どうやら、それはインシルカスラムにも伝わったみたいだ。
「……なんだよ、それならアタシは"ぶっ叩けば(スラム)"いいってことかー?ほらほら!」
インシルカスラムは気分を良くして立ち上がると、フルセイルサルートの背中をバシバシ遠慮なく叩く。
「ちょっ、いたっ……!もう!ちょっとシャレたことしたらこれなんだから!」
と言いつつもフルセイルサルートの表情は満更でもなさそうだった。
「あー、久々にデケェ声出しましたね」
「ああ。声、おかしくなったかもしれん」
「大丈夫です。あんなに熱くなったのはいつぶりでしょうか」
関係者席にいた2人のトレーナーもまたお互い満更でもない表情で控室に向かっていた。
「俺、これでもかってくらい応援したんですけどね。何が足りなかったんですかね」
「フッ、さあな。俺にはインシーの実力もサルートの実力も、俺たちの応援も、全部足りていたように見える」
これにて【2章:ワンチャンスのクラシック】編は終了します。
また、【コラボ企画:あなたが考えたオリジナルキャラクターを入れさせてください!】も締め切りました。
全部で15人の応募がありました、応募ありがとうございます!
1人1人書き下ろしていきますのでお待ちください!