ウマ娘 ブラス・トレーサー   作:takapon960

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ジャパンダートダービー編、完結。



第34話

……確定ランプが点灯した。

 

一番上のⅠ、1着の位置についていた番号は……

 

"12"

 

つまり。

 

「1着はインシルカスラムです!ギリギリと言っていいでしょうが、それでも逃げ切りました!」

 

2着のⅡには、11、フルセイルサルートが点灯していた。

 

2人の着差はアタマ。

 

約20~30cm、タイム差にして0.1秒未満。

 

何かが一手でも違っていれば、2人の順位は逆だったかもしれない。

 

 

「ハァ……ハァ……!」

 

ゴールした2人は自分の順位よりも、上がり切った心拍数と呼吸を整えるのが先だった。

 

フルセイルサルートは汗をダートに垂らしながら膝と手をつき。

 

インシルカスラムに至っては、十分に減速した後に砂地に横になって寝転んでしまった。

 

「ゼェ……ゼェ……うぇ、ゲホッゲホッ!」

 

寝転がった際に砂が口に入ったのか、インシルカスラムは激しくむせる。

 

芝のG1を見事制覇したウマ娘なら、大勢の観客に手でも振って嬉しさをアピールするものだが、今回のジャパンダートダービーの制覇者にそんな余裕はなかった。

 

だが、ジャパンダートダービーを見に来た観客も"おててふりふり"なんかは求めてなかった。

 

「っ……やっ……たーーーっ!!」

 

インシルカスラムは寝転んだまま両拳を突き上げ、整っていない息で喜びを表現する。

 

命を削らんばかりに走りぬき、砂にまみれて今の順位をもぎ取ったウマ娘こそがジャパンダートダービーの出走者としてとしてふさわしい姿だった。

 

それを体現したインシルカスラム、またフルセイルサルートをはじめ後続のウマ娘にも、観客から惜しみない拍手が送られた。

 

フルセイルサルートは大きく深呼吸して心拍数を平常に戻すと、ようやく起き上がろうとしているインシルカスラムに駆け寄る。

 

また悔しさをぶつけるのか、と思っていたら。

 

フルセイルサルートは清々しい表情で、伸ばした右手を自分の額の右側に当てて、敬礼のポーズをとると。

 

その手をインシルカスラムに向けた。

 

「あなたの強さ、認めるわ、インシー」

 

インシルカスラム、フルセイルサルートは双方小細工なしに、自分の最も得意な戦法で、ぶつかり合った。

 

それで出た結果に、言い訳の余地はない。

 

強者には"敬礼(サルート)"を。

 

フルセイルサルートは目の前の強者に礼を尽くす。

 

どうやら、それはインシルカスラムにも伝わったみたいだ。

 

「……なんだよ、それならアタシは"ぶっ叩けば(スラム)"いいってことかー?ほらほら!」

 

インシルカスラムは気分を良くして立ち上がると、フルセイルサルートの背中をバシバシ遠慮なく叩く。

 

「ちょっ、いたっ……!もう!ちょっとシャレたことしたらこれなんだから!」

 

と言いつつもフルセイルサルートの表情は満更でもなさそうだった。

 

 

「あー、久々にデケェ声出しましたね」

 

「ああ。声、おかしくなったかもしれん」

 

「大丈夫です。あんなに熱くなったのはいつぶりでしょうか」

 

関係者席にいた2人のトレーナーもまたお互い満更でもない表情で控室に向かっていた。

 

「俺、これでもかってくらい応援したんですけどね。何が足りなかったんですかね」

 

「フッ、さあな。俺にはインシーの実力もサルートの実力も、俺たちの応援も、全部足りていたように見える」

 

 




これにて【2章:ワンチャンスのクラシック】編は終了します。

また、【コラボ企画:あなたが考えたオリジナルキャラクターを入れさせてください!】も締め切りました。
全部で15人の応募がありました、応募ありがとうございます!
1人1人書き下ろしていきますのでお待ちください!
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