---EX3---
夏合宿とは大人数の現役ウマ娘がそれぞれ己の力を大幅に高めるために行うものだ。
大きな成長のためには、ウマ娘とトレーナーのコンビだけではなく、他の誰かに協力してもらうことが必要不可欠。
多くの場合はウマ娘かトレーナーのどちらかにある縁や伝手を頼って協力を取り付けることが多い。
この協力を取り付けて練習をすることをトレーナーたちは"サポートトレーニング"とか"友情トレーニング"と呼んでいる。
今まさに、インシルカスラムと森内トレーナーのコンビは様々な協力を受けてトレーニングや模擬レースを行っている最中だ。
もちろん、2人が協力する側に回ることもある。
「アタシに併走相手になってほしい?」
別に構わないが、なんで自分?と言いたげに首をかしげてインシルカスラムは頼られたであろう森内トレーナーに聞き返した。
「ああ。2400mが走れる逃げウマ娘を探しているらしい。インシーだと適任だと思ってな」
「2400mだとギリギリってとこかな。まあいいよ。相手になってやる」
「助かる。ストライクウルフと走ったオールウェザー・トラックでやろう」
「はーい。で、そいつは何て名前なの?」
「--オーブアリザリン」
練習相手を探していたオーブアリザリンは芝メインのウマ娘だ。
ダートがメインのインシルカスラムと走るにはオールウェザー・トラックと呼ばれる室内コースで練習しなければならない。
待ち合わせ場所にインシルカスラムが向かうと、オーブアリザリンは深くお辞儀をした。
「インシルカスラムさん。私との練習を引き受けてくださり、ありがとうございます」
「インシーでいいよ。アンタがオーブ?」
「はい。オーブアリザリンです。インシルカ……じゃなくてインシーさん。重ねてお願いがあるのですが……」
オーブアリザリンは両手の人差し指を立てて先端をくっつけると。
それをスーッと離した。
「私は追込ウマ娘です。ですから、ひたすら私を突き放していただけませんか?」
どうやら、オーブアリザリンは追込ウマ娘として逃げウマ娘対策をしたくてインシルカスラムを呼んだらしい。
「……ハッ」
そんなオーブアリザリンに対し、インシルカスラムは鼻で笑って返した。
気の強いインシルカスラムに対して普段のオーブアリザリンは気が弱いほうのウマ娘らしく、インシルカスラムの返事におろおろしだす。
「あ……す、すみません、私、何か気に障るようなことを……?」
オーブアリザリンは何か粗相でもしてしまったのかと謝ろうとしたが。
その前にインシルカスラムはオーブアリザリンの人差し指をひっつかむと。
よりグイーっと引っ張ってより、距離を離す。
「あ、っとと……」
オーブアリザリンがちょっとよろけるくらいに。
「それ以外にアタシが何かすると思った?」
インシルカスラムは歯を見せて笑ってそう返した。
言われるまでもなくオーブアリザリンを突き放してやるよ。どうやらそう言いたかったらしい。
「--いいえ。お願いいたします」
「オーブアリザリンはステイヤーだ!インシー、長丁場になるが俺がいいというまで突き放せ!」
「周回遅れにしてやる!」
森内トレーナーの笛に合わせ、インシルカスラムとオーブアリザリンは飛び出す。
……が、その初速は目を疑うほど大きな差がある。
一気にギアを上げて最高速に達するインシルカスラムに比べて、オーブアリザリンの走りはまるでノロノロ運転だ。
正直、森内トレーナーの目から見たとしても、オーブアリザリンの走りはズブい。
つまり、エンジンが掛かるのが遅く、どうしても序盤は一手どころか二手も三手も先を譲ることになる。
追込ウマ娘や、スピード以外で勝負するタイプ、ということを加味してもまだ遅いレベルだ。
「なんッだそのスピード!!アンタ歩いてんのか!?」
「いえ、あの、インシーさんが速すぎるんです……」
インシルカスラムに追込ウマ娘と戦った経験はほとんどない。
さすがに容易に突き放せることくらいは予想していたが、実際に逃げVS追込の一騎打ちとなると驚きを……
というかあまりにもやる気のなさそうに見える走りにインシルカスラムは反射でキレてしまう。
「構わず突き放せインシー!オーブは惑わされず自分のペースを維持するように!」
今回はオーブアリザリンというウマ娘の応募でした。
ありがとうございました!もう少し続きます!